13 地下水路
地下水路の中は真っ暗で、感触でひざ下まで水に浸かっているのが分かる。緩やかな流れの水ではあるが、動きに支障があることが分かると、親方は顔をしかめてからしっかりと踏みしめるようにして進む。
「ううう、見えなくて怖い……」
「では、私と手をつなぎましょう? 転ばないように、しっかりと捕まって下さい」
「あ、ありがとうございます」
エルフであるグレンは【優しき加護】があるため、特に苦ではないようだが、時折ロランに手を貸している。ユズは言うまでもなく何回か水に足を取られ、転んでいた。彼女に至ってはお約束、である。
「ううー。グレンさんー、後ろのアタシにも、優しさぷりーず……」
「貴女は冒険者なのでしょう? しっかりなさって下さい。大丈夫」
「大丈夫じゃないから言ってるのに! か弱き乙女に向かって酷い! 足場悪くて転んでるんだよ! もう服びしゃびしゃなんだよ! 着替えたいんだよ! 見えなくて本当に怖いんだよ! 手すりとか欲しいんだよもう!」
グレンさんが虐める! と泣き声が背後から聞こえてくるのに、タルトは不快そうに眉をひそめた。
これでは肝心の他の生物の音が何も聞こえない。危険が近付いていたらどうするんだ、と大きくため息をついて親方の髪を引っ張った。
「あだっ、どうした嬢ちゃん」
「見えないの、不便。明かり付けて、いい?」
「いいぞ。坊ちゃんも、剣士の嬢ちゃんも必要だろうからな。俺が点けようか?」
「【フラッシュライト】じゃなくて、【ライト】の方が、きっと安心。私、やる」
なら任せた、と親方が軽く言うと、タルトは一つ頷いて杖を構えた。ゆっくりと呪文を唱える。
「真、第一階位の彩。光、輝き――光明」
【ライト】を唱えると、小さな光源が杖の先端に浮かび、ゆっくりと光源を大きくしていく。タルトを中心として前後十メートルは照らされた。ごうごうと流れる暗い水路が急に照らされて、目を細めたユズとロランだったが、明かりがあり視界が開けたことにより、ほっと肩の力が抜けたことが分かる。
「ああ、明るい。ありがたい。ありがとうタルトちゃん!!」
「お姉さん、ありがとう」
「……別に」
ぶっきらぼうに返事をするタルトは振り返らない。それでもニコニコと笑うユズの機嫌は、先ほどと打って変わって急上昇である。
後ろの雰囲気が変わったのを感じて、親方は苦笑しながらゆっくりと息をついた。
「んじゃ、足元気を付けながらゆっくりと進んでみるかね」
「ええ」
「はい!」
「了解!」
ばしゃばしゃと水をかき分け、それでも極力音を立てないように心掛けながら、ゆっくりと進む一行。
タルトが杖先に掲げている【ライト】の光源が辺りを照らしており、街中での細い水路と同じくらいの幅があることが分かる。水上程の高さまで苔が生えており、透明な水越しに緑色の水草が壁際に生えているのが分かった。空気穴なのか、それとも排水溝なのか。意図的に作られた五十センチ程の長方形の穴が等間隔に頭上に空いている。
親方に移動を任せているタルトは、ふと、何かの気配を感じて穴を見上げた。
じっと暗闇に続く穴を見つめる。
「親方、止まって」
「ちょ、急に引っ張るな。バランスってもんがな……」
強く髪を引っ張って、親方の足を無理やり止めさせる。先頭を進む親方の足が止まったことで、全体の歩みが止まる。最後尾のユズは戸惑いながらも踏ん張り、転倒を免れた。
「何か、いますね」
グレンも何かの存在に気が付いたのか、前方の暗闇を鋭く見つめ、ロランをさりげなく後ろに庇うようにして前へと出る。
各々がさり気なく武器を握り、何が出てきてもいいように構える。
やがて、気配の主はタルトが照らす明かりの方へと近付いてきた。ぼんやりとした明かりに照らされたのは……巨大なネズミだった。
思わずうわ、と顔をしかめたのはタルトとユズだけではない。グレンも同様だった。ただし、嫌だと思った意味合いがそれぞれ異なるが。タルトは純粋に水場での戦闘が嫌だと言う事。ユズは足場の悪い場所で、鼠相手に剣を振るわなければいけないこと。グレンは、その知識からであった。
「……フィルシ―ラット。疫病を流行らす厄介なネズミですね」
キルヒア神に祈りをささげながら呪文を唱え、グレンが【ペネトレイト】を使用すると、朧気だった知識が鮮明に思い出される。
フェイダン地方の廃墟や遺跡などに出没する、体長四十センチ前後の鼠。不摂生な場所で生息するため、人族からは嫌われている。それから……。
「強い繁殖力があり、一匹見かけたなら、同じ場所には多数生息していると考えられます」
「一匹いたらたくさんいる……。あれか、Gだな」
「ぎゃー! 言わないでー!」
「親方、めっ!」
「おっと、悪いな」
姿を現したのは、最初の一匹だけではなかった。気が付けば四匹にまで増えており、行く手を完全に阻む形で、それらはしきりにヒクヒクと鼻を動かしている。赤い瞳がせわしなく動いているのを見て、ひくりとユズの頬は強張った。
「嫌だなー、アレ斬らないといけないの……」
「……確か、すばしっこい。それから、牙に注意」
前衛で動き回る親方の肩から、手を伸ばしてグレンの背中にしがみつくタルトはぽつりと零した。多少グレンがよろけたものの、タルトはそれでも己が濡れたくないからか、しっかりとしがみついている。思わずロランがグレンに手を差し出してしまったくらいには、不安定な立ち方である。
「神官のお兄さん、大丈夫?」
「まあ、ただ立つだけならば、大丈夫です。あまり動かないで下さいね、タルトさん」
「ん」
手を回さなくてもしっかりとしがみついているタルトに苦笑しながら、グレンは助言の言葉の補足を続けた。
「牙の何が脅威になるか、と言うのは、疫病に掛かるかもしれないからです。その要素を、アレらは含んでいるのです。どうか噛まれないように、重々お気を付けて」
「オッケー! 任せて!」
「ただ、動きにはパターンがあります、見極めれば素早さなど苦にもならないでしょう」
「うっし。じゃ行くか、剣士の嬢ちゃん」
「応ともさー!」
バシャバシャと水しぶきを盛大に上げながら駆け出す親方とユズ。大きな人が襲い掛かってくることに気付いたフィルシ―ラットたちは、水を跳ねるようにしてすいすいと動き出す。
グレンが慣れた手つきで聖印をきって、二人が離れきる前に呪文を唱えて祈りをささげた。
「【フィールド・プロテクション】」
淡い光が五人に降り注ぎ、キルヒア神の祝福が掛かる。何かの膜に守られるような感覚。
「操、第一階位の付。威力、強靭――強刃」
タルトの呪文を唱える声が背後から聞こえると同時に、力があふれてくるのが分かる。
それを確認するや否や、親方の腰に括り付けられたマギスフィアが変形した。きゅいん、と音を立ててスコープのように目元に当てられたソレ。目を細めてレンズ越しにフィルシ―ラットに狙いを定め、片手でヘビーランスを振りかざした。
「っらあ!」
ぐしゃり、と一匹のフィルシ―ラットはヘビーランスに押し潰された。ふん、とヘビーランスを持ち上げようとする親方に、二匹のフィルシ―ラットが飛びかかるも、左手で掴んでいるカイトシールドを器用に操って軽くいなす。
ユズも果敢にフィルシ―ラットに挑むも、鼠、と言う嫌悪感からか上手く当てることができないでいる。最も、疫病に掛かるのも嫌なのか、ラウンドシールドを文字通り盾として構えて必死に避けているので、力の均衡は保たれたままだが。
ユズの腰の引け具合を後方から見ていたタルトは、仕方ないとでも言うかのように小さくため息をついて、グレンの肩越しに杖を構えた。
「操、第一階位の攻。閃光、雷雲――雷光」
パチ、と杖先で小さく閃光が弾けた。次の瞬間、パァン、と甲高い音を立ててフィルシ―ラットたちの間で弾けた。
ヂュウ……と、毛皮を焦がしたフィルシ―ラットの目がタルトに向かうも、その視線を遮るかのようにして親方がヘビーランスを突き立てた。水しぶきをあげて水面を走らせる。
「行かせねぇよ?」
半月切り。半円を描くようにして、刃先を振り上げる。タルトの【スパーク】によって動きが鈍っていたところを、一気に叩き込まれる。
隣で一息にレイピアを突き刺したユズが、フィルシ―ラットの息を止めて素早く引いたのが分かる。
「親方さん、ラストだ」
「気を抜くな!」
「うひぃっ!?」
最後の一匹となったフィルシ―ラットだったが、それでも攻撃する姿勢を崩さずユズへと飛びかかって来た。変な声をあげながらもひらりと躱し、振り向きざまにレイピアを突き出す。
ユズのレイピアに串刺しとなって、痙攣していたフィルシ―ラットは、やがて動かなくなった。もう、大丈夫です、とグレンが後ろから声を掛けると、緊迫した空気がやっと解けていったのだった。
<PCターン2>
グレン:がんばれ、がんばれ、ですね
ロラン:「がんばれー!」
親方:ん。じゃ、俺から行くか
1にタゲサ付きで攻撃
親方:2D6+3+2+1-2 命中(ターゲットサイト) → 4[3,1]+3+2+1-2 → 8
GM:うん?弱点分入れた?
親方:入れて同値でギリ命中か!あぶねー
親方:K25@11+3+2 威力 → 2D:[4,3]=7 → 6+5 → 11
GM:防護点0なので1は落ちたよ
タルト:さすが親方!
グレン:すごいですねえ
親方:あたれば、これいけれんじゃねぇか
ユズ:よし、私も続く!親方程力はないけど、いけると信じて!普通に攻撃するよ!
ユズ:2D6+2+3-1 命中 → 4[2,2]+2+3-1 → 8
GM:ごめん、回避9だから外れた…
ユズ:うそおおおおおお!!
タルト:あ、うん
タルト:私次最初でダークミストするね
<エネミーターン2>
GM:では、こちらの番ですね! ひゃはー! 疫病行っちまうぜぇ!
タルト:GMが世紀末…
GM:3d6 → 8[3,4,1] → 8
GM:奇数、偶数、奇数なので、どん、ゆず、どんだな
GM:回避どうぞ、命中9です
ドン:2D6+1+2 回避 → 8[5,3]+1+2 → 11
ユズ:2D6+2+3 回避 → 3[2,1]+2+3 → 8
ドン:2D6+1+2 回避 → 8[2,6]+1+2 → 11
グレン:ユズ…
ユズ:出目が…出目が悪いの…!
GM:2d6-1 → 5[1,4]-1 → 4
ユズ:防護点でノーダメ!!
GM:くそっ!疫病行かなかった!!
<PCターン3>
グレン:私はなおも応援ですね
がんばれがんばれー
タルト:私も、MP不安だから応援する
ユズ:えっ、ダークミストはっ!?
タルト:魔晶石、くれる?
ユズ:ええええええ
親方:出目さえ何とかなりゃ大丈夫だってw
面白かったのこの辺りw
呪文を打ち込むの(WT参照)がとても楽しかったですw




