32 かるがも、ちんぴら
再び<水鳥>を借りて、水路を進む。大きな水路を横断し、細い水路へと再び入り込んだ。
目的地付近の水路は、網の目のように張り巡らされた細い水路に、美しく精巧な彫刻が施された橋がいくつも掛かっていた。建物と建物の間を縫うかのように続いている街路も、細かく複雑に入り込んでいる。
地図を持つユズが、細かすぎて迷いそう、と泣き言を漏らしながらも街路を進んで行った。
やがて、球体をした白い建物が見えてくる。目的地がはっきりと見えると、まっすぐにたどり着ける道へと出た。迷うことなくたどり着けることが分かると、誰もが安堵の息を漏らした。
グレンが懐中時計を取り出す。針は午後十四時を示していた。
「近くて助かったな」
「移動遠いと、大変」
「そうだな。なあ、神官さん時間の方は大丈夫か?」
「今十四時ですね、このまま延々とヒントが続いていくのでなければ、大丈夫かと思いますが」
「そうさなぁ。目途がつかねぇってのが、なんとも……」
これが普段の時間を気にしなくてもいい探索ならば、どれくらいヒントが続こうとも気には留めないのだが、今回は明確な時間制限がある。その上冒険者だけのパーティならば多少の無茶ができるものの、護衛人たるロランが一緒では、<水鳥>を利用することでこまめな休憩時間を作ってやらねばならない。そんな気遣いをしながらの、終わりが見えない宝探しでは、どうも割に合わない。
困ったように肩をすくめた親方とグレンだったが、ウズウズしていたユズが駆け出したのを見ると慌てて止めに入る。
「ねえ、劇場の近くまで行ってみようよ!」
「ユズ、待ちなさい。一人で行動は……」
「ユズ姉さんボクも行く!」
「ああ、ほら言わんこっちゃねぇ」
顔を覆ってユズとロランが駆け出すのを嘆いた後、親方はぐずるタルトを引っ張って慌てて後を追いかけた。グレンは言わずもがな、である。
ユズが一番に劇場の入口まで駆けて行こうとすると、急にチンピラ風情の男二人に行く手を阻まれた。
「な、なにようっ」
「おうおう、ここらは俺らのシマだ。ここを通りたければ、通行料を支払うんだな」
ニヤニヤと一行を見て笑う男たちに、たじろぎながらもユズは足を踏みしめる。明らかに卑下た笑みを浮かべる男たちに、女子供に神官と多少警戒すべきは親方だけか、と見られているのを鋭く感じ取ったグレンは、とても嫌そうに顔をしかめた。ロランをかばうように素早く前に立ち、親方の方へ押し出す。
「ざ、ちんぴら」
「嬢ちゃん、坊ちゃんと下がってろ」
親方はヘビーアックスを握りしめながら、ロランとタルトをかばうようにして前に進む。
さりげないやり取りに気付かないユズは、見下された発言に頭に血が上ったかのようにして相手に詰め寄る。
「はあ!? なんでアタシがあんたらに支払わなきゃならないのよ!」
「ここが俺らのシマだからだっ! さあ、通行料の五百ガメル支払うんだな!」
「五百!?」
「ぼったくりもいいところですね……」
提示された金額に目をむくユズ。グレンは呆れながらも親方と場所を代わる。はらはらと下がったロランのことなど気にも留めないタルトは、こてんと首を傾げた。
「ここがシマ? すみか? ということは。親方、あの人たち、かるがも?」
「ぶふっ、かるがも……!」
「嬢ちゃん、冗談は時と場合を考えようぜ」
「馬鹿にしやがって……!」
「面倒だ! ぶっ潰して有り金全部ひんむいてやるよ!」
単細胞な人間には挑発に聞こえるからな、と普段なら窘めるところだが、すでに時遅し。それどころか、タルトのかるがも発言に、ユズがツボに入ったらしく身もだえて笑いをこらえている。
「かるがも、怒る」
「ね、ねえタルトちゃん、本当にそれ、やめ、やめて……くふふっ」
「ああ、おいしっかりしろよ、しまらねぇだろーが」
呆れながらもヘビーアックスを構える親方が前に出ると、肩を震わせながらもユズがレイピアを抜く。祈りを捧げながら呪文を唱えていたグレンが、恒例となった魔法を二人に掛ける。
「【フィールド・プロテクション】」
前に出た二人の身体に淡い光が纏われた。慣れ親しんだ守りの力を心地よく思いながら、力強く前へと進み出る。
「大丈夫、かるがもちんぴらでも、普通のちんぴらと一緒。語呂が違うだけ」
「ぷぷっ、略してかるぴら……ぶふっ」
「おいこら剣士の嬢ちゃん真面目にやれっ!」
「ふふっ、ふ、あ、だめ、止まらなふははっ!」
激昂する男二人に対して向かって行くも、ユズの発作は止まらず、それどころか、後ろからタルトが追い打ちをかけてくる。
「ば、馬鹿にしやがってぇっ!」
「吠えられた……じゃなくて、かるがもだから、鳴かれた?」
「ひぃー! お腹痛いー!」
「てめぇらマジでいい加減にしろ!」
それはこっちの台詞だ!
そう叫びたい親方だったが、ぐっと言葉は飲み込んで男の一人にヘビーアックスを振りかざす。だがそれも、お前じゃない、とでも言わんばかりに弾かれた。
「なっ!?」
「はー、真面目にやろっと」
血走った目で睨まれているユズは、大きく一息ついてから、素早く男たちへと向かっていく。刃を振りかざされるものの、怯まない。
じっとその軌道を見つめ、体をひねって避ける。すれ違いざまに一突き、と同時に繰り出されたもう一本の刃は避け損ね、利き腕に一本の傷跡をつけられた。
「くっそ! 死ねよっ!」
「お生憎様っ! ていうか女の子傷つけるとか最低だよ、クズ男!」
「あんだとごらあああっ!」
「貴女まで煽ってどうするんですか……」
背後で待機しているグレンが呆れたように頭を抱えていた。本当のことだもん! と叫ぶユズに前を向け、と真面目にやるのではなかったのかと言ってやりたい思いで一杯だったが、攻撃の手が滑ったら困るのであえて飲み込んだ。
激昂している男二人は、親方とユズの攻撃をかすめるも、深手になるようなへまはしていない。案外動きは悪くないようで、場は均衡していた。
「仕方ない……」
魔力の温存をしておきたかったタルトだったが、流れを変える一手が必要と見たために、杖を構えた。
「操、第一階位の攻。閃光、雷雲――雷光」
パチ、と杖先で小さく閃光が弾ける。次の瞬間、パァン、と甲高い音を立てて、男たちの間で閃光が弾けた。
「っ、ぎゃあああああああああっ!?」
「あがががががががっ!?」
髪が焼け焦げ、服からは僅かに煙があがっている状態の男たちは、とうとう膝をついた。内一人は立ち上がることも困難そうで、目を白黒させている。
痺れが止まない状態でも刃を大きく振りかざして襲い掛かってくるが、万全の状態ではないその攻撃は、親方に軽く弾かれてしまった。
「【キュア・ウーンズ】。さあ、終わらせてください」
「すまん、助かる!」
グレンの神聖魔法による回復で、これまでに溜まっていた親方の疲労と傷を癒すと、親方はユズを庇いながらも上手いこと立ち回り、男たちからついに武器を落とさせた。
満身創痍になりながらも奮闘した男二人だったが、獲物がなくなっては分が悪すぎると、ようやく頭に昇っていた血が引いたのだろう。互いに支え合いながらよろよろと逃げ出した。
「お、おぼえてろよっー!」
と、月並みの台詞を残しながら、ではあるが。
「弱い狼ほど吠える、ってな」
「かるがもなら、ぐわぐわ?」
「ぶふっ!」
「いい加減それから離れような、嬢ちゃん」
「……ん」
仕方ない、とでも言うかのようにしぶしぶ頷いたタルトの背をぽんと叩き、一行は白い卵の形をした建物……廃墟となった劇場の中へと足を踏み入れるのだった。
グレン:本性を現しましたね
タルト:かるがも、怒る
親 方:嬢ちゃん、本当にそれ、やめろ
G M:すごくしまらないけれども、戦闘になります
ええと、待ってね
まもちきは5だな
ユ ズ:えっ、魔物じゃないのに
グレン:2D6+3+1 魔物知識 → 6[2,4]+3+1 → 10
タルト:2D6+4+1 魔物知識 → 8[4,4]+4+1 → 13
G M:あ、
勝手に三体にしちゃったけど、いいか
ユ ズ:よくないよ!
G M:ま、まもちきは抜けたから、データは分かるよ!弱点はなし!
先制値は9!
グレン:2D6+3+1 先制 → 8[2,6]+3+1 → 12
タルト:2D6+2+1 先制 → 3[2,1]+2+1 → 6
グレン:大丈夫、抜けました
<PCターン1>
グレン:2D6+3+2 行使判定 → 7[4,3]+3+2 → 12
グレン:2D6+3+2 フィールド・プロテクション → 6[1,5]+3+2 → 11
グレン:はい、いつもの
親 方:さんきゅ!
んじゃいくか!
ユ ズ:おっけー!
タルト:Mp保存したい…
様子見
<PCターン2>
親 方:1に攻撃
親 方:2D6+3+2 命中 → 6[5,1]+3+2 → 11
親 方:K25@11+3+2 威力 → 2D:[1,1]=2 → ** → 自動的失敗
親 方:うおおおおおおおおおお嘘だろ
ユ ズ:せっかく命中したってのに!
G M:(どさくさに紛れて一体減らしておこう)




