29 獅子の伝説
「さて、以上で説明を終わります。こちらはまた立ち入り禁止となりますので、展望台の方へとお戻りください」
そう締めくくり、神官は観光客らを展望台の方へと誘導する。ヒントを無事に見つけられてほっとしながら再び展望台へと戻ると、ユズとロランが慌てたようにして駆け寄ってきた。
「グレンさあああん! ごめんなさい、めっちゃ聞き入ってた!」
「ええ、そんな感じでしたね」
「わぁい、取り繕わなくて正解だった! 正直が一番だね!」
「口に出さなければ、最全解だったとは思いますけれどね」
「ひっ、グレンさんごめんなさいって! 反省はこの通りしてるから!」
「……ごめんなさい、実はボクも」
「……はあ」
頭を抱えるグレンに、ますます身を小さくするユズとロラン。親方が助け舟を出すかのようにして、ヒントを教えると、挽回するかのように二人は考えだした。
「獅子の狩場……そんな感じの場所、地図に会ったっけ?」
「ええと、ユズ姉さん地図借りてもいい?」
「はい、これね。それから、緑の宝箱、か。緑で四角い何か、を指しているのは、経験則から間違いなさそうよね?」
「そうだな、それも昔からあるような何か、なのか。新しい代わりに示された何か、なのかは場所特定できなければ、分からねぇけどなぁ」
地図を広げたロランと頭を突き合わせて一緒に見るタルト。やがて、一つの場所を指さした。
「……獅子の市場、あるよ」
「近いな。ええと、あそこか?」
丁度展望台にいることもあり、地図と照らし合わせながら、親方は北東の方角を指さした。テントがずらりと張られている平たい場所。何かが突き出ているのが分かる。
だが、狩場と市場を同意儀語としてみてもいいのだろうか、と一行は首を傾げた。
ふと、ユズがぱっと顔を輝かせる。
「あ、ねえねえ。鐘に刻まれているってことは、ここの神官さん知ってないかな?」
「……説明されていた方なら、もしかしたら把握しているかもしれませんね」
グレンの援護するような言葉に、アタシちょっと聞いてくる! とユズは駆け出して行った。
「すみませーん、ちょっと聞きたいんですけど」
「はい?」
「この近くの獅子の市場ってとこありますよね?」
「ええ、そちらの方角にありますよ」
「そこって獅子の狩場って、言われたりしてます?」
「獅子の狩場、ですか……?」
神官は少し悩むようにして首をひねっていたが、それから思い出したように語りだした。
「黄金獅子の伝説、と言うものがあります」
「黄金獅子の伝説?」
「ええ。カナリスの街が建設された頃、この辺りは広大な草原でした。そこに、一等の美しい黄金のたてがみを持つ獅子が棲んでいました。しかし、こんな近くに獅子がいては、街の人たちは安心できません。そこである時、獅子を退治することになりました。選ばれた勇士は七人。獅子は、五人の勇士を殺しましたが、ついに倒れます。そして、その獅子が倒された場所というのが、今の獅子の市場だったのです。生き残った二人の勇士は、その場所に石柱を建立し、獅子と死んでいった五人の勇士に敬意を表しました」
簡単ではありますが、このような伝説ですと締めくくった神官は、鐘楼で語り慣れているようで、すらすらと語っていた。
なんだか人間の都合で振り回されていて、獅子が可哀想と呟いたユズに、神官は苦笑をしながら続けた。
「ただし、一部では、倒された獅子はただの獅子ではなく、強力な力を持つ魔物だった。そして、石柱の下に封じられているに過ぎない、とする話も伝わっています」
「やだー、それって心躍るー!」
「えっ、ユズ姉さん心躍るっておかしくない?」
「冒険者だからね! おかしくないよ!」
倒せるかわからないけど、浪漫だよね、浪漫。と少しはしゃいでいるユズを微笑ましく見つめ、さりげなく話を切り上げようとしている神官の様子に、親方はすっと話に割り込んだ。
「ちなみに、緑の宝石箱なんて、わからねえよな」
「何かのなぞなぞですか? そういったものをお求めでしたら、市場ではなくモザイク通りの方がいいかと思いますが」
「ああ、そういう考え方もあるのか。なるほどなあ。参考になった、ありがとな」
「いえ、お役に立てましたら何よりです」
スマートに話を切り上げた親方は、ユズとロランを回収し、そっと様子を伺っていたタルトとグレンの二人と合流した。
「目的地は確定だな」
「ん。行こう、獅子の市場へ」
尚、ここ、20発言のみの内容でした。めっちゃ脚色したよ!




