古傷
掲載日:2015/09/12
ふと触れられた古傷が痛む。
触ったほうは、ほんと何気なく触っただけ。別に悪気があるわけではない。好奇心から触れてみただけ。
だけど触られた方は、いっそ死んだほうがマシだ、と思えるほどに傷口が痛んだ。
古傷には痛い思い出が結びついている。目も向けたくないほどの忘れたい記憶。
それは誰にも話せない。ひとりで墓まで持っていく。
普段は、ポケットに入れたままの小銭のように、その古傷の存在を忘れている。
だけど、ときたま思いだす。
それは決まって日が沈む黄昏時。
暗い海の底に沈んでいくような絶望感。
槍で胸を突き刺されるかのような後悔。
骨が無くなったかのように無気力になる身体。
怨むべきは人ではなく、運命でもない。
自分自身の心。
膿を吐き出すように呪詛を吐く。
それでスッキリするかと言えばNO。
この十字架は一生背負わなければならない。
この身に刺さった楔が取れるような奇跡でも起こらない限り。
私は背負い続ける。
いつかゴルゴダの丘に着く日まで。




