06 求む依頼
リッタの好意で一食一晩無料にしてもらい、英気を養った親方とタルトは、しっかりと準備を整えて部屋を出た。
「依頼、あるといいね」
「そうだな」
朝、依頼があることを祈りながら、二人は階下へと降りて行った。とん、とんと階段を下りると、リッタが満面の笑みで二人を迎えてくれた。
「おはよう、親方にタルトちゃん! 昨日はよく眠れた?」
「おはよう」
「おう、おかげさんでな。で、依頼の方だが」
「気が早いわね、気持ちは分からなくもないけど。はい、とりあえず座って朝ご飯食べてからよ」
「でも、お金」
「次の依頼から天引きね。大丈夫よ、安くしておくから」
大丈夫の意味が分からんと苦笑するも、親方は素直に甘えて朝食をいただくことにした。黒いパンとウィンナー。キャベツと駒切ベーコンのスープ。たった三品だけと言う、通常の朝食メニューから見れば質素なものだったが、それでも腹は満たされた。
おそらく、まかないに近いのだろう。主にタルトを気にかけてくれているのは分かるが、優遇されていることを直に感じて、親方は少し気まずかった。
「すまねぇな、今日中に返せればいいんだが……ってこら、嬢ちゃん。ウィンナーこっちにやるんじゃない。好き嫌いしてないで、ちゃんと食いな」
「好き嫌いじゃない。こんなに食べれない」
「ケーキやクッキーならこれ以上食べられるのを、俺は知っているぞ? 縦にでっかくなるんじゃなくて、横にでっかくなるつもりか?」
「喧嘩なら、買うよ?」
「売ってない、売ってない。ほら、さっさと食っちまいな」
「むう」
ウィンナー片手に眉間にしわを寄せる様子を微笑ましく見守りながら、朝食を済ませていた。そんな時だった。
「おっはよー、ございまっす! 初依頼、初依頼!」
「……朝から騒々しくてすみません」
昨日の騒がしい二人組が上階から降りてきた。元気のいい少女は、すれ違った人全てに律儀に挨拶をしている。疎まし気にあしらわれても気にした様子はなく、また別の者に笑顔で挨拶を告げるのだ。リッタはその様子を苦笑しながらも見守っていた。対照的に、エルフの青年は少女が言葉を発するたびに、深く深くため息をついている。まだ日も登ったばかりだと言うのに、既に疲れている様子だ。
「あ、昨日のおっちゃんだ! おはよーございまーす!」
「おう、おはようさん。……元気なのはいいことだが、もしかしたら徹夜明けで依頼こなしてきた奴がいるかもしれんから、こういった場ではちょっとボリュームを落とそうな」
「おっと。そうだね、徹夜明けに騒がしいのは辛いもんね。トーンダウン、トーンダウン」
口に手を当てて、しまった、と言った体で気まずそうに辺りを見渡す少女。幸いにも嫌そうに顔をしかめたものはいた者の、難癖をつけてくるような者はいなかった。
連れのエルフの青年が、だから言ったでしょう、と少女の頭を軽く小突く。
「だから少しは周りをよく見なさいと言っているでしょう?」
「そうだったね、グレンさん。グレンさんの言葉はいつも話半分だから、うっかり聞き流していたよ」
「喧嘩売っているんですか、このお馬鹿娘」
「ええっ!? どこをどうしたらそう聞こえるの!?」
「どこをどう見ても、ですよ。全く……」
やれやれ、と肩を落としたエルフの青年に、親方は思わず肩を叩いて同情しかけた。互いに同行者には苦労させられるな、と心の中では頷いておいた。
我関せず、とウィンナーと格闘していたタルトが、ようやく綺麗に食べ終えた頃。さり気なく依頼票を眺めていた親方は、神妙な顔をしてタルトに告げた。
「手頃な依頼は、ない」
「手頃じゃない依頼は、ある?」
「あるにはあるが……、二人では難しい」
「早足たちがいないと、厳しいもの?」
「そうだな、四人は欲しい。手広く分担していかないと、おそらく長時間の神経疲れで、どっかでミスすることが増えてくるだろう」
「むう……」
人が増えることに抵抗があるのだろうタルトは、頬を膨らませて唇を尖らせた。他人と組むことに抵抗はある、だが依頼を請けないと今日の宿ですら危ない。
己の中の葛藤と戦っている様子が分かって、親方は苦笑しながら依頼票をリッタへと返した。まだ、決められそうにはないようだ。
流れるように先ほどの二人組へと渡された依頼票。親方たちですら手頃な依頼がないと判断したのだから、二人組も手頃な依頼がなくて唸っているのがよくわかる。
リッタが苦笑しながらその様子を眺めていると、カランカランと軽快な音を鳴らして誰かがドアを開けた。
PC4:グレン
種族:エルフ 生まれ:神官
冒険者レベル2
技能:プリースト2(キルヒア)
スカウト1
セージ1
特技:魔法拡大/確実化
言語:交易共通語 エルフ語 魔動機文明語(読)
メモ:巡礼中の神官。物腰柔らか敬語マン。
髪の色:金 / 瞳の色:水 / 肌の色:白
経歴1:異種族の友人がいる
経歴2:始まりの剣を求めている(いた)
経歴3:5人以上の兄弟姉妹がいる(いた)
穢れ度:0
苦労人になる予定はなかったと本人は言っており…




