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訳あり少女のルーフェリア冒険譚  作者: 葉山
シナリオ1 解明編
43/44

43 答え合わせ


「お、お義父さんと呼ぶんじゃないっ!」


 と慌てた様子で叫びながら、男は……アンヌの父は起き上がった。

 バルコニーの方へ、微笑ましい視線を向けていた一行は、その声に気付くとゆっくりと彼を見下ろした。


「目、覚めた」

「丁度いいタイミングでしたね」

「無駄な抵抗はやめた方がいいぞ?」

「そうそう、激おこグレンさんを甘く見ない方がいいよ?」

「ユズ」

「だ、だって本当のことだし! 嘘じゃないもん!」


 ユズだけがどこかしまらないが、冷ややかな視線に晒されているアンヌの父親は、ひやりと背中に冷たい汗が流れたのを感じた。逃げようと立ち上がろうとするも、気を失っている間に拘束されてしまっていたせいで上手くいかない。拳闘士たちに命じようとしたものの、彼らも同じ状況であることを見ると、ぶるりと体が震えた。


「な、なな、なんだね君たちは。いや、それよりも少年は……アンヌはっ!」

「今頃ハッピーエンド」

「くっ……、彼が試練を超え、私は神の試練を乗り越えられなかった……のか」

「うわ、中二病発言っぽい。ひくわー」


 失笑したユズの頭を叩き、グレンは気を取り直すようにして一つ咳払いをする。半目になって呆れたようにしてユズを見ていたタルトだったが、あきらめたように親方の背中に頬を押し付けた。


「で?」

「正直に、こちらの質問にお答えくださいね」

「ひっ」


 笑みを深くするグレンに、思わず息を飲み込んだ。まるでこれから拷問でもされるのではないかとでも言うような雰囲気に、ガタガタと勝手に体が震える。

 グレンたちは互いに互いの目を見つめて、小さく頷くと、一斉に口を開いた。


「この試練での悪趣味な手のヒントをだしたのは、貴方でしたでしょうか?」

「認められない気持ちは分からんでもないが、娘に嫌われたくないなら、ある程度妥協を覚えた方がいいぞ?」

「あれ。おっちゃん、イズマル帝国の……もしかしたら王様だったかもしれない人?」

「あの指輪、大切なもの?」

「「「ん?」」」


 おや? と口にしてから再び顔を見合わせる四人。タルトは大きな目をぱちくりと瞬かせ、親方は苦笑を浮かべた。グレンが一つ咳ばらいをすると、ぽかんと見上げていたアンヌの父がびくりと肩を震わせた。


「まあさ、順番でいいから答えてもらおうよ」


 ユズが人差し指を立てて朗らかに言うものだから、護衛の男たちは助けるべきか否か悩んで動けい様子だ。


「あー…、俺のは質問じゃないから、飛ばしてくれて構わんぞ。なんつーか、寝言聞いてしまって、こう、どうも、なあ?」

「タルトちゃんの親代わりだもんねー、複雑な男親心ってやつ?」

「ユズ、茶化さない」

「てへっ。……グレンさんが誤魔化されてくれると信じて、あたしの質問ね」


 グレンからの冷たい視線を受けているのを感じつつ、ユズはそっとアンヌの父を見下ろした。


「おっちゃんは、イズマル帝国の偉い人だったりする?」

「……黙秘を、貫かせてもらおう」

「それが答えのようなものでしょうに」

「だね」


 確認だってば! と頬を膨らませるユズに、グレンとタルトは呆れたようにため息をついた。タルトがアンヌをイズマル帝国の姫であろうと予想した時点で、彼の正体は薄々知れている。

後日、アンヌから秘密でしてよ? とこっそり教えられるが、彼は現在の旧イズマル王家の当主セルジオ。イズマル王家は歴史上、国外追放として扱われていた。例の事件がなければ、イズマル帝国を治める王であったが、それを大っぴらに表に公言できない立場にあるのであった。


「あのさ、あたしが心配しているのって、ぶれいものー! とか言われちゃわないかってこと。あたし、思いっきり攻撃しちゃったしねー…」

「それこそ今更」

「まあ、一応試練って言ってるからな。ある程度の抵抗と反撃は覚悟していたと思うが?」


 そうだよな? 親方が念押しするように尋ねると、もちろんだ、とかすれた声でアンヌの父は言葉を押し出した。

 問答だけでこれ以上の狼藉を働かないことを感じたからか、受け答えをする言葉に余裕が出てきたように感じる。

 そんな様子を感じたグレンは、静かに問いかけた。


「それで? この試練での悪趣味な手のヒントをだしたのは、貴方でしたか?」

「……仕掛けをしたのは、主にアンヌだ。魔動機文明語の劣化の確認や、ヒントの取り付けを行ったのは我々だが」


 婉曲に是と言われたことにより、グレンは大きく息をついて、呆れた声音で言い詰った。


「……まったく、今回は私たちがいたからいいものの。まだ十歳の少年ですよ? 魔物が出る場所もありました。魔動機文明語なんて読める人にしか読めない言語もありました。危険も大いにありました。もう少し難易度を下げることはできなかったのですか?」

「ソレに関しては、代々続いてきた試練だからとしか言いようがない」


 最初はグレンの言葉にたじろいでいたアンヌの父だが、それでもきっぱりと言い切った。


「試練を無事にこなせねば、我が血筋の娘を守る力を所持しているかも怪しいと言う事になる」

「ですが」

「これくらいできねば、娘はやれん。それは当家の方針として当然のことだ。他に口出しされる筋合いはない」

「なんですって?」

「それに、自分の為に命を懸けて戦ってくれる友や仲間がいるか、そこにも関係してくるのだ。一人でこなす試練ではない、というのは、共に行動していて分かっただろう?」

「それは、そうでしたが……」


 徐々に威勢がなくなるグレンに、アンヌの父は不機嫌そうに吐き捨てると、後ろから呆れたような口調で、赤巻髪の少女がロランと手をつないで近付いて来た。


「不機嫌さ丸出しだなんて、大人げないですわよお父様」

「アンヌ……」

「それに、皆さまはそう仰るけれど、わたくしはロランならできると思ったもの。現に、ロランは試練を乗り越えた。でしょう?」


 どこか勝ち誇ったように笑うアンヌは、ロランの手を引きながら、父の傍へと歩み寄った。そしてゆっくりと、実の父を見下した。


「このイズマル王家に伝わる古き作法に従い、この試練を乗り越えたのだから、お父様は何も言えないはずよ」

「アンヌ……!」

「何と言ったって、お父様の時と同じ試練内容ですもの。お母さまに聞いて再現したかいがありましたわ」

「で、でもなあアンヌ……」

「でも、なんですの? お父様。まさか、この期に及んでまだロランのことを認めないつもりなのかしら?」

「ね、ねぇアンヌ、そこまでにしようよ。アンヌのお父さんがちょっと可哀想だよ」

「き、君にまだお義父さんと呼ばれる筋合いは」

「お父様?」


 じとりと、咎めるような視線を向けられると、アンヌの父はとても悔しそうな顔でロランを睨みつけると、口から唾を飛ばしながら、精いっぱいの威勢で宣言した。


「し、試練を突破したからといって、いい気になるんじゃない! 結婚するまではお義父さんと呼ばせてやらんからな!」

「往生際が悪いですわよ、お父様」

「うう、娘が冷たい……」

「だから言ったじゃねぇか……あーあ、いわんこっちゃねぇ」


 目を白黒させるロランの前に庇うように立ち、呆れたような視線を父に向けるアンヌ。アンヌの父はそれに耐えられなくなったのか、肩をがっくりと落としてとぼとぼと去って行った。茫然と様子を見守っていた護衛たちが慌てて後を追っていくのを見送ると、清々したとでも言うかのようなスッキリとした表情でアンヌは一向に向かって笑いかけた。


「ロランを助けて頂いたこと、感謝しますわ」

「皆さんのおかげで試練を乗り越えることができたんだ。本当に、ありがとうございます!」

「何言ってるの、ロランが最後まで頑張ったってのがあるからでしょ! あたしたちはその手伝いを、ほんのちょこっとだけしただけ」

「ん。間に合ってよかった」


 ぺこりと頭を下げるロランとアンヌに、ユズは照れたようにして笑った。


「これは、わたくしからのほんのお礼です」


 そう言って、アンヌは綺麗にたたまれたハンカチを一行の前で開いた。そこには、冒険者たちが求める〈剣の欠片〉が数個置かれていた。

 そんな貴重なものを渡されるとは思わず、四人は大きく目を見開いた。


「おお! 太っ腹だな、いいのか?」

「さすが旧王家、あるところにはある」

「わーい! なんだかよく分からないけどありがとう! あとでグレンさんに教えて貰おうっと!」

「はいはい、後でですね」


 ユズのみ訳も分からず喜んでいたが、その価値が分かる親方らはホクホクと頬を緩めていた。

 全員に〈剣の欠片〉が行き渡ったことを確認すると、タルトは親方の背中から小さく顔を出してアンヌを見つめた。


「ねえ、教えて」

「はい?」

「指輪のこと」

「指輪? ああ、ロランに預けた指輪のことでしょうか?」


 ぎくり、と身を強張らせるロランの様子がアンヌの背後で見えたが、タルトは静かに見なかったことにしてアンヌの言葉を待った。


「あれを身に着けていれば、この離宮を守っている番犬ちゃんが敵と認識しなくなるのですわ」

「え」

「ああ、だから今日はそこまで重要視しなかったと」

「なるほどなー。なんか納得したわ」


 それをロランが知っていたのならば、タルトが最初に指輪について確認しても優先しなかったわけにも納得である。ユズと親方が、少し渋い顔をしていたのは仕方がないのだろうとは思うが。


「そう、ありがとう」

「納得したのなら、よろしいのですけれど。でもあの指輪は、皆様には差し上げられませんわよ?」

「ん、それは、分かってる」


 ちらりとロランを見ると、気まずいのかそっと視線を逸らされた。


「よし、んじゃ引き返すかね」

「そうですね。無事に彼の宝も手に入れましたし、あとは私たちの依頼達成、だけですかね」

「帰るまでが冒険ですーってね!」


 再び隠し通路へと引き返そうとした一行を見て、アンヌは不思議そうに首を傾げた。


「あら、帰るのならば船を手配するので、そちらに乗って行ってもよろしくてよ?」

「えっ、いいの!?」

「あの道は、いわば隠し通路ですの。場所を告げてもらえれば、そこまでお連れするように伝えますわ」

「おお! そいつはありがてぇな!」

「またあの地下を通らなくていいのなら、超喜んでだよさっすがお嬢様! あ、お姫様! よっ、ふとっぱらー!」

「……調子がいいのですから、まったく。礼儀がなっていなくて申し訳ありません」

「ふふ、お気になさらずとも結構よ」


 さらりと流され、これではどっちが年上だか分かったものではないな、とグレンは呆れた様子でアンヌとユズを見比べてしまった。

 アンヌに導かれ、湖に面しながらも木立に隠された桟橋へと移動する。〈水鳥〉のようだが、この島に来るまでに利用していた〈水鳥〉と比べるとあからさまに高級そうな素材と作りとなっているソレに、ゆっくりと乗り込んでいく。

 タルトはぎゅっと目を瞑ったまま、親方にしがみ付いていた。名残を惜しむかのように、ロランが最後に乗り込もうとしていた。


「これからは自由に会えますわ、またね、ロラン」

「うん。……うん、またね、アンヌ」


 真っ赤な顔で大好きだよ、と伝えるロランに、アンヌは、それはそれは優しい笑顔でわたくしもよ、と返していた。

 そして、ロランとアンヌは別れ惜しみながらも、一度別れ、一行はアンヌが手配した船に乗り込んだ。


「行先は、〈水晶の欠片〉亭でよろしいので?」

「え? 直接行ってくれるの? わあ、たすか」

「だめ」

「え?」


 ぎゅっと目を瞑ったままのタルトが、制止の声を掛ける。


「今、何時かわかる?」

「ええと、……十七時頃になりますね」


 かちり、とグレンが懐中時計を開いて確認する音が聞こえた。静かに水面が波を立てる音を聞き流しながら、タルトはゆっくりと頭の中で計算する。


「シムニスさんが来るまで、あと三時間ある」

「よく、覚えているわね……」


 船の縁を見ないように、親方に地図を広げるように頼むと、目前で広げてくれたのが分かる。安心して目を開いて、小さな指である場所を示した。


「ここ。ここで下ろして欲しい」

「ははあ、そっかそっか、いいぜ。俺は付き合うが、坊ちゃんたちはどうする?」

「え? なに、どういうこと!?」

「宝探しが終わったから、日があるうちに、指輪探し、と言ったところでしょうかね」

「え。グレンさんなんでわかるの!?」

「少し考えれば分かることです。それで、ユズはどうします?」

「もちろん行きますともー!」


 船頭に伝えた場所、そこはタルトと親方が初めてロランと出会った場所。旧市街とをつなぐ東の水辺であった。


G M:という情景は、君たちはここから見える

    何を話しているのは分からない

    (あっれー?おかしいなー、ここ感動的なシーンのはずが、全部カットだなんてー!!)

ユ ズ:うんうん、甘酸っぱいねー…で?

グレン:めでたしめでたし、ですかね? …で

親 方:目的の一つは達成、だな……で

タルト:うん、で

G M:あ、はい

    じゃ、あの

父 親:「お、お義父さんと呼ぶんじゃないっ!」

G M:って慌てた様子で叫びながら、男は…アンヌの父は起き上がった

タルト:おはよう

親 方:さて。んじゃ

グレン:そうですね

ユ ズ:覚悟はいいかしら?

父 親:「な、なな…なんだね君たちは。」

    「少年は……アンヌはっ!」

タルト:今頃ハッピーエンド

父 親:「くっ…、彼が試練を超え、私は神の試練を乗り越えられなかった…のか」

タルト:で

G M:(さっきからもうなんなんだよすっぱり言えよー)

ユ ズ:おっちゃん、イズマル帝国のもしかしたら王様だったかもしれない人?

グレン:この悪趣味な手のヒントをだしたのは貴方ですか?

親 方:認められない気持ちは分からんでもないが、娘に嫌われたくないなら、ある程度妥協を覚えた方がいいぞ?

タルト:あの指輪、大切なものなの?

G M:あっるえええ?

    ものの見事にみんな言ってる事バラバラじゃんなんだよもー!

タルト:あれ?違った、びっくり

親 方:俺は違う気がひしひしとしてた

グレン:逆にバラバラだったのにびっくりですよ

ユ ズ:まーさー、順番でいいから答えてよ、ねっ?

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