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Shining Heart  作者: 201Z
62/71

14ー1


〜時空の神殿〜


ヴァルキリアは石版の前で周囲に魔法陣を展開しながら、時空の神殿の機能を稼動させていく。


「今更、何をしに来た?」


ヴァルキリアは気配を感じてそう言うとフェイクが現れた。


「決まっている、終わらせる為にきたんですよ」


フェイクは弱々しい声で言った。


「随分と弱っているな、やはり真の対であるあの少年の紛い物か。では、せめてもの情けとして終わらせてやろうか」


そして、ヴァルキリアは漆黒の剣の柄に手を掛けるとその場にいるもう一人の人物に声を掛ける。


「そこにいるお前は例によって観ているだけか運命の傍観者」


「えぇ僕はただ興味があるだけだ、二人の逝く末に」


グルベリは離れたところから眺めていた。


「ならば見ていろ」


ヴァルキリアは魔法陣を継続させたまま、縦方向に何重にも捻れた漆黒の剣を抜いた。


「愚かな半身の片割れが消える様を」


ヴァルキリアは剣を一振りすると耳を劈くような風が放たれ、フェイクは何かを受け止めたが飛ばされた。


「はぁ…はぁ…」


フェイクはよろめきながら立ち上がろうとしたが地面に手をつき、血をはいた。


「一思いに逝かせてやろう」


ヴァルキリアはフェイクに近付いて言い放った。


「この時を待っていた…」


フェイクはヴァルキリアの胸倉を掴むと二人が軽く入るくらいの魔法陣が地面に現れた。


「消えろ」


ヴァルキリアの身体がフェイクの手から吸い込まれ消えた。


「これで…」


「終わりだな」


フェイクの言葉に次いでグルベリが呟くと身体中に亀裂が走った。


「うぅ…うわぁぁぁ…」


フェイクの身体の外層が少しずつ剥がれて宙に浮かんでいく。


「…やれ!」


フェイクは崩壊する身体の痛みに耐えながら叫ぶ。


すると目の前の空間の大気が揺らぎ、フェルセルクが現れた。


現れたフェルセルクの手には刃物があり、一思いに崩壊するフェイクの身体を貫く。


「馬鹿な…」


フェイクの中からヴァルキリアの声が漏れ聞こえた。


「馬鹿なことを」


フェイクの身体と刺さる刃が一気に舞い上がり、散々となって消える。


「私を取り込もうなど」


ヴァルキリアは目の前のフェルセルクを斬り伏せる。


「どうして…」


フェルセルクは地に伏して言う。


「最期の力を使い、諸共葬ろうとしたようだが僅かな力を振り絞ろうともたが知れている…もう聞こえていないか」


フェルセルクの意識はもなくなっていた。


ヴァルキリアは時空の神殿の機能稼動作業継続中の魔法陣に入り、石板の前に立つとまた操作していく。


「残すは一つ」


グルベリはヴァルキリアに聞こえない程の声で呟く。




時空の神殿〜幻影の園〜


サウザンド・エンプレスは花畑の中で傾いた状態で不時着していた。


グラハムは動かなくなった舵を支えに傾いている床で立ちながら言う。


「何だ此処は、これが建物の中か?」


クレイルは甲板にあるロープを使い、花畑の中に逸早く降りるとフェイ達もそれに続いて降りた。


「この花は過去の幻影ですね」


クレイルは花に触れた。


「過去?」


「ここは時空の神殿、名前の通りあらゆる時空が混在する場所ですから」


フェイ達はその空間を色々調べていると小さな泉を見つけた。


泉の中には水晶の三方向の軸で構成された十字架が沈んでいた。


「これが何だかわかりますか?」


フェイはクレイルに聞いた。


「私も此処へ入るのは初めてですから」


リーシュは二人が話しているうちに十字架を泉の中から出すと泉の脇に石柱がせり上がって来た。


「なんか出て来たっすね」


「リーシュ!罠だったらどうするんだよ」


「フェイにどう意見です、少し軽率過ぎますね」


「大丈夫っすよ」


石柱には十字の窪みがあり、リーシュはその窪みに水晶を嵌めた。すると花畑の花が枯れ始め、水晶に白い光が徐々に燈っていく。


「なんかやばかったみたいっすね」


「嫌な気配が満ちていきますね」


水晶の光が強くなり、フェイ達の影が地面に映し出された。


フェイはエレメンタルブレードを抜いた。


影が地面から浮き上がり、フェイ達と同じ姿をした黒い物体となった。


フェイ以外の者も身構える。


「シャドウグロウですね」


女神は後ろに気配を感じて振り返り、自分と同じ姿をした黒い物体を見て言った。


「では、これを倒せば先に進めますね」


クレイルは刀身だけの剣を引き抜き、光の力を付加させた。


クレイルの形をした影は剣を構え、クレイルに切り掛かったがクレイルに一刀され、影は散り散りになって消えた。

そして、クレイルの身体が足元から頭へと霧状になり消えた。


「クレイル!」


「大丈夫、先に進んだだけだから」


レイナはフェイに言うと自分の影を水の刃で消し去るとレイナもクレイルと同じように消えていった。


「一体、どうなってるんすか」


「取りあえず、こいつを倒せば良いみたいだけど…」


フェイはそう言いながら、自分の影の攻撃を躱した。


「そうっすね」


リーシュはボーガンで矢を自分の影へ連続射出すると影も同じように矢を放って相殺させた。


「普通の攻撃じゃ駄目みたいだな」


フェイはそう言うと思った。


『レイナとクレイル、よくこんなの倒したな』


フェイの影は真炎斬を放ってきた。フェイはそれに対して咄嗟に真炎斬を放ち、影の放った真炎斬と共にフェイの影を掻き消した。


「そっちも倒したみたいっすね」


リーシュも自分の影を倒して言った。するとクレイル、レイナと同じように二人の身体も消えた。


「遅かったですね」


フェイはクレイルに声をかけられ目を開けると周囲を見る。


そこは炭鉱のような洞窟の中だった。


「さっきのあれは対迎撃型転移魔法の一つです」


レイナの意識を借りて女神はフェイとリーシュに教えた。


「ここはウェルズ魔窟ようですね」


「魔窟って何ですか」


「千年前に失われた魔導鉱石の取れる洞窟の事です」


「って事は此処は千年前の場所?」


「恐らくは」


クレイルはそう言うと地面に落ちている石を拾うと淡い光を発した。


「それが魔導鉱石っすか?」


「そう、あと此処を抜ける間は力を控えて下さい。鉱石に反応して誘発して大変な事になりますから」


フェイ達は先へと進んだ。


魔窟を進むにつれて入り組んでいき、幾方向にも分かれる道を調べながら進んでいくと大岩が置かれた空洞に着いた。


「行き止まりみたいだけど」


「大きな岩っすね」


「これは…」


クレイルは大岩に触れると淡い光を放った。


「…魔導鉱石、こんなに大きな」


「待っていたぞ」


顔に一筋の傷の入った男、ケイオスが魔導鉱石の陰から現れた。


「貴方は生きていましたか」


「誰ですか?」


「ヴァルキリアの騎士ですよ」


「この傷の御礼に来た」


ケイオスは顔の傷を触れて言うと剣を抜いた。


「今度こそ逝かせて差し上げますよ」


クレイルは何もない所から刀身だけの剣を抜くとケイオスはクレイルに切り掛かってきた。


「クレイルさん」


フェイは意識をクレイルに向けるとケイオスを含めた全員の周囲に複数の絡繰り人形が現れた。


「なんだこいつら、あいつの仲間か?」


フェイとリーシュは咄嗟に武器を出した。


「こいつらはまさか!」


ケイオスはそう思うとその場に居た全員に襲い掛かって来た。


ケイオスは剣で次々と人形を薙ぎ払っていく。


『仲間じゃないのか?』


そう思いつつフェイも剣で人形達に切り込んでいき、リーシュはボーガンの矢を放っていく。


「女神アルティミウス…」


クレイルはレイナに近付き言った。


「はい、彼等も深き沈黙を破り動き出したようですね(あまり好まないやり方ですが、強制転移でこの空間に干渉して道をこじ開けるしかありませんね)」


そして、レイナの内の女神アルティミウスは言葉を紡ぐ。


「闇を喰らいし時の門、繋げ彼方の場所へ、グラヴィティ・イグジット」


すると女神が発動した魔法に対して大岩の魔導鉱石が共鳴し淡い光を放ち始めた。


「皆さん、私の近くへ」


フェイ、リーシュはレイナの近くに寄った。

すると魔導鉱石は淡い光から強く発光し辺りの景色を削り取っていく。そして、魔導鉱石に砕け辺りは一瞬で暗闇に染まった。


「何も見えなくなったっすよ」


暗闇の中に無数の扉が現れ、真っ白な世界になった。


「ここは?」


「神殿の中枢にあるインハーシェル、此処にある扉の一つがヴァルキリアがいると思われるレイジェンティアに繋がっている」


「じゃあ、片っ端から開けるっす」


「それは出来ません」


「どうして?」


「幾つも開けていたら気付かれて扉の鍵を閉められる恐れがあります」


「じゃあ、どうすれば…」


「少々時間がかかりますが、私が何とかしましょう」


クレイルは地面に魔法陣を描き始めた。




「ここは…何処だ」


ケイオスは砂漠の中に居た。


突然、砂の中からさっきの絡操り人形が現れた。


「またこいつらか、邪魔だ消えろ」


ケイオスは剣を抜くと人形達を切り刻んでいき、その場に居た人形達を全て倒した。


「これがフルヴァリーナイツの力だ」


「君の血は何色」


「まだ残っていたか」


ケイオスは声の方を見ると朱い髪の少年が立っていた。


「人形?じゃないな」


「君の血は何色」


少年はケイオスの瞳をじっと見つめると目から生気が消え、ケイオスは人形の様に立ち尽くした。


「………」


少年は唄いながらケイオスを連れて何処かへ消えていった。


時空の神殿〜インハーシェル〜


「まだっすかぁ?」


クレイルが魔法陣を描き始めて数時間経っていた。


「もう少しですが、邪魔が来たようです」


ケイオスがフェイ達、四人の前に現れた。


「さっきとなんか様子が違う」


リーシュはボーガンの矢を何発も放ったがケイオスは避けずに身体で受け止める。


「変っすね」


ケイオスは剣を抜いた。


「なんかさっきの人形みたいな動きっす」


レイナの内の女神は言う。


「さっきの人形と同じようなものです、彼にはもう意識はなく操られているのですから」

「じゃあ、操っている奴もこの場所に?」


「いないわ」


フェイの言葉に女神は即座に答えた。


「出来ましたよ」


クレイルは魔法陣を描きあげ、魔法陣を発動した。


「イミテーション・ブレイク」


無数にあった扉が次々と消えていった。


「イカセナイ」


フェイはエレメンタルブレードを抜き、ケイオスの剣を弾き落とした。

リーシュは剣を拾う為に伸ばしたケイオスの手と両足をボーガンの矢で地面に打ち付けた。


クレイルの魔法陣によって一つの扉が残った。


「あの扉が、レイジェンティアに繋がっている扉です」


「マテ」


ケイオスは矢の刺さっていない手で手足の矢を引き抜いた。


「サキニハイカセナイ」


そう言うと複数の絡操り人形が現れ、フェイ達を囲んだ。


「私が道を開きます」


クレイルはその場で飛び上がり、剣を引き抜くと円状に剣圧が広がり、人形達を薙ぎ倒すと着地した。


「今のうちに早く」


フェイ達は扉まで向かう間に人形達は次々立ち上がり、数が増えていく。


「全く厄介ですね」


クレイルは扉と人形達の間で立ち止まって言うと一体の人形が飛び掛かって来た。

クレイルはそれを振り向き様に一刀して倒した。


そうこうしている間にフェイ、リーシュ、レイナの三人は扉まで辿り着き、扉を開ける。


「クレイルさん、早くこっちへ」


「先に行ってて下さい」


クレイルは人形達と戦いながら言うとフェイは加勢に向かう為、クレイルの方へ行こうとした瞬間、レイナに腕を掴まれ扉の中に投げ込まれた。


「リーシュも早く中に」


レイナの言われるままにリーシュは扉の中へ入った。


「後は頼みますよ、女神アルティミウス」


レイナは遠い眼差しでクレイルを見ると扉に入った。


時空の神殿〜レイジェンティア〜


ヴァルキリアは魔法陣を全て消すとグルベリは言った。


「また来たみたいですよ」


「言われなくとも分かっている」


レイジェンティアに扉が現れて扉が開く。


その扉からフェイ、リーシュ、レイナの三人が現れた。


「よく此処まで来れたな、上出来だ」


「此処で終わらせてやる!」


フェイはエレメンタルブレードを勢いよく抜き構えた。


「いいだろう」


ヴァルキリアは黒いローブを脱ぎ捨てるとフェイ達一同、ヴァルキリアの姿に驚いた。


「えっ…」


「同じ顔…っす」


ヴァルキリアの顔はフェイと全く同じ顔だった。


「驚くことはないだろう?」


ヴァルキリアはレイナとリーシュに向かって言った。


「俺が本物のフェイト・エルベーニュだ」


「そんなわけないわ」


「そうっすよ」


「では、その偽者が知らない俺達、三人だけが知っている話をしようか?」




〜回想〜


フェイ、あぶないよ


だいじょうぶだよ


フェイはシュパールという林檎に似た実のなる樹に登っている。

フェイは上の方にある一つだけ色の違う実に向かって登っている。


あと少し…


レイナは心配そうにフェイを見つめていると足滑らせて樹から落ちた。

フェイは地面へと背中から落ちるとき強い風が吹き、地面との衝突を和らげた。


フェイ!


レイナは急いでフェイの元に駆け寄とフェイは苦しむような表情をしている。


フェイ…どうしよう…


フェイの苦しむ表情から変化を見せこう言った。


な〜んてね


フェイは軽々と起き上がった。


もう!心配したじゃない!


怒るレイナにフェイは謝る。


ごめん…


謝るフェイを見てレイナは笑った。


それを見てフェイも笑った。

なぜか二人で笑っているとリーシュがやってきた。


何二人で笑ってるっすか?


いや なんでもないよ


あっ!それ


リーシュはフェイの手にあるシュパールを見つけ言った。


よくとれたっすね


まぁな




「その話は知っている!」


「だが、シュパールの誓いは知らないだろう」


「シュパールの誓い?」




なぁ、このシュパールに誓わないか?


フェイはシュパールの実を見てから言った。


何を誓うっすか?


リーシュが聞くとフェイは考えた。


ん〜何がいいかな


フェイが考えているとレイナが思い付いたかのように言った。


じゃあ…


「永遠の友情に」


ヴァルキリアとレイナ、リーシュの三人が同時に言った。


「………」


「どうして…」


「俺が本物だからだよ、レイナ」


「そんな…俺は…俺は…(何者なんだ…)」


フェイは自らの中に疑心が渦巻き、気が遠退いて跪く。


「フェイ!」


リーシュはフェイへと駆け寄り、フェイの身体を支える。


「まだその偽者をそう呼ぶのか、リーシュ」


「例え本物のフェイトがお前だったとしても過ごした時は偽りじゃない」


「リーシュの言う通りよ」


「確かにそうかもしれない。だが、その過ごした記憶がその偽者に造られたものだとしたら?」


「そんなこと…」


「龍人族ならば可能だ、本人は無意識だろうがな」


「じゃあ、本当にお前がフェイトだっていうのか?」


「そうだ」


「でも、おかしいわ、数千年生きている貴方がフェイトなわけない、それに封印されていたはず」


「封印?そんなものは初めからないようなもの、俺は輪廻を巡る一族(サムサーラ)だからな…」


ヴァルキリアは少し曇った表情をした。


「輪廻を巡る一族(サムサーラ)?」


レイナの疑問に内なる女神がレイナの身体を借りて答える。


「サムサーラは悪魔、忌まわしき者として歴史上から消し去られた一族です」


「その通りだ、女神アルティミウス」


「貴方の目的は何です」


「俺はその偽者に奪われた時を取り戻したいだけだ」


「だからってその為にどれだけの命が、俺が知ってるフェイはそんなことはしない」


「本当にそいつがいいんだな、リーシュ、お前は怒ると口癖が抜けるからな…レイナもそうなのか?」


レイナは何も答えずただヴァルキリアを睨んでいた。


「そうか…」


ヴァルキリアは悲しげな表情し、フェイ達に左手を向けると掌に黒い光が集中するように現れ、球体を作り上げる。


「…ならば偽者ごと消えろ」


球体は収縮し、放たれる。


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