ピアノとフォルテの日々 お出迎えはできれば静かにお願いします
ゴォォォオオオオオオオオオオ・・・・・・!!!
青い空の真ん中、お隣に雲が見える場所。
翼から力を完全に抜いた今現在青い鱗の竜はお腹を空に向け、背中から、まさに上空数千メートルからの自由落下をしていました。
隻眼片腕片脚の少女は長いセピアの髪を風に靡かせながら、ドラゴンの首元に懸命に抱き着いています。
『うはぁあああああ!!きんもちぃー!!!!サイッコーだな上空から落下すんのはよぉ!!』
「フォルテー!!は、吐きそう!で、でも楽しいから加速してー!!」
『おっ、通だねぇ加速自由落下とか、お兄さんマッハ500でやっちゃっていい?』
「いっけ・・・・・・フォルテ!!」
ピアノは突然落下中のフォルテの首を左手が無いので右手一本でグリッ、ゴキっっと真下に捻りました。
『がっ、ピ、ピアノ!!?何しやがるっ・・・・っておいおい?』
そしてフォルテも瞬時に理解します。
そこには下方に映る街中の景色を完全に隠すレベルの弾幕、この場合は近代兵器のミサイルや砲弾、爆弾が山のようにフォルテたちに接近してきていました。
『・・・・これはアレか?俺様のブレスで街ごと焼けと?』
「ダメ、アーカムが無くなる・・・・おかしいな、ちゃんと街民証は持ってるのに・・・?」
『超斥力バリヤシールドだっけ?あれ、お前さんのそのバッジがあるから通過できたんだよな?』
「うん・・・・誰かが私が街に来た情報封鎖したのかも?」
『誰かって?』
「さぁ?」
『そか、んじゃ、全弾回避だな、さぁシューティングだぜ!!』
「弾幕は火力だぜ!!」
『それ今度俺がレーザー系ブレス吐くときに言ってくれ、ゴンブトレーザーにしちゃる』
青い竜は落下姿勢から体を下にまっすぐ伸ばし、向かってくる弾幕の壁に向かっていきます。
セピアの少女も竜の頭の角を右腕でしっかり掴むと、腰に刺した長い銃身に向かって唱えました。
「我、ピアノ・リトルフーガが願う、フォルテの力を借り、感じる時を遅らせよ、≪体感遅行≫」
瞬間、フォルテとピアノの世界が黒と白のモノクロになりました。
そして迫りくる弾幕の壁がとてもゆっくりと接近するようになりました。
『あっちに穴があるな』
「ゴー」
『あいよ』
ピアノとフォルテはそのまま遅くなった自分たちの身体をその弾幕の壁の穴に向けて方向転換します。
そのままゆるゆると穴をくぐると、弾は彼らをゆっくり過ぎ去ってしまいました。
そして下を見ると。
『ゲッ、またかよ、うわー、あと何層かあるぜ、こりゃー』
「乱射してたら、嫌だね」
『まぁ、ちょろいけどな?』
そのまま二人は体感速度をゆっくりにしながら、するする、と弾幕を傷一つ負うことなく、幾つもの弾幕の壁をすり抜け回避していきます。
『・・・・・これで56か・・・・乱射してるわこりゃ・・・』
「困ったね」
『お前乗せてるし、頑張ってみるわ、普通なら硬化形態でまっすぐ行くけどな』
「うん、がんば」
『へーい』
一方地上では。
霧と、スモッグの中、数百階建ての近代的なビル群が立ち並ぶ大通りの街中で、軍用ロボットと軍人さんが多くの軍用車や戦車に装備された対空火器がこれでもかと空に火を吹きまくっています。
その中で白い軍服を着た太っちょな年配の男性と、
グレーのスーツにダサいネクタイをつけた背の高くがっしりとした体格をしたオールバックで眼鏡な三十代男性が会話をしていました。
太っちょな男性は軍の少佐で、眼鏡オールバックの男性は公式警察の警視正でした。
「はっはー!!これではドラゴンといえど、一瞬でハチの巣で炭で塵になってしまいかねんなぁ!!」
「・・・・・・・・」
「どうしたねモース君?我が軍の近代兵器の威力を見て危機感でも覚えたかな?」
「・・・・・・・・」
「安心したまえ、街民の避難は完璧、公式警察には対艦電磁砲も、荷電粒子砲も向けんよ!!・・・・薄汚い民間警察の奴らなら犯罪者と間違えて撃ちかねんがね、ぐふふ」
「・・・・・・・・」
「・・・・あの、そろそろ何か喋らぬか?さっきからなんで空ばかり見とるんじゃ、どうせミンチにもならんよ炭化して死体があと数秒後に・・・・」
「避けてるな」
「ハイ?・・・・・な、なんじゃとぉおおおおおお!!?」
それは信じられない様子でした、物量押しで規則性のまるでない弾幕の雨を空にいるドラゴンは優雅に回避しながら地上に向けて、華麗に接近してきているのです。
太っちょな少佐は口をあんぐり開けて、軍服が内側から濡れだすくらい変な液体を体中から発散し、
モースと呼ばれた男性は眼鏡をクイッ、っと指であげ、ゆっくりと立ち上がるとコンコンッ、っと革靴の先端を地面に軽く打ち付けました。
そこに砲撃を行っていた軍人さんが一人やってくると、一礼と敬礼して少佐に言います。
「しょ、少佐!!あ、あと三分後ドラゴンが地上数百メートルまで接近します!!」
「ぶぁっかもん!!?撃て、撃つんじゃあ!!」
「あ、あたりません!!」
「き、貴様が飛んでって動きを封じよ!!」
「そ、そんな、無理です!!」
「なっ!!?め、命令違反じゃ、命令違反じゃからそなたの責任よ、わしは知らんぞ!!」
見かねてモースが口を挟みます。
「・・・・俺がいく、あんたらは」
そこにさらに口を挟まれました。
彼らの背後からその女性は現れました。
「いいえ、私が行きます」
「なっ!?き、貴様民間警察の!!」
「・・・・シャーリーか」
「ご無沙汰ね、少佐、モース警視正、うちの下っ端が攻撃するなって、伝令出してたでしょ?」
「なんで貴様らの命令なんぞ聞かにゃならんのだ、ドブネズミどもが!!」
「・・・・モース、あんたは?さすがにこの街の防壁を警報無しで突破した時点であれが竜王級だってわかるでしょ?」
「わ、わしを無視するな!!ゴキブリめ!!」
「軍部がどれだけやれるか見ておきたかっただけだ、ただの小手調べ、当て馬だ」
「ぬぁ!!?」
「そう、じゃあ、すぐにやめて、ビルのオーナーやら社長様がたから素敵なラブコールが携帯に鳴り響いてマナーモードにしてもバイブがうざいのよ」
「・・・・それはバイブ機能を切ればいいのでは?」
「そ、そーだそーだ!!」
「なんで私があんたらの為に設定変えなきゃいけないのよ、めんどくさい」
そうこう言ってるうちに、ドラゴンはこの街の高層ビルのあたりを通過しました
モースとシャーリーの視線が一瞬で鋭くなります。
シャーリーは黒い軍服の両袖を捲り、頭にかぶっていた黒い軍帽を少し目深に被ります。
「じゃ、やるから邪魔しないでね?」
「・・・・今日はどっちだ?」
「・・・・魔導審問官のシャーリーよ」
「そうか、それなら譲ろう、行くぞ、デブ」
「え、ちょ?も、モース君!!?」
そういうとモースは付近に待機していた公式警察の職員を集めるとさっさと撤収作業に入り、それにならって少佐もグヌヌ、とか言いながら軍の撤収命令に入りました。
「・・・・さて、やるか」
コキッ、っとシャーリーは指を鳴らします。
「ナノマシン≪ガグンラーズ≫起動、高速機構変換」
次の瞬間シャーリーの両腕の皮の内側から鋼鉄のコードが浮き上がり、それに引き上げられるように鋼鉄のパーツが内側から表出し、逆に生身の部分はどんどん内側に飲み込まれて行ってしまいます。
ほぼ一秒後、シャーリーの両腕は完全な機械の腕になっていました。
「よし、竜王相手じゃ全弾使い切るくらいでやらないとね」
そのまま鞄の中から長いベルトリンクを取り出すと、それを両腕のレシーバーに繋ぎます。
「・・・・対艦個人迎撃術式≪ワルキューレ・アスカ≫起動!!」
次の瞬間、彼女はその場から一瞬で消えました。
ちなみに足元には小さなクレーターができました。
ところかわってまたもお空の上。
最後の弾幕の壁を悠々と超え、何とはなしに二人は下を見ました。
『おーし、もう体感遅行切っていーぞ?・・・・あれ、なんもないな?この街って地面から重火器だしたりすんの?』
「切った、あと無いこともないけど、普通は装甲車とか戦車で撃つんじゃない?」
『・・・・まぁいっか、あー、そろそろ着陸でーす、ご乗車のお客様は忘れ物がございませんようすみやかに・・・』
「フォルテ?」
『・・・しっかり捕まってろピアノ!!』
・・・・・ドンッ!!!
フォルテの胴体が右方向に思いっきりくの字になりながら吹っ飛びます、吹っ飛んだ地点の空間には周囲に巨大な衝撃波の円形の輪っかと黒い軍服に茶髪、機械の両腕のシャーリーが思いっきり殴り飛ばした姿勢で存在していました。
フォルテは近くのビルを三つほど貫通して次のビルの壁から中に叩き込まれました。
『っう~!!やるねぇ、俺様の放出してる魔力を超えて物理をくれるたぁ、軽く見積もってもシン祖吸血鬼か巨神人くらいのもんだがなぁ』
「あれって・・・」
『ちょいと待ってな、ピアノ・・・・ちょっとあのアマ灰燼にしてくっから』
「ま、待ってフォルテ!!?」
『転星・鉄鋼将騎竜皇!!』
バキバキと青い鱗が一瞬で変形し、頭部の鼻の上に刃のような角が、体表は鋼鉄の板を何重にも重ね合わせたように変化し、翼は羽毛から堅牢な大楯をつなぎ合わせたようになり、さらに、大きく発達した盾か、槌のような前腕が生えてきました、
そして尾はもはや巨大な突撃槍のような形状をしています。
その姿はまるで中世の騎士のようです。
その姿にピアノは震えました、なかなかにかっこよかったからです。
「≪鉄鋼無頼突撃!!≫」
その後、すぐに残念なモノを見る顔になりました。
技のネーミングがちょっと酷かったからです。
シャーリーはスタッ、っと近くのビルの屋上に着地しました。
そして左腕からガシャ、と煙を上げながら排出される薬莢を見つめないで言います。
「手ごたえはある・・・・さすがドラゴン、完全じゃないとはいえアスカの術式部分は全てキャンセルされたか・・・」
そしてドラゴンをぶっ飛ばした方向を瞬きせず見つめます。
「・・・来る!!」
ドゴンッ!!!!!
今まで何もいなかった方向からぶっ飛ばされた時と同じように、幾つものビルに大穴を穿ちながらフォルテはその拳をシャーリーに叩き込み、シャーリーはそれを迎え撃つように大きく振りかぶった右拳をフォルテの拳にぶつけます。
『っお!!?俺の一撃を防ぎやがるたぁ、やるじゃねーか!!』
「・・・くっ、竜言語はあいにく知らないけど、喜んでもらえて光栄ね!!」
シャーリーはそのまま左腕でフォルテの拳をカチあげて、さらに右手からさらに薬莢を排出しながらフォルテの腹部に拳を叩き込みます。
しかし
「ちっ・・さっきと違う竜?・・変形能力・・・・・まさか!!?」
『効かないね・・・オラァ!!≪鉄鋼無頼尾槍!!≫』
フォルテは蠍のように尾を頭より高く掲げると、それをシャーリーに向かって突き刺そうと伸ばします。
シャーリーはバックステップの容量で後方に回避すると、
ズドドッドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!
その尾の槍の一撃で、豪快な破壊音を立てながら今までシャーリーがいた高層ビルは倒壊しました。
シャーリーは隣のビルの屋上に飛び移った後に悲鳴を上げました。
『ちっ、腕は機械化してやがるが、全身に特上の強化と守護もかけてやがるな』
「ちょ、ど、どーすんのよ、そのビルの修繕費・・・・あ、少佐とモースがやったことにしよう」
そしてシャーリーは地面の瓦礫の上のフォルテに別のビルの屋上から顔を向けて、真面目な声音で語りかけます。
「あんた、百色の竜ね?イエスなら首肯、ノーならイヤイヤ首振りなさい」
フォルテはこんなイカツイドラゴンのイヤイヤ見てキャーかわいー、とか言う類の人間かと疑問に思いつつとりあえず首肯します。
「でしょうね、あなた以外にはおとぎ話や神話を見て回っても、変身はできても、変形が可能なドラゴンはいないわ・・・・どうやって破神姫の封印を破ったかは知らないけど、交渉しましょう、百色の竜よ、この街から去れ、お前の目的はわからんが、少なくとも今去れば、魔導審問官シャーリーの名のもと此度の罪、不問にし、こちらから追撃はしない」
『・・・・あ?不問?追撃?馬鹿か?誰に口きいてやがるクソアマ』
フォルテはそんなことを言いますが、全く伝わりません。
竜言語はとても難しいのです。
ですが
「そのキレ顔、ドラゴンでも眉間に皺ができるのね・・・・おおかた、大昔の復讐か・・・・あんたには悪いけど、こっちも仕事でね、処理します」
『・・・・・しょり、処理ィ!!?』
ブチっ、っとフォルテの頭部付近からヒモの切れた音がしました。
『ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!コロス!!!!!』
「・・・ナノマシン≪ガグンラーズ≫・励起開始、対魔王個人迎撃術式≪ワルキューレ・アスカ≫起動!!!」
シャーリーの機械の両腕が凄まじい勢いで周囲の熱を奪い取り、周囲に魔法の方陣を浮き上がらせ、シャーリーの両目付近の神経が浮かび上がります。
フォルテは四肢と尾を地面に打ち込み、アンカーにして、膨大な、いえ、周囲の景色が歪むほどの魔力を口内で回転させ、ブレス発射の準備を完了させます。
一触即発、二人が完全に準備を終えたのは同時、次の瞬間確実にどっちかが滅びる、そんな予感を抱かせるに十分な殺気が周囲に満たされます。
そして、
『鉄鋼・・・』
「崩魔・・・」
フォルテがブレスを吐き出し、シャーリーがビルから飛び降り機械の腕から拳が撃ち出されるその寸前。
カツン、カツン、カツン、とビルの間から一本足の少女が杖を右足の代わりに一生懸命進んできたようです。
「はぁ、はぁ・・・・と、止まってフォルテ、お姉ちゃん!!」
肩で息をしながら大きな声で言いました。
もう少し詳しく言うと、「はぁ、はぁ」あたりで二人が準備をして、「止まって」あたりはシャーリーが飛び降りた瞬間からでした。
『「へっ!!?ピアノ!!?」』
二人は仰天しながらも、一瞬で技を解除しましたが、結果、シャーリーの良い拳がフォルテの右ほおにクリティカルヒット、フォルテは途中までひっこめたブレスを彼から見て右方向にちょこっと放出してしましました。
そのちょこっとで45の巨大な高層ビルが足元を消滅させてダルマ落とし風に倒壊しましたが。
******
そして今、フォルテはパタパタと灰色のチビ竜の姿でおつかいから帰還しようとしています。
今彼が飛んでいる場所はスチームとサイバーのちょうど中間程度の文明圏、商業施設が立ち並び、人込みがやけに多いこの辺りは、西暦2000年くらいの日本の秋葉原をフォルテに想起させていました。
『・・・・はぁ、そんで街の損壊費を償うため半ば無理やりピアノが魔導審問官の義務を課せられましたって・・・・やり切れねぇなぁ、なにやらかしてんだよオレぁ・・・いきなり恩人に迷惑かけてんじゃねーの』
はぁ、っとため息を一つしながら、そこらのベンチに腰を下ろす。
ガサガサと袋から、シェリーに貰ったパンプキンパイを一つ取り出すとモグモグと食べながら近くの大型の商業施設の外壁に付けられた、電子画面に目を向けた。
『あなたに新しい絆届けます~』
画面の中にはどうやらアイドルの・・・・いや、この街の女神さまの二日前に行われたゲリラライブのニュースを今頃やってるようだ。
『たしか、女神キズナ・エニシだったか?・・・・・たしか俺の封印前からアイドルやってたよな』
そうすると二千年前から、あ、いや、たしか西暦3000年くらいにはライブしてるの見たことあるな。
まさか7000年間やってんのか、あの女神・・・?
ファンは飽きるってか、人間感覚じゃ古典舞踊みたいなもんなんじゃ・・・・。
『今回行われたライブにつきましては、教団側でも現在ライブ映像を高値で購入すると公式発表があり・・・・・』
『モグモグ、教団ね、はい疑問解凍、なぞは全て溶けた~』
などと言ってると、街中を歩き回っていた人々がザワザワと騒ぎ始めます。
『モグモグ・・・なんだ?』
フォルテはそちらに目を向けようとして眼をスライドさせていると、その時、竜の眼が二つの異物と眼があいました。
まず一つは路地裏の奥深くをズルズルと苦し気に通り過ぎていく、≪眼球全体が牙のある紅い女≫と横目で。
もう一つは街中の人々が騒ぎの中心に向かって進んでいく中、全く別方向に進む≪玉乗りしながらジャグリングするピエロ≫、こちらはピエロが背中を後ろにそらした時に。
フォルテの警報音が一瞬で臨界点を超えました。
ですが、
「こんにちは、百色の竜さん?あ、今はフォルテ君だっけ?」
顔を騒ぎの方向に向け切った瞬間、女の顔面がすぐ近くにありました。
騒ぎの中心の方では
「女神さま!!サインください!!」「きゃー握手して!!」「おでの頭ナデナデしてほしいんだな」
などと聞こえていました。
フォルテはもう一度先ほどの方向を見回しますが、どちらもすでにいませんでした。
『ありゃあ・・・いったい・・・・』
「ああ、あの子たち?・・・・そうね、≪とっても苦しんでる子≫と≪すごく悲しい子≫ってとこかしらね、女神困っちゃう、略してメガコマ!!いいわね、流行らせよう!!」
そして、フォルテが顔を戻すと、そこにはストロベリーブロンドの上にアホ毛が飛び出た、若干巻き毛気味の長い髪に、とてもモチモチした胸を肩だしの縦線の入った長いセーターをスカート代わりホットパンツを履いたユルイ感じの、ちょうどさっきまで画面に出てた超絶美女がいました。
ぶっちゃけ女神キズナがいました。
だけどフォルテは驚いてあげません、大昔に会話したとき、驚いたら調子に乗ってフォルテが大気圏まで殴り飛ばすほどに弄り倒されたからです。
キズナはフォルテの横に勝手に座りました。
『はーやーらーなーい、絶対流行んねーよ、てかキズナ、あんたの方から話しかけてくるたぁな』
「むー、もっと驚きなさいよー、女神さまじーきーじーきーにあっちに人集めて、分裂して来てあげてるのにー」
『おう、ごくろーさん、ほれ、パンプキンパイ一切れやるよ』
「ありがとー、もぐもぐ、うん、これ魔導工学義肢屋のシェリーちゃんね、わかるわ!!」
『はい、千里眼、未来視過去視乙、ネタわれてんよー』
「はいごめんなさーいと、ようこそこの街へー、のハグ」
ギュムっとフォルテは大きなお山二つにサンドイッチされてしまいました。
バタバタっと暴れますが、どうにも離す気はないようです。
ちなみにフォルテは人型の女性を性的な対象には見ないそうです。
『あぷ、ちょ、苦し、は、離せー』
「むふふ、まさか、あの百色の竜ちゃんがピアノちゃんの使い魔なんておねーさん感動してーるーの、むふふ」
『あーこのアマぁ、いい加減にしねーと!!』
「むふふ、女神様は知ってるのです、フォルテ君はピアノちゃんとの約束で、街中でむやみに巨大化できないものねー?」
『むやみじゃねーだろ、窒息するわ!!オラァ!!』
「あーん、もー、モグモグ」
ぜはー、はぁ、はぁ、とフォルテは必死に外気を肺一杯に吸います、わりとマジで窒息しかけていました。
『・・それで、なんの用だ?』
「んー?別にーオフだからご挨拶と、感謝とお願い、今済んだのはご挨拶ね?」
『感謝されるいわれなんてないが・・・?』
「ふふっ、あーるーの、ピアノちゃんと契約してくれてありがとうね、片目と片腕と片脚が無いけど、いっぱい今まで苦しんで来たけど、物覚えもあんまりよくないけど、若干電波だけど、あなたのご主人様に選んだのは大当たりよ?」
『そっかー電波なのかあいつー、わー昔あった馬鹿女神のせーでわかんなかったわー、あと他に選択肢あったわけ?並行世界や世界線見れる全能女神キズナさま、おせーて』
「誰かしら、そのはた迷惑な女神、今度会ったら説教してあげるわ、どっちの方角、私の後ろね!!よし特定できたわ!!・・・・それと選択肢?えーとここに何人か人間がくるじゃろ?さぁ好きなのを選んでくれぃ
A、永久魔女見習いピアノちゃん
8、モンスターを性別無視で女の子に換えちゃう転生者モモタロくん
C、話題の体験型ゲームをやってたらホントにゲーム世界にきちゃったプレイヤーのキリヒトくん
さぁ、どれ!?」
『ピアノ一択じゃねーか!!?てかBはなんとなくわかるが、Cとはどんな契約結ぶ未来だったわけ!!?』
「封印されてるのをいいことにあなたをサンドバックにして討伐して、あなたの身体から出てきた魔剣とあなたの素材で作った魔剣の二刀流のチートプレイヤーになる未来よ」
『ぜってーヤダ、数日で憑きコロス自身あるわ』
「けど、最終的にであったヒロインと一緒にあなたの意思は消されてただの武器に成り下がるのでしたー」
『うわー、いやだー・・・・・そいでお願いは?あ、ピアノさんは今生大事にしますね?』
「はい、約束よー?あ、お願いの方も先に約束してね?」
『はー・・・・で?』
「うん、さっきねー、いたでしょ?紅目ちゃんとピエロちゃん、あの二人ともそのうち、仲良くしてね?」
『ヤダ』
「きゃー、フォルテくんカッコイー!!オスに二言は無いわよね、ファイトー」
『オー!!・・・あ、もういいです、何言っても無駄な感じがひしひしと伝わったわ・・・・・あっ、昔からだ・・・』
「昔からでーすぅ、まぁ、そのうちね、女神キズナとのお願い、絆と縁を司る女神のお願い・・・・つまりメガネガよ!!」
『おーい、途中まで真剣にできてたじゃん!!?なんで最後にそんなこと言っちゃうの!!?最後眼鏡のネガティブみたいなダメダメな・・・・あー、もー、うん、わーった』
「うん、じゃあピアノちゃんとあと二人、お願いね?」
そういうとトコトコと女神は歩き去っていきました。
ふと、キズナが座ってる場所を見ると、置手紙と紙袋に大量に入った焼き芋が入っていました。
〝アーカムは年がら年中秋万歳な季節です、ピアノちゃんはパンプキンパイも好きですが、焼き芋も好きです、熱々ですのではやく帰って食べさせてあげてください。 PS中に入ってるチケットは次のライブチケットです、見に来てね(ハート)〟
『・・・・・はぁ、お前も好きなんだろうが、焼き芋・・・・』
フォルテは重たいおつかいとお土産を抱えてパタパタと家路につくのでした。