19 水路移動B-5⇒B-4
横に大きな体格でありながらも器用に<水鳥>を操る親方。細い水路を戻り、旧水路地区を二分する大きな川へと再び舞い戻る。
グレンがそれとなく時刻を確認すると、九時四十分を示していた。気が付けば、<水晶の欠片亭>を出てから二時間が過ぎようとしていた。
「いやー、やっぱり何がヒントになるか分からないものだよね! なんでも見て確認するユズちゃんめっちゃファインプレーじゃない?」
「自分で言ってしまうと、有難みがだいぶ薄れますがね」
「だーって、グレンさんは絶対言ってくれないんだもん! 自分で言うしかないでしょー!」
騒がしいユズとは対照的に、青白い顔で俯いているタルト。眉間に深く皺が寄り、舟の縁を硬く握りしめた手が白くなっている。
親方の傍でその様子を見つめていたロランは、不思議そうに首を傾げた。そして、小声で親方に尋ねた。
「タルトお姉さんって、もしかして、水、苦手?」
「まあ、そうだな。苦手、と言うよりは、大嫌いと言った方が正しいのかもしれないがな」
「大嫌いって……」
「大したことじゃない。元から泳げない上に水が苦手なことに加えて、水中系の魔物に水に引きずり込まれた経験をすれば、嫌でもああなる」
「うわぁ……それは、なんというか……」
「だから、大嫌いなんだろうよ」
おそらくは、だがな。と締めくくった親方は、当時の様子を思い浮かべているのか、苦々しく微笑んだ。思わずロランが同情の目を向けてしまったことに気付く様子もなく、ただ真っすぐに遠くを見つめていた。
「でもさ、次々にヒントが出てくるなんて、本当に漫画とかの中であるような展開だよねー。オラ、ワクワクが止まらねぇぞ! なんちゃってー」
「……貴女の言葉、時折本気で分からないです」
「うーん、ネタが伝わらないこの感じ! でも、宝探し楽しくなってきたってことが伝わればいいや!」
「依頼ですからね、これ。お仕事ですからね、忘れないで下さいよ、そこのところ」
「大丈夫だって! 宝探しに付き物のお宝守番人? ラスボス? 的なのはこのユズちゃんにお任せあれーってね!」
楽観的なユズの言葉に、グレンは何度目かわからないため息をついた。
地上に早く下りないかな、とぼんやり考えていたタルトの耳に、ユズの宝探しと言う言葉がするりと入り込んでくる。依頼だから、と深く考え込まないようにしていたが、それでも考えるのが癖のようになっているタルトには、不思議に思えることが多いこの宝探し。
(ヒントは、何かを表している。大体が、古くからあるものを指している、気がする。でも、ヒント自体は、新しいのと古いのと混じって、ちょっとわかりづらい)
シムニスの依頼内容の護衛としての本分をあまり果たしてはいない気がする。今のところ、不審な人影は見当たらない。制限時間があって、ここまでおぜん立てされていて……。
(何のための、宝探しなんだろう?)
ぼんやりとした思考では、答えは出てこなかった。
「そろそろじゃないか?」
親方の一言で、ユズが大きく<水鳥>から身を乗り出す。慌ててグレンがその服を引っ張った。
「ユズ!」
「グレンさんありがとう信じてたよ! おかげで水の中までしっかりと見えたよ!」
「ユズ姉さん、隊長イルカの宝物、あった?」
「分かんない!」
元気いっぱいに答えるユズに、呆れたように頭を抱えるグレン。ロランは肩透かしを食らったようにして目を丸くしていた。
少し頭の中で情報を整理するかのようにしてユズが珍しく黙ると、親方はそっと<水鳥>をその場で留めた。
「んっと、あの辺りからそこの水路の入口辺りまでかな? そこまでイルカが並んでいるのは見えたよ。あと、イルカの頭の向きはこっち向きだった」
ユズが指さすのは川の北側にある水路の出入り口から、南側にある水路の出入り口。南側に至っては、今ほど自分たちが通ってきた辺りになる。
そっと親方とロランも水路を覗き込むと、イルカの頭が自分たちの方へ向かっているのが分かった。
「隊長イルカってのを、直接調べてみるしかねぇだろうなあ」
「親方さんもそう思う? じゃ、やっぱり行くしかないよね、グレンさん!」
「……いえ、まあ、いいですけど」
何故自分が、と言いかけたグレンだったが、舵取をしている親方と、青白い顔で遠くを見つめているタルトの様子が分かると、必然的に自分が行く他ないのだろうと言うのが嫌でも分かった。
乗り気のユズが、ロランにここで待っていてくれと言っているのが聞こえる。水の中と言う制限された空間で、グレンが【優しき水】の加護を得ているとはいえ、無力な子どもを守り切るのは難しい。
しぶしぶと言った様子だが、ユズとグレンが代行で探してくることを承諾したロラン。気が再び変わってしまわないうちに、と二人は水中へと静かに身を沈めた。
ごぽり、ごぽりと大きな泡が水上へと上がっていく。水中で揺れ動く己の髪が時折視界の邪魔になるが、それをまとめ括る。
さて、ユズの方は大丈夫か、と視線をやると、意外と苦にしていない様子ですいすいと共に潜水してくる。水に慣れているのだろうか、それならば好都合。彼女の息が続くうちに、さっさと調べてしまおうと、イルカの先頭となっている水中灯へと近寄って行った。
そんな時だった。
「っ!」
ユズが大きく目を見開く。緩慢な動作で腰に挿したレイピアを抜き出した。
くるりとユズの視線の方へと身体を向ける。鋭い牙を持つ魚の群れが二人へと襲い掛かってきていた。
GM:潜ってみるのはグレンとユズだね
グレンは自動成功になるけど、ユズは水泳判定を頼む
大丈夫だ、今度は7だぞ
ユズ:そういってプレッシャー掛けるのやめてー!
ユズ:2D6+2+3 冒険者:敏捷 → 10[5,5]+2+3 → 15
ユズ:っしゃー!よゆー!!!
GM:珍しいな
ユズ:一言余計ですー!
GM:じゃ、二人はすいすいと潜って水中灯を調べようとしよう
二人が水中灯に近付いたその瞬間、
鋭い牙を持つ魚の群れが襲い掛かってきます
ユズ:噓でしょ!?




