第5話:旅の始まり、やりたい放題
「次目が覚めたら能力ついているからね。それじゃ~よろしくおねがいしまぁ~す!天誅!」
神が人差し指を俺に向けると、細い雷が俺に落ちる。雷は細くて弱弱しく見えるのにものすごく痛い。
「おい、今天誅って……俺何もしてない!」
「それは言葉のあやです」
「いやどう考えても言葉のあやじゃな……」
神に文句を言い終わるほんの少し前に視界がいきなり歪んだ。ものっそい気持ち悪いな~と思いながら俺の意識はホワイトアウトした。
鳩と雀が混ざったような鳴き声と、木の葉が風に擦れる音。指先に湿った草の感触。背には硬い木の幹。
森の匂いが鼻から入ってくる。
まだはっきりとしない意識のままだが、俺は眼を開ける。
「……さいっあく」
俺が想像していたのは目に優しい一面緑の世界だった。
だが現実は思っていたよりもつらい。そこは眼に痛い原色が入り混じった森……とはいいがたい場所。
小鳥だと思った生物は禍々しいオーラを放っている。
「どうやら俺は見くびっていたようだ……あの神の阿呆さ加減を!」
俺が地団太を踏もうと右足を上げたところで、羊皮紙らしいものが落ちていることに気付く。
何やら知らない文字で書かれていたが、さすがあの神様(笑)に貰った力。すぐ日本語の様に読める。
書いてあった内容はこうだ。
『いやーめんごめんご、転移のX軸とY軸を書き間違えた~~。
やらかした~~!!詫びとして、地図と簡単な魔法のイメージ方法を書いとくよ。あでゅー。
こう見えても創造神:リリー・ゲノム・オルステッド』
二枚目の羊皮紙を見てみると、幼稚園児が描いたような稚拙な絵と、マッチの炎程度の火が出る魔法や、静電気くらいの電気が出る魔法が書いてあった。しかし、説明文が『火がぼわー』『電気がばちっ』
など、題名でわかることをくどくどくどくどA4くらいの大きさの紙で3分の2くらいを陣取っていた。
「詫びが足りねぇよオルステッド!」
悲しみのままに俺は紙を燃やしにかかった。
「灰になれやぁ!!」
憎しみもこもった声で水素に火がつき、一緒に紙が燃えるイメージをぶつける。すると紙は1秒もたたず爆発的な火と共に灰となり消えた。
「呪文もいらねぇのか……簡単にトリガーが引ける分、間違えて使わないように注意しないとな」
紙を燃やしたことですっきりした。そのおかげで冷静な思考を取り戻せた。
一刻も早くこの視力が落ちそうな森から抜け出そうと、森の出口を探す。
……が、わからない。富士の樹海の様に方向感覚が奪われそうだ。
「空を飛ぶこともできなくはないと思うが……途中でイメージ力とか体内のエネルギーが切れたら大惨事になる。ここは町だけ見つけてそこに走るだけで行くべきだな……よし、そうなれば……垂直飛び!」
重力が10分の1くらいの世界に降り立ったイメージで、適度に膝を曲げ、めいっぱい上へ跳ぶ。
「うおおおおおおお!!息、息がやべぇえええええ!無意識に加速イメージつけてたぁああああ!」
頭にとてつもない圧力を受けながら500メートルほど上にとぶと、周りがよく見えるようになってきた。自分から見て一時半くらいの方向に町らしきものが見える。
「よっしゃ!降りたらあっちの方向だな!!」
満足した。が、重力加速度に倣ってどんどん速くなりながら落ちてゆく。
「か、完全に忘れてた……」
死にたくねぇ、とだけ思い俺は地に墜ちる。
どごおおおおおん。
地震が起こった。