38 地下の番人
「真、第一階位の彩。光、輝き――光明」
タルトが灯した【ライト】の明かりがぼんやりと階段を照らす。親方、タルト、グレンとロラン、ユズの順でゆっくりと階段を下りて行く。階段は地下の暗闇に向かって続いており、既に入口の光は見えない。
何処まで降りて行くのだろう。先が見えない不安から、ロランは思わずグレンの服をそっと掴んだ。グレンがその手を振り払うことはなかったものの、通路の先を見据えているようで何も言わない。
かつん、かつんと足音だけが反響する階段。明かりに照らされた石組みの壁も天井も、明らかに人の手によって造られた物であることが分かる。
わざわざあんな仕掛けまで仕込んで、一体何のために?
タルトは胸の内にくすぶる疑問が晴れないことに、唇を尖らせる。答えは宝探しの為にと既に明かされているが、知りたいのは何故そのようなことをする必要があるのか。そこまでして厳重なヒントを重ねた先の宝は、それほどの価値があるものなのか。
「……階段が終わるぞ」
「やっとかー」
「まあ、真っすぐな通路は続いているがな」
「気は緩めないように、進みましょう」
「うん」
タルトが考え込みながらも親方の背中を追っていると、階段が終わる。一度緩みかけた気を引き締め直して、再び歩き出す。
警戒を続けながら地下道を進む。このときばかりは、ユズも黙って背後警戒を続けていたため、互いの足音と息遣いだけしか聞こえない。不安をぐっと飲みこんで、グレンの服を握る力を増して、ロランは口元も引き締めた。
しばらく真っすぐ歩いた頃、ようやく通路の終わりが見えてきた。
「……上りの階段だな」
「降りた分だけ、登るのね……うへぇ」
背後でユズの嫌そうな声が返ってくる。思わず漏れた苦笑がグレンとロランのいる辺りから聞こえた。
タルトが小さな手を親方の背中に添えた。親方は分かってるとでも言うかのように、ゆっくりとヘビーアックスの柄に手を掛ける。
「それでだな」
「うん?」
「なにか、いるぞ」
「警戒を」
グレンの鋭い声に、それぞれが獲物に手を掛けた。そっとロランとユズの位置を入れ替える。
タルトは目を細めて、階段の前にいる何かを見つめた。
低いうなり声。四足脚の獣型。階段の前に左右に揃って微動だにしていないが、明らかに視線を感じる。
【ライト】の明かりを向けると、一対の犬の形をした石像が階段を守るようにして立ちふさがっているのが分かる。
「ここでも、石像、だな」
「狛犬っぽい感じ? でも、こういうののお約束って、大概ガーゴイル的なもので、動きだしたりして」
「……動き、出したな」
「あ、ごめん、フラグだった」
ユズの言葉をきっかけに、石像の犬たちが動き出す。最初の一歩は恐々と。二歩目はしっかりと踏み出して。三歩目の動きはなめらかで、それ以降は石像だったことを忘れそうな程に低い姿勢で唸っている。
まるで、あと一歩でも踏み出せば襲うぞとでも言うかのように。
「どうする、坊ちゃん」
「こ、ここまで来て帰るわけにはいかないよ! と、通らせてもらう!」
「だ、そうだ。行くぞ!」
「了解っ!」
からからに乾いた喉は掠れ、所々声が裏返っているがロランの口上にニヤリと笑みを浮かべた親方は、すぐそばまで前に出てきたユズと共に前に出る。楽しそうに応えた声を聞くや否や、石像の犬たちへと飛びかかった。
「【ペネトレイト】……全く、気が早い!」
グレンの呆れた声と共に、キルヒア神への祈りの声が聞こえる。グレンへ知識の加護が下りるも、駆け出した二人へのサポートが先だと慌てたせいで敵の名前すら思い出せない。
「オブディシアンドッグ。爪よりも牙に気を付けて。石像でも、素早い」
直ぐに【フィールド・プロテクション】の詠唱に切り替えると、タルトの淡々とした声が親方たちの背後へと飛んでいく。真っ直ぐにオブディシアンドッグを見据えた瞳は、ただの石像ではないことを看破した頃から探っていたのだろう。端的に、今必要な情報だけを述べている。
叫んだ後に、直ぐ詠唱に切り替える。
「【フィールド・プロテクション】」
グレンの神聖魔法が五人に降り注ぐ。と同時に親方とユズの前に稲妻が駆け抜ける。
「操、第一階位の攻。閃光、雷雲――雷光」
「!?」
パァン、と甲高い音を立てて、オブディシアンドッグの間で閃光が弾けた。
怯んだオブディシアンドッグたちだが、思ったような効果が出なかったことにタルトは小さく顔をゆがめた。魔法制御は抜かりないものの、怯んだ一歩が足りなかったのか、親方の初撃が外れたことも予想外の一つであるが。
「行くよ! 必殺!」
ユズが鋭い一撃を放つも、思ったような場所にあたらず、僅かながら傷をつけることしかできない。
大ぶりな攻撃に隙だらけのユズは焦るも、オブディシアンドッグたちは標的を先に到着した親方に合わせたらしい。
かわるがわる素早く牙で傷つけては少し距離を置かれ、親方の金属鎧に新たな傷が増えていく。
「親方……!」
「気にするな、やれ!」
歯をむき出して笑う親方は、タルトの言葉を一蹴した。グレンがすかさず【キュア・ウーンズ】をとばし、少しでも傷を癒す。
マギスフィアが変形し、素早く動くオブディシアンドッグの動きを捕らえるスコープを形どる。
「【ターゲットサイト】使うんだ、逃れられると思うなよ?」
グレンの【キュア・ウーンズ】が己の身体を癒していくのを感じる。動く。体が、まだ思うように動く。思い描いた速さで、思い描いた威力のまま。
捕らえた。
「っらあ!」
ヘビーアックスを振りかぶる。ズドン、と尻尾の先を切り落とし、地面に刃先がのめり込む。きゃいん、と悲鳴を上げたオブディシアンドッグが反撃の姿勢に映るのを目の端にとどめた親方は、すぐさま刃先の影へと身体を滑り込ませる。ばくん、と空を噛んだ音が思ったよりも近くで聞こえた。
突き刺さったヘビーアックスを抜くために、飛びかかられるも、歯を食いしばって親方は耐えた。
ユズがもう一体の気を引いて、小さな盾でその猛攻を必死に防いでいる。
「ああもう! 少しは大人しくしろっての!」
「真、第一階位の攻。瞬閃、熱線――光矢」
ユズの空振り加減に見ていられなくなったのか、タルトは唱えていた【エネルギー・ボルト】をユズが相手取っていたオブディシアンドッグへと向けた。
光の塊が一直線にオブディシアンドッグへと突き進む。光が貫き通った際に、目を見開いて痙攣をしていた。数秒でも震え止まった隙をユズは見逃さなかった。
「今度こそ、必殺!」
鋭い一撃が、オブディシアンドッグの横腹を貫く。苦し気な声をあげて倒れたオブディシアンドッグは、やがて再び石像の姿へと変わり砕け散った。
「よっし! まずは一体! ありがとタルトちゃん!」
「親方のフォロー」
「任せて!」
ユズが苦戦している親方へと駆け出すと、タルトはほうと一つ息をついた。残りの魔力を考えると温存したいところである。ハラハラと様子を伺っているロランを背に、親方の方へと視線を向ける。
「潰れろっ!」
親方が振り下ろしたヘビーアックスが、オブディシアンドッグの左足を跳ね飛ばす。歪な三本足のオブディシアンドッグは、それでも戦意を失わない。所詮命令に従うゴーレムの一種なのだろう。欠損した状態での戦闘続行の意思に、親方は小さく舌打ちをした。
何度目かの【キュア・ウーンズ】がとんでくる。ボロボロなのはオブディシアンドッグだけではない。細かな傷をあちこちに作った親方もだ。
互いに負傷している。オブディシアンドッグは速さで押していた。親方はその力でそぎ落としていた。拮抗していた場を崩すのは、いつだって一つ。
「親方さんっ」
動きの鈍ったオブディシアンドッグの連撃を避け、大きな動作でヘビーアックスを振りかざす。余裕を持った動作は攻撃の流れを予測させやすいのか、負傷した足を引きずりながらも避けようとする動きを見せる。
「だがそれも、計算の内だぜ?」
「っえええええい!」
にやりと笑った親方の脇から、ユズがレイピアを突き出す。右足を貫いて、地面に縫い留められる。必死に外そうともがくも、笑った親方がヘビーアックスを振り下ろす方が先だった。
ぐしゃりと潰れたオブディシアンドッグは、ぱらぱらと小石を撒き散らして崩れ落ちた。
G M:地下道を進むと、やがて登り階段に行き当たります。
この階段を上ると、メリブ離宮へと出るのですが……
番人として配置されていた犬に出会います。二匹
まもちきどうぞ
タルト:GMが疲れてきてる
説明がおざなり
親 方:いたわってやれw
グレン:2D6+3+2 ペネトレイト → 8[3,5]+3+2 → 13
グレン:2D6+3+1+2 魔物知識 → 3[2,1]+3+1+2 → 9
タルト:2D6+4+1 魔物知識 → 5[3,2]+4+1 → 10
G M:弱点は抜けなかったね
敵データ張ったよー
ついでに危険感知もどうぞ
タルト:2D6+4+1 危険感知 → 8[6,2]+4+1 → 13
グレン:2D6+3+1 危険感知 → 3[2,1]+3+1 → 7
ユ ズ:2D6+3+1 危険感知 → 5[1,4]+3+1 → 9
親 方:2D6 平目 → 10[6,4] → 10
G M:あ。……まあいいか
危険感知も抜いたから、先制もどうぞ
グレン:2D6+3+1 先制 → 10[4,6]+3+1 → 14
タルト:2D6+2+1 先制 → 6[3,3]+2+1 → 9
G M:先制も、とったのか13だぞ抜くのかよソレを
グレン:いやあ、一つくらいは抜けてよかった
タルト:コンプリートならず、残念
先頭に突入する前に、草臥れていたGMはボイチャ戦闘を提案し、
ログには振った数値しか残っていなかったという悲劇が開始されたのであった……




