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訳あり少女のルーフェリア冒険譚  作者: 葉山
シナリオ1 探索編
34/44

34 ヒント8


 ホールには五百人ほどの観客が入れそうな観客席と、舞台とがあった。観客席の床には赤い絨毯が敷かれているが、かなりボロボロになっている。見上げれば、観客席の上には古びた木製のシャンデリアが鎖でつるされているのが分かる。


「ぼろっちい」

「まあ、今は使われていないからな。落ちてこないだけもうけもんだろ」

「大丈夫、落ちてこないよ。かなり古いけど、頑丈なのは分かってる」

「おれたち、時々乗って遊んでるからな」

「あ、馬鹿。大人には内緒だろ」

「危ない遊びねー。でもそれがスリルあって楽しいのは、分かるわー。めっちゃわかる」


 わらわらと周りに集まる子どもたちが口々に話し出すと、さざめきがホール内に反響した。顔をしかめたタルトが一歩下がるのに気付くと、親方は仕方なさそうに頭を掻いた。

 子どもたちが好き好きに話している内容に頷くユズとロランは、すんなりと会話の中に加わり、シャンデリアを指さした。


「でも、あそこだいぶ高いよね? どうやって乗っているの?」

「舞台の裏にシャンデリアを上げ下げする装置があるんだ」

「えっ、動かせるの? すごくない?」

「リーダーが最初に見つけたんだぜ!」

「リーダー、さすがじゃん!」

「だろー!」

「やめろよ、照れるだろ」


 満更でもなさそうな顔で照れるリーダーを褒め続けるユズ。自分たちのリーダーを持ち上げられたことで気をよくした子どもたちの様子を見て、ロランはユズの袖を引っ張り本題へと戻そうとした。


「ねえ、よく登っているなら、上の方に何があるかわかるかな?」

「あ、ええと? あ、そうそう、宝探しのね! 輝く世界だから……ええと、光物とか、反射して何か映るとか?」

「えー、なんかあったっけ?」

「光……あ、なんか光で変な模様浮かんでくるのあったよな?」

「うん、あったよ。確かね、丸い天窓を開けると、扉の裏が鏡になってるから、そこに光を当てるんだよ」

「それね!」


 ユズが勢いよく手を打ったため、ぱあんっ! と大きな音がホール内に響いた。ビックリした子供たちは目を丸くして口を閉じる。

 静寂が落ちるホール内。その気まずさをごまかすように、ユズは無理やり笑みを浮かべて裏手を示した。


「とりあえず、装置、見に行く?」

「……そうだな。大丈夫だとは思うが、一応な」

「……ユズ、後でお話があります」

「ひぇっ」


 あれ、母ちゃんに怒られる時と同じ雰囲気だぞ。可哀想にな。などと子どもたちの囁き声が嫌でも聞こえてくるのが、ユズの心にとても重く突き刺さったのは言うまでもない。

 舞台の裏手に回って、昇降装置の元へと移動する。

 装置のハンドルを奥に向かって回転させればシャンデリアが下がり、手前に向かって回転させればあがる。魔法の力はないようで、操作方法は一目見ただけで分かるような単純なものだった。


「よっし、じゃ俺がハンドル操作をするか。ゆっくり下ろすぞ」

「ん。じゃ、乗ってくる」


 親方が装置を回転させてゆっくりとシャンデリアを下ろす。静かに地面近くへと降りたそれは、ゆるやかに揺れている。

 タルトは木製のそれをしっかりと掴んで、組まれている部分を観察する。大人一人くらいなら乗っても大丈夫そうなくらいには、丈夫な造りをしていた。

 これなら大丈夫、といそいそとシャンデリアに乗り、しっかりと捕まったタルトは片手をあげて親方に合図をした。


「あげるぞ」


 親方の掛け声と共に、再びゆっくりとシャンデリアがあがっていく。一番上まで引き上げると、ゆっくりと揺れが収まるのを待ち、タルトは器用にシャンデリアの上で立ち上がり、天井にある丸い天窓をあけた。


「んっ」


 力を込めて押し開けると、薄暗い視界の中に眩しい光が溢れ出す。思わず目を瞑るも、少し顔をずらしただけで光を逸らすことができた。

 差し込んできた太陽の光が、ちょうどよく内側の鏡に反射して天井に文字が浮かんで見える。

 交易共通語ではなく、魔動機文明語だからこそ、模様に見えたのだろう。子どもたちが言っていたのはあれだろうと、タルトは目を凝らしてそれを見つめた。



【靴音響かせ小道を行進 広場に出たら一休み】



「ねー、タルトちゃん、見えた? ていうか何かわかった?」


 わいわいと子どもたちと騒ぐユズの声を華麗にスルーし、タルトはその文字を頭の中に叩き込んだ。

 他には何かないものかと、光を直視しないように天窓付近も入念に調べようと身を乗り出した。天窓に施された金色の飾りは、既に煤けており、何度も触れられていた手跡があちこちについている。

 ふと、装飾の中に赤い何かが混ざっていることに気が付く。……宝石だ。それを取ろうと四苦八苦したのか、周りは傷だらけになっているが、宝石には傷はない。

 爪の先ほどの大きさだが、宝石は宝石だ。タルトは器用に装飾の仕掛けを解き、それをこっそりとポケットの中に入れた。


「おーい、下ろしてもいいか」

「ん」


 親方の言葉に、タルトは大きく手を振ってこたえた。シャンデリアをゆっくりとおろして、タルトは無事に地面へと足をつける。

 期待の視線を一身に受けながら、タルトは嫌そうに親方の後ろに隠れ、ぽつりと零した。


「靴音響かせ、小道を行進。広場に出たら、一休み」

「それが宝探しのまたのヒントか」

「へー、あんな模様にそんな意味があったんだ……」

「ふーん、まあ姉ちゃんたち頑張りなよ。あーあ、お宝が物じゃないんならなー」

「き、急にやる気なくなってるし」


 白けた様子の子どもたちに、頬を引くつかせながら苦笑を浮かべたユズ。興味を失った少年たちが親方の反対側の脇を通り抜けて行く。

 リーダー格の少年が通り抜ける時、タルトはぽつりと零した。


「赤いお宝は、貰ったから」

「なっ!」


 視線が合う事もなく告げられた言葉に、リーダー格の少年は息をのんだ。歩が鈍るも、後ろに続く子どもたちが背を押すため、止まることは出来ない。


「どうしたの、リーダー?」

「……なんでもねぇよ! ほら、行くぞお前らー!」


 悔しさ半分、驚き半分の心境を飲み込んで、後に続く子どもたちを率いるリーダー格の少年。その反応に、急に素っ気なくなった理由が分かったタルトは、小さく鼻で笑った。


「どうした嬢ちゃん」

「なんでもない」

「ならいいが。ほら、俺たちもこっから出るぞ。で、謎解きの時間だ」


 親方に促され、一行は劇場内から外へと出る。子どもたちが立ち去った廃墟はとても物静かで、考え事をするにはもってこいの環境だった。

 ユズが地図を取り出すと、グレンが何か所かに書き込みを加える。顔を突き合わせて地図を見下げる五人。


「謎、分かった?」

「うーん、一休み……」

「靴音響かせ……ってことは、機音があるくらいだから、靴屋通りとか……この通り沿いだろうな」

「確かに、ありえそう!」

「ここまでくると、その線が強いでしょうね」


 親方が北北西に位置する靴屋通りを示すと、ユズとグレンが同意するように頷いた。

促されるようにして靴屋通りの文字を見つめていたロランが、はっとした表情で顔を上げる。


「もしかして、ボクもう分かっちゃったかもしれない」

「彼女が?」

「どうしてそう、全部彼女に繋げるかなぁ! いや、まあ、彼女と行きたい場所だったからってのもあるから、間違ってはいないんだけれど!」


 もー! と、顔を真っ赤にして半ば開き直りを見せるロランは、ぺしぺしと地図上を叩いた。


「靴屋通りには、<スフェラリール>って名前のお菓子屋さんが広場にあるんだ」

「お菓子!」

「だから、広場で一休みって、ここのお店のことを言っているんじゃないかな?」


 ぱっとお菓子の言葉に満面の笑みを浮かべたユズに呆れつつも、タルトとグレンは少し考えこむように言葉を噛みしめて頷いた。


「……あり得そう」

「そこが古くからあるかってところが、問題にはなりますが……」

「でもま、他に思い当たる場所はないしな。行ってみるとしようぜ」


G M:【靴音響かせ小道を行進 広場に出たら一休み】

ユ ズ:見えた?

タルト:ん、覚える

G M:ついでに、タルトは天窓の装飾の中に宝石見つけたけど、どうする?

タルト:え、取る

    それで隠しておく

G M:あ、う、うん。分かったよ

    その価値は2d*20ね


タルト:2D6 平目 → 9[6,3] → 9


タルト:180

    まあいい。ほくほく


即答で隠されてびっくりしたのはこの私。

実際は他にもヒントはあったのですけれど、ここでこのヒントになったのはPCたちが単調な作業に飽きてきたような様子がちょくちょくと見受けられたので。

他のヒントは実際にプレイしてご確認ください。

まだありますので、公式で。

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