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Shining Heart  作者: 201Z
46/71

10−5


神殿〜地の神の聖域〜


「中に入ったがアーニャ達は何処や」


ラズーリは神殿の開いた天窓から中に入り、大聖堂の天井の縁を走る梁からアーニャ達を捜していると後ろに気配を感じた。


ラズーリが直ぐ様、後ろを振り向くとコルカスが居た。


「あんさんはコルカスやったか?アーニャ達は何処や」


「大佐と隊長達は神殿の裏手から侵入しておりますゆえ」


「そうねんや、ちゅうことであんさんはわいの下についてもらうで」


「承知した」


「まずはと…(あれはさっきの子なんでこないなところに)」


ラズーリはふと下に視線を向けると裏路地でぶつかった少女、マリーの姿が目に入った。


「これからどうされる?」


ラズーリはマリーに気を取られ、コルカスの質問に一瞬、反応が遅れる。


「あっ…そやな、まずは隠密行動で奴らの計画を調べることやな、あるところまで調べは進んどるんやけど肝心な所がどうもなぁ」


「承知した」


ラズーリ、コルカスはその場から移動した。



「さすがは聖母の妹だけあって難無く入れただぐな」


「あれって」


マリーは梁の上を走り、何処かへと移動するラズーリを見つけた。


「さっきの奴だぐ、易々と侵入を許すとは教会の力も底が知れるだぐな」


「それってお姉ちゃんを馬鹿にしてる?」


マリーは少し怒り気味で言った。


「ちょっと待つだぐ、俺はただここの教主のことをだぐなぁ」


「分かってる、さぁ行こう」


マリーとミラはアンジェラを捜しに奥へ歩いていった。




神殿〜大地の塔〜


「ごめんなさい、ネフィル」


アンジェラは逆さまの黒い十字架に張り付けられているネフィルに謝る。


「アンジェラ…どうしてなんだ…」


「私はもう過去の私ではないの」


「私の聖母の血は汚れてしまった…」


「よくやってくれた、聖母…いや、堕天使アンジェラ・ドゥラ・ガブリエル」


金糸で精緻な模様の刺繍が施された臙脂色のローブを纏った褐色の髪の初老の男性、教主が現れた。


「本当にごめんな…さい…」


アンジェラは名前を呼ばれた瞬間、言葉に詰まり、額に逆十字の傷が現れる。そして、肌が浅黒く染まった。


「アンジェラ?どうした?」


「そんな状態にされて、まだ私の心配とはおめでたいやつ」


黒く染まったアンジェラはクスクスと笑った後に馬鹿にしたように言うと冷たい口調で続ける。


「これから人柱になるというのに」


「来たか…」


教主は何かを感じ、姿を消すと…。


「お姉ちゃん!」


マリーが駆け込んできた。


「マリー」


アンジェラがそう言ってマリーの方を振り向くと元の姿に戻っていた。


「マリー、家にいないとダメじゃない」


そう言いながらマリーへと近付いて行く。


「その人をどうするつもり?」


「言ったではありませんか、ノームの加護を得ると」


「いい加減本性を出しな!」


マリーの肩のクマのヌイグルミからいつもと違う声色が聞こえた。


「ミラ!?」


マリーは驚き、肩を見るがいつものクマのヌイグルミはなくマリーの隣には金色の髪の男が立っていた。

その男の手首には鎖の付いた鉄の輪が嵌められている。


「久しぶりで…良かったかしら?ミラ」


アンジェラはまた黒い肌の姿に戻っていた。


「何を今更、ずっとお前の気配は感じていた」


「そう気付いていてここまで…けど今はあんたに付き合ってる暇はないの」


黒のアンジェラはミラに手を翳すと掌の前に黄色に輝く輪が現れ、輪の中心から光がミラに向けて放たれた。

だが、光は何かに阻まれ、ミラには届かずに収束した。


「お姉ちゃん、やめて」


マリーはミラの前に立っていた。


「魔女が何を言う」


「私は貴女に言ってるんじゃないお姉ちゃんに言ってるの」


「まだ家族ごっこか、そんな言葉もう通じない…」


黒のアンジェラの言葉が突然、途切れた。


「は・や・く・に・げ・て…マリー」


「お姉ちゃん!」


「だぁ・ま・れぇぇ……消えろ」


黒のアンジェラはまた手を翳して黄色に輝く輪を掌に作り出す。


「マリー、退いて下さい」


ミラがマリーの前に出ると光が放たれる


ミラはすぐ様、手を前に構えて放たれた光を片手で受け止める。


受け止めた光は周囲に漏れ流れ、天井や壁に当たるが破壊されることなく吸収された。


『これは場所が悪いな、何とかしてマリーを此処から早く出さないと』


そして、放たれていた光は収束する。


「ハァ…ハァ…お姉ちゃん…」


マリーは少しだけ息が乱れている。


「大丈夫、俺がなんとかする…」


そう言い切った後、ミラの姿がクマのヌイグルミに戻った。


「…だぐ」


「あっ…」


「逃げるだぐ」


「カッコつけて言っといてなんなのぉ〜!」


マリーはミラを掴んで急いでその場から逃げた。


「………」


黒のアンジェラは無言でそれを見送る。




アーニャ、メイテ、ゴーギャンの三人は物置にされている部屋の窓から侵入し、アーニャはその部屋の扉を少し開けて様子を伺った。


「人目を避けて裏から侵入したけど中の方が警戒厳重ね」


臙脂色のローブの者達が頻繁に行き交う。


「ここは二組に別れて行動した方が賢明だな」


アーニャはグレンの言葉に同意するように頷いた。


「ゴーギャンは大佐に、メイテは私に付いて」


アーニャ達は二手に別れ、時間差で部屋から出る。


「メイテ、力を使って建物の把握を」


メイテは臙脂色のローブの下で周囲に分からないように力を使った。

目に見えない力がメイテを中心にして波打つように円形状に広がった。


「内部が不明な部屋が幾つかあります」


「不明な部屋?」


「近い所ですと、今、歩いている通路を真っ直ぐ行って、右に曲がった所に一つあります」


「では、まずはそこを調べる」


アーニャとメイテはその部屋に向かった。


何事もなく、二人は目的の部屋の近くまで辿り着いた。


「止まって下さい、部屋の前に誰かいます」


メイテは曲がり角の所でアーニャを引き止めた。

アーニャは止まり、角から覗き見て部屋の前を確認した。


「どうですか?」


「男が一人立って…消えた!」


部屋の前に立っていた男は忽然と姿が消えた。

その直後、扉が勢いよく開き、クマのヌイグルミを持った少女が出て来た。


「子供?」


少女は出た勢いのまま通路を真っ直ぐ走って行った。


『どうして子供がこんな所に』


アーニャとメイテはゆっくりとその部屋に近付いて行き、開け放たれた扉から中を覗き見た。すると中には逆十字に貼付けにされた人とその前に立つ人の姿が見えた。


『あの胸のレリーフ、あれが少佐に間違いなさそうね、此処からでは生死までは判らないわね』


アーニャは自分の首元に手を当てる。


『ゴーギャン、コルカス、聞こえる?』


『はい』


二人の声がアーニャの頭の中に聞こえた。


『少佐を発見、直ちに召集』


アーニャは首元に当てていた手を降ろした。


「メイテ、二人の誘導を」


メイテはアーニャと同じように首元に手を当てる。


「あと数分で到着予定」


メイテは二人の位置を把握して、アーニャに報告する。


「次から次へと…」


アンジェラは開け放たれた扉の方に意識を向ける。


「メイテ、伏せろ!」


アーニャはメイテの頭を押さえ伏せた瞬間、壁が吹き飛んだ。


「外したようね(でも、こう邪魔が入っては進まないわ、時期尚早ではあるけど止むおえないわね)」


黒のアンジェラは液体の入ったフラスコを逆十字架の真下に投げた。

フラスコは地面にぶつかり割れて中の液体は形状はあまり変えず半固形状態で地面の上に留まっている。


黒のアンジェラは何か術式を唱えると地面に紅く光る法陣が現れた。


「これで後は邪魔者たちを排除するだけ」


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