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Shining Heart  作者: 201Z
53/71

12−2


〜???〜


キルティング博士の元へ戻ったベルデは博士に話し掛ける。


「始末して部屋の中を調べたけど、やっぱり本物はなかったわよ」


ベルデはキルティングに種を渡した。


「偽物だらけですね、だが、この出来なら申し分ない」


「あとはこれ」


ベルデはキルティングに紅い液体の入った栓のされた試験管を差し出した。

キルティングはそれを取ろうと手を延ばしたが、ベルデは試験管を持つ手を引いた。


「どうしたのです?」


「…なんでもないわ」


ベルデはキルティングに紅い液体の入った試験管を渡し、何処かへ行った。


「なんだったんですかね、今のは」


キルティングは疑問に思ったが気にせず、そのまま紅い液体と種を持ち、クリフォトの元へ向かった。


「どうです?」


「渇いた砂が水を吸うが如く知識を吸収していきます…ですが…その反面、力が不安定になりつつあります」


「心配はいりませんよ」


「主…」


キルティングは注射器に紅い液体を入れ、種に注入した。

紅い液体を注入した種は脈動する。

それをクリフォトの胸に当てると種はクリフォトの身体に根付く。


「うわぁぁぁ…」


キルティングはゆっくりと後退り、クリフォトから離れるとクリフォトの身体中の血管が浮き出る。そして、物凄い力が溢れ出る。

その溢れ出した力によって周囲の物や壁、天井は消し飛んだ。


「これで安定とより増した力が備わったはず」


「では、そろそろ行動を?」


「レイティア・アースを開く…」


「その旨を他の者達にも伝えてきます」


「クリフォト、行きますよ」


「はい、主」


そして、キルティングとクリフォトの姿が消えた。




愚者の森〜霧の集落〜


ディオスとクロイは森の中に現れた大きな窪地に出た。


「ここがアーデルリンガーの住み処」


辺りには家と呼ぶにはお粗末な木と土で造られた洞が幾つもある。


「何の気配もないよ」


「もう彼等には消えてもらったよ」


双子はアーデルリンガーの住み処を見回す。


「誰だ」


木と土で造られた洞の中からグルベリとスーリセがいた。


「グルベリ様」


「グルベリさま」


「預かったものは?」


「ここに」


ディオスはグルベリに身の丈程ある布袋を渡した。

グルベリは布袋を受け取り、布袋を閉じている紐を解いて中にあるものを引き出した。

引き出されたそれは四重螺旋を描く四ツ又の槍だった。


「スーリセ」


グルベリは槍をスーリセに渡した。


「ディオス・クロイ」


グルベリは二人に自分の意志を飛ばした。


「分かりました」


「わかりましたぁ」


二人はすぐさま何処かに向かった。


「僕等は地上に向かうよ」


「はい、マスター」


『漸く全てが動き出す』




〜廃墟〜


ヴァルキリアに傅く老紳士、セルゲイは主の名を呼ぶ。


「ヴァルキリア様」


「動き出したか…」


「はい、いかがなさいますか?」


「まだ、動くときではない」


「ですが、先にあれを全て押さえられては…」


「心配はいらん、それよりもうすぐ客人が来る」


「客人?ですか」


「オーブを取りにな」


「お、オーブを譲り渡すというのですか!?」


セルゲイは驚きのあまり、言葉が吃る。


「ただ奴らに入り口を開ける鍵の役割になってもらう」


「失礼しました、そのようなお考えとはつい知らずご無礼を…」


セルゲイは深々と頭を下げる。


「まぁ良い、だからと言ってただで渡すわけではないからな。ここまで言えば分かるだろう、セルゲイ」


「はい、その様に取り計らいます」


セルゲイはその場から立ち去り、入れ代わりにゲルヴが入ってきた。


「ヴァルキリア様、先刻届けて頂いたエレメントの解析によってより精度の上がった物が仕上がりました」


「そうか、そこへ置いて下がれ」


「はい」


ゲルヴはそそくさと立ち去った。


ヴァルキリアはゲルヴが置いて行った物に近付いた。そこにはエレメントと鎧が置かれていた。


「くだらん、この程度出来で持ってくるとは…」


ヴァルキリアはエレメントと鎧に掌を向けて握る動作をすると跡形もなく壊れた。


「わざわざ程度の低い模造品まで置いていくとは本物は大方、奴…グルベリが持っているのだろうな、そろそろあいつも潮時だな…ブリューナクはあいつらに渡したのだろう?シュビッツ」


ヴァルキリアの呼び掛けに暗闇から黒のローブのフードを被った者が現れた。


「あぁ、奴のホムンクルスに渡し、幻獣達の排除を命じた」


「同族殺しか」


「それを言うなら俺にではなく、グルベリの方に使うのが正しい、恐らく奴自ら消すからな」


「それもお前の力か」


「まぁな…そろそろ行く、俺も忙しいんでな」


そう言い残し、シュビッツは姿が暗闇に消える。


「…余興が始まるな…」




〜廃墟〜夢幻回廊〜


黒のローブを纏ったソフェルに居た仮面を被った者が一人、立っていて手にはボーガンが握られている。


「オーブ付きの出迎えが来ているとは手間が省けましたね」


キルティングとクリフォトがその者の前に現れた。


「そのオーブを素直に渡して頂けますか?」


「………」


仮面を被った者は何も言わずにボーガンを構えた。


「身の程知らずが…」


キルティングはドスを利かせた声で呟いた。


「クリフォト、お前の力を見せてやりなさい」


「はい、主」


仮面を被った者はクリフォトにボーガンを向けて引き金を弾いた。

放たれた矢は直ぐさま紫色の雷光と共に消えた。

仮面を被った者はクリフォトにまた矢を放った。今度は何も起きずクリフォトの頬を掠め、黒い血が流れ出たが血はすぐに傷口へと戻り、何事もなかったように傷は消えた。


「無駄ですよ、どんな傷も直ちに癒える治癒能力があるのです。まさに神に等しいほどの力、いえ、むしろ神と言っていいでしょうね…その存在を造った私は神をも超えるということか」


キルティングは自らを誇り嗤う。


「その私の造り上げた神の作りし障壁を擦り抜け、傷を付けれた事は誉めてあげましょう」


クリフォトと仮面を被った者の間にはベルデの時のように無数の線が交錯している。


「クリフォト」


「はい、主」


クリフォトは交錯した線を解き、一瞬で仮面を被った者に近付くとクリフォトは仮面を掴み、手から雷撃を放つ。その雷撃の威力は凄まじく仮面を被った者の身体から何本もの雷電が放出されている。

クリフォトは手を離すと仮面を被った者は俯せに倒れ、身体が燃え上がった後に散り散りとなって仮面とオーブを残して身体は跡形もなく消えた。


「ふざけた面だな」


キルティングがそう言うと仮面は亀裂が入り真っ二つに割れた。

キルティングは疾風のオーブを拾い、クリフォトと共に何処かへ消えた。




〜廃墟〜研究室〜


ゲルヴが自室に戻ってくると部屋の中にはグルベリとスーリセが居た。


ゲルヴは急いで自室の扉を閉めた


「グルベリ様!どうされたのですか?突然、このような所に少々危険では?」


「心配はない、とっくに気付かれている。僕が此処に来る前からね」


「今し方、ヴァルキリアに偽のエレメントを渡しに行ってきた所ですが、そのような様子はありませんでしたが…」


グルベリは自分の指に嵌められている指輪を弄りながら言う。


「そうか…」


グルベリは何かを握り潰すような仕草をするとゲルヴがもがき苦しみ倒れた。


「グゥ…ル…ベリ……」


ゲルヴはピクリとも動かなくなった。


「………」


明かりが弱くなり、研究室の中が一時的に暗くなったがすぐに戻る。


「マスター」


「わかってる、定刻通りだ」


二人は研究室から出た。




〜廃墟〜闇ノ帝座〜


「予定通りことは運んだ」


ヴァルキリアの前には仮面を被った者が立っていた。


そこへゆっくりと扉が開く音が聞こえた。


「ヴァルキリア」


仮面を被った者がボーガンを構えた。


「僕は君等に危害を加えるつもりはない」


「ペルソナ」


ペルソナはボーガンを退いた。


「シュビッツか?ランス・ド・グルベリ」


「何処にいる?」


「聞かずとも知っているのでは?」


「ソレイド…」


グルベリは思い当たる場所を口にするとソレイドへの入口を開いた。


「では失礼する」


二人は入口に入り、ソレイドの入口と共に消えた。その瞬間にセルゲイが血相を変えて入って来た。


「ヴァルキリア様!ゲルヴ博士が!」


「分かっている、落ち着け裏切り者が死んだに過ぎない」


「取り乱して申し訳ございません」


『だが、奴らと同時刻に侵入してくるとは、やはりシュビッツと同じ力を持っているか』


ヴァルキリアはそう思い、セルゲイに告げる。


「彼地へ向かう」


「かしこまりました」


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