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ブックマークつけてくださった方、ありがとうございます。


ミナリアが自分の(貸し与えられている)部屋で寛いでいると、部屋の外から声を掛けられた。


「ミナリア様。お客様がいらしておりますが、如何致しますか?」


侍女らしい女性の声に、ミナリアは首を傾げる。


「お客様?ここに?誰かしら」


少し扉に近づき、ミナリアは返事をした。


「どなたがいらっしゃったのですか?」

「弟君です」

「ハルトヴィヒが?」


(どうやって王城に入れたのかしら?)


「通してください」

「畏まりました。少々お待ちください」


物音が少し遠ざかる。

ミナリアは部屋に置いてある茶器を取り出し、お茶を淹れる準備をした。

すぐに扉がノックされて、ミナリアは扉を開けた。


「姉上!」


扉を開けてすぐ、ミナリアはハルトヴィヒに抱き付かれる。


「まあ、ハルトヴィヒ。どうしたの?こんな所まで」


ミナリアは目を丸くするが、ハルトヴィヒを抱きしめ返す。


「姉上が帰ってこないから、僕が来たんです」

「お父様から説明されなかった?」

「聞きましたけど、納得できません」


二人が部屋の入り口で騒いでいる音を聞いて、隣の部屋から西凪が出て来た。

西凪の後ろにはレオナルドもいた。

間の悪い事に、丁度ヴィンセントがやって来た。

皆それぞれ目を丸くして、口を開けた。


「お姉ちゃんズルイ!いつそんな美少年と知り合ったの?!」

「ミナリア嬢、どなたですか?」

「サナ、あんな細い男はサナを守れない」


ミナリアは額を片手で押さえて、溜め息をついた。


「皆様、とりあえず部屋の中へどうぞ」


ミナリアの言葉に、みんなぞろぞろと部屋に入った。








ミナリアはお茶を淹れて、椅子に座ったみんなに配る。


「紹介します。弟のハルトヴィヒです」

「はじめまして、姉がお世話になっております」


ハルトヴィヒはにこやかに挨拶するが、目が笑ってない。


「ああ、弟君でしたか」


ヴィンセントが微笑んで頷く。


「わたしはヴィンセント・ノイベルト、宰相補佐官をしております。こちらは、サナ嬢、レオナルド殿です」


西凪はにっこり笑ってミナリアに親指を立てた。


「グッジョブお姉ちゃん」

「わたしの功績じゃないけど」


ミナリアは微妙な表情になる。

ハルトヴィヒは西凪を見て、微かに鼻で笑った。


「貴女は何故姉上を姉と呼ぶのですか?まさか、父の隠し子ですか?」

「違うからね、ハルト。お父様はお母様一筋よ」

「素晴らしい!ツンデレ!」

「西凪ちゃん、まだデレてないからね」


ミナリアは双方につっこむのに忙しい。


「………まさか、サナはこんな男が好きだと言うのか………?」


レオナルドは西凪の後ろで黒いものを背負っている。

ミナリアは困ってヴィンセントを見ると、ヴィンセントは綺麗な笑顔で頷いた。


「ハルトヴィヒ殿。こちらのサナ嬢は、聖女殿です」

「…………え?」

「聖女殿は、ミナリア嬢をお慕いしております。それ故、ミナリア嬢を姉と呼んでいます。ミナリア嬢もそれを許してます」


ハルトヴィヒは西凪を見て、ミナリアを見て、茫然とした。


「………なんて事をしてしまったんだ。あの、聖女殿、申し訳ありません、無礼な態度を取って。その、許して頂けますか?」


(あ、やばい)


上目遣いのハルトヴィヒに、西凪は真っ赤な顔で大きく頷くと、後ろに向かって倒れた。


「西凪ちゃん?!」

「サナ!!」


すかさずレオナルドが西凪を支えたので、西凪は頭を床に打つ事はなかったが、レオナルドが素早く西凪を腕の上に抱き上げて連れて行こうとした。


「ストップ!!レオナルド、あたし大丈夫だから!」

「ちょっとレオナルド様、西凪ちゃんを何処に連れて行くつもり?!」

「…………チッ」


レオナルドはそっと西凪を降ろす。


(あいつ、舌打ちしたよ!やっぱり西凪ちゃんをあいつにあげるの、やばい気がする)


西凪は元の椅子に座り直し、にへらと笑う。


「ごめんなさい。ちょっと興奮しちゃった」

「いえ。あの、姉上はいつも聖女殿と一緒にいるのですか?」

「いつもではないけど、一緒にいるわね」

「そうですか」


ハルトヴィヒはヴィンセントとレオナルドをチラリと見る。

西凪は頬を赤く染めて、またもやミナリアに向かって親指を立てた。


「シスコン、高ポイント!」

「西凪ちゃん………」


ミナリアは自分の(前世の)妹が残念な生き物の様な気がした。


(おかしい。残念って言われてたの、わたしなんだけど)


「いい事思いついた!あたしがハルトくんと結婚したら、お姉ちゃんはここでもあたしのお姉ちゃんになるよね!」

「は?!」

「西凪ちゃん?!」

「……………」


ミナリアは満面の笑顔の西凪の背後を見ないように視線を彷徨わせた。


「聖女殿。貴女はレオナルド殿との婚姻は、どうするつもりですか?」


ヴィンセントの冷静な質問に、西凪はこてんと首を傾げた。


「まだ決定じゃないし、ハルトくん金髪じゃないし、美少年だし、あたし的には…………あ!!」


西凪が突然大声を出した。


「いけない!あたしとしたことが!大事な事を忘れてた!」

「大事な事、とは?」


ヴィンセントが首を傾げるが、ミナリアはなんだかイヤな予感がした。


「イエス、ショタ!ノー、タッチ!」


西凪の言葉に、その場が沈黙に包まれる。


「…………はい?」

「ごめんね!今の話は聞かなかった事にして」

「はあ、まあ、その方がとても良いのですが」


ヴィンセントはチラリとレオナルドを見て、頷く。


「………西凪ちゃん。ひとつ言っておきたいのだけど」

「何?」

「他の人達の前で、その話をしたら駄目よ」

「え?あたしがショタコンだって事?」

「そ、そうね。その事を利用されるかもしれないから」

「え?美少年ハーレムを誰かが用意してくれるの?」

「そうね。それに西凪ちゃんが釣られて利用されるかもって話」

「無理ね」


妙にバッサリと西凪は断言した。

ミナリアは首を傾げ、レオナルドは何故か西凪の背後で笑顔になった。


「だって、あたしの好みの美少年だらけになんて、出来ないわよ?」

「…………それもそうね」


ミナリアは変なところで納得してしまった。


「………姉上。僕、帰りますね」

「ハルト、ごめんなさいね、あまりお話しできなくて」

「いえ。お元気そうで、良かったです」


ハルトヴィヒはしかし、ヴィンセントを軽く睨んだ。


「聖女殿。姉上をどうか宜しくお願いします」

「わかった。お姉ちゃんにはちゃんと幸せになってほしいから、変な男からは守るわ」


西凪が笑顔でハルトヴィヒと固く握手をする。


「あたし、意外とシスコンなのよ」

「シスコン?がどういう意味かわかりませんが、聖女殿とは仲良くなれそうです」

「良かった。これからよろしく」


二人が握手を解くと、レオナルドがすかさず西凪の手をハンカチで拭く。

ミナリアはハルトヴィヒを扉のところまで見送りに出た。


「ハルト。わたしはしばらく帰れないから、お父様とお母様をお願いね」

「はい。姉上も、あまり無理をしないようにしてくださいね」


ハルトヴィヒが微笑むと、ミナリアの背後で息をのむ音がした。

ミナリアは苦笑して頷く。


「大丈夫よ。無理は元々したくないもの」


ハルトヴィヒを見送って振り返ると、西凪が真っ赤な顔で両手を握りしめていた。


「お姉ちゃん、あたしの夢が叶ったわ!」

「…………そう。良かったわね」


ミナリアは力なく呟いた。


読んで頂きありがとうございました。

次からは不定期になりますが、なるべく早く投稿できるように頑張ります。


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