第4話:柳君有能、神様無能
神がやっとこさ歓喜の踊りをやめたところで、俺はその世界についての説明を受けた。
「その世界はだな、自然に存在するエネルギーを自分と同期させることで物理法則をある程度無視した現象を起こすことができる。それを世界では「魔法」と言い、その才能があるものは優遇されたりするが、実はミソなのは同期と現象を起こすときに使うイメージ力でだな、鍛えればどうにでもなる」
現実味のない魔法についての話だったが、俺は難なく理解することができる。ゲーマーとしての血が騒ぐってもんだ。というか神、口調が変わっていないだろうか?
「で、科学技術とか法律とかは?」
「主力エネルギーは石油などの化石燃料。電気の存在は認知されているが攻撃のためのものとされているな。科学はあまり進んでいないな。電子機器とかは魔法エネルギーでの代用だ。この世界なら知識チートも簡単だろうさ。」
神は自虐気味に笑う。
「法律のほうは……?」
「一番の強国は立憲君主制だが、ほかの国は共和制国家だったりする。世界共通法として奴隷制度の廃止が行われているが、秘密裏に行われているところもあるな」
神は世界情勢はあまりかかわろうとしないようで、深くまで語ることはなかった。
「……それで、異世界転移といえば二つ、元の世界とチート能力についてですけど。」
俺はいつも読むライトノベルに必ずと言っていいかはわからないがついてくるものだ。
読むたびに元の世界はどうなっているのだろうか、と思っていた。
「元の世界はそっちの神様に掛け合って帰るとき、君が眠って2時間後くらいのところに帰せるらしい。」
それはありがたい。と俺はたまらず笑顔になる。
「結構苦労したんだぞ!もし死んでもバックアップで帰してやれるように冷やし土下座焼き土下座させられたんだ、お前の世界の神さま偉いもんだから辛かった!」
「それはどうもありがとうございます。神様のご尽力に感謝します。」
と大げさに感謝の素振りを見せる。
「ふっふふふふふ……お前もやっと私を敬うようになったか、あーはははははははははははは!!もっと崇め奉れ!!」
すぐに元のキャラクタに戻った神に俺は(ちょろいな、神のくせに)と苦笑する。
「それで、君の言うチート能力だが」
頸椎が折れてるんじゃなかろうかと思うほど後ろの俺に首を傾ける神。
「……普通に話してください。」
神は「相分かった」というとすぐに戻る。
「んで能力は……正直言って無理だ。」
「……まじか」
俺は落胆の声をあげる。
「勇者としての資格をあげるのにもかなり力技なもんで、今できんのは言語理解くらいよ」
「言語理解……通訳いらずになるだけってのもね……」
「仕方ないが、君との交信というか、会話もあと3分くらいしか持たないの、回復まで待つのは無理、でも、向こうの世界で天才と呼ばれていた君なら大丈夫でしょ」
神の情けなさに俺は泣く泣くこう言うしかなかった。
「はい、天才にチートなどいらないです、それでいいです!!」