第3話 言葉の裏で脅迫ですか
そんなうるさい神様をぶっ飛ばして眠りにつくわけにもいかず、嫌々ながらも俺は話を聞くことにした。
「まず第一に、柳丈一郎。君はさっき君自身の世界から脱した。」
さっきまでとは打って変わってまじめな表情になった神の口からは驚愕の言葉。
「うぇ!?それって……俺死んだの?」
理解し難いがために素っ頓狂な感じの混じったような声が漏れた。
俺の問いに神はまたストレスに直結するようなしたり顔。
「安心しろぉ……君は死んでなどいない。今君がここにいるのは私の頼みを聞いてもうためだ。」
その言葉に俺は安心したと同時に疑問を持った。
「あの……頼みって?」
俺は神様に恐る恐る聞いてみる。いやな返答しか返ってこない気もするが。
「俺の管理する世界で、大規模な災厄が今からちょうど10年後にやってくる。その前触れはもう観測できているから来るのは確実だ。だがな、それを止めるために生み出した勇者になるはずの人物が亡くなってしまった。力を与えることができるのは胎児の時だけだ。だからもう……この世界に勇者になれるものは存在しなくなってしまったというわけだ。」
「つまり俺が代わりに勇者になれと」
「そういうことだ!理解が早くて助かる!」
俺が心底嫌そうな顔をしながら言っているのにも気づかず、神様は決まったような体で話を進める。
「いや俺まだやるって言ったわけじゃないし……それに嫌ですよ!仕事もあるし、そんな常に死の危険があってもおかしくないところなんて!」
「そんなことを言ってもだな、私が力を与えることができる出生済みの人間なんてな、それこそこの宇宙で1人いるかもわからないような稀有な存在だ!実際にそれが可能なのはどこを探しても君しかいないのだ!」
まくしたてる神に俺は存在しないはずの壁に押さえつけられているほどの圧力を感じた。そして直感はこういう。『断ったら始末されかねない』と。
「それを止められなくて、滅んでも知りませんからね!」
俺は仕方なくそれを呑んだ。後悔の念で心中埋め尽くされた感じだ。
……神が視界の端っこで歓喜の踊りらしいものをしている。
俺はやっぱり神に一発食らわせたくなった。