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Shining Heart  作者: 201Z
45/71

10−4


レノーブル〜裏町中央〜


ラズーリとアーニャ達は建物の陰に身を隠しながら目的地の近くまで辿り着いた。


「あそこに見えるのが、そうや」


ラズーリがアンジェラの家を指し示すと家からキャトルニカとノーム教の者達に担がれたネフィルが出てきた。


『あいつは…』


「ネフィル!」


グレンはネフィルを見た瞬間、名を呼び駆け出そうとしたのをラズーリが制した。


「あかん!危険や」


だが、抑えきれずに物陰から出る。


「失礼する」


コルカスは断りを入れつつ、グレンの首に一撃を与えて気絶させた。


「コルカス、大佐に何を」


「こうでもせぬと危険だったので…」


「そうやでアーニャ、そいつの言う通りや」


ラズーリはアーニャにそう言うとキャトルニカ達の方を見た。


『よし、気付かれてへんな』


視線をそのままアーニャに言う。


「アーニャ、あそこの図体のでかい奴が見えるやろ」


「えぇ」


「あれが神殿を守護する使徒ちゅう奴らの一人、キャトルニカや」


「キャトルニカ…第四の使徒ね」


「そうや」


「では、先刻の奴も使徒という奴なのでは?」


コルカスが外周で襲撃してきた人物を思い浮かべながら言った。


「どうゆう奴やったんや?」


「銀の二本の棒を遣う女子(おなご)だったな」


「そいつはドゥーレナ、第二の使徒やな、説明はここまでや奴らがいってまう」


ラズーリは使徒キャトルニカ達が遠ざかって行くのが目に入った。


「此処からは視界が良好さかい、別行動や」


ラズーリはそう一方的に言った後、移動を開始する。


「ちょっとラズーリ」


アーニャはラズーリを引き止めようと声を掛けたが建物の陰伝いでアンジェラの家の陰まであっと言う間に行ってしまった。


「仕方ないわね…コルカスは上からメイテ、ゴーギャンは私と」


「大佐は?」


コルカスは気を失っているグレンを視線で示す。


「私に任せなさい」


コルカスは建物の僅かな取っ掛かりを使い、屋根へと飛び乗り、使徒キャトルニカを追った。


「メイテ、大佐を」


メイテは力を使い、グレンの目を覚まさせた。


「…いててて…」


「すいません」


「…構わない、私も取り乱してしまっていたからな、それで少佐は?」


「今、コルカスとラズーリが追っています」


ラズーリは別の場所に行こうとしてアンジェラの家の細い裏路地を移動していたところで突然出てきたマリーとぶつかった。


「きゃっ!」


マリーは地面に尻餅をついた。


「ごめんな、怪我ないか?」


ラズーリはそう言って手を差し延べた。


「うん」


マリーは服を叩きながら立ち上がる。


「そいならよかった」


「おじさん、神殿のローブを着ているけど教会の人じゃないでしょ?」


「あちゃ〜バレてもうたか、内緒にしてな」


「うん、いいけどこんな所で何をしていたの?」


「ちょっとなっとお嬢ちゃん、悪いけど行かなあかんから、またな」


ラズーリはそう言って細い裏路地を駆けて行った。


「ありゃ、軍人だぐ」


マリーの肩に乗っているミラが喋った。


「やっぱりそうなんだ」


「神殿の方に向かったが何か匂うだぐな、俺達も早く向かうだぐ」


「うん」


マリーは細い裏路地を神殿に向かった。




ラズゥールと臙脂色のローブを纏った少年の戦いは終わりを迎える。


「ブレイクメイト」


盤上の駒は臙脂色のローブを纏った少年の勝利を語っている。


「残念だけどこれで終わりだね」


「…」


「さようなら…」


少年は突然、胸を押さえて苦しみ、両膝をつく。


「こんな時に…」


周囲の空間が霧の如く崩れていく。


「何が起きている…」


ラズゥールの身体を拘束していたジャッチメントチェーンが消えた。


『鎖が消えた、退くなら今か』


「…今回だけは見逃してあげるよ」


少年がそう言い残すと空間が元の町並みに戻ると同時に少年は姿を消えた。


『退いたか?だが、此処にきて何故?向こうが優位であったというのに』


ラズゥールはそう思い、再びリベルを捜す為、その場を立ち去った。


「あと少しだったのに…」


路地裏で少年は薬を服用した。


「はぁ…はぁ…」


「また発作?それで逃げてきたわけね」


臙脂色のローブを纏う女性が現れた。


「…ドゥーレナも人の事、言えないじゃないか?」


「私の場合はただ相手の力量をはかったまでよ」


「言い訳にしか聞こえないけど」


「失礼ねぇ言い訳だなんて、だって簡単に壊しちゃつまらないでしょ?」


「アンテラは?」


「計画通り、あの人と一緒でしょうね」




神殿〜地の神の聖域〜


臙脂色のローブを纏った老公の男性が岩を積み上げたような無骨な壁や天井の奥に質素な造りの祭壇がある場所にルナ達を案内した。


「ここが礼拝堂です、そこの祭壇の裏には愚者の森へと繋がる扉があります」


祭壇の後ろに巨大な十字架で封じられた扉がある。


「こんな所で何をしている、アンテラ」


金糸で精緻な模様の刺繍が施された臙脂色のローブを纏った褐色の髪の初老の男性がルナ達の背後に現れた。


「教主様!」


臙脂色のローブを纏った老公の男性、アンテラは頭を垂れる。


「侵入者はどうしたのだ」


「キャトルニカが連れてきます」


「うむ、でそいつらは何者だ?」


「この方々は礼拝者です」


「ほう礼拝者とな」


教主がそう言うと臙脂色のローブを纏った者達が出て来てルナ達を拘束した。


「どうなって…」


突如、拘束されたことにクレイルは思わず声をあげるとそんなクレイルにルナが声を掛ける。


「今はおとなしく従った方がいい」


「連れていけ!」


ルナ達は礼拝堂から連れ出された。


「教主様、何を」


「私が知らぬと思ったか、あの子供が初代冥王ルナであることを!そして、お前達、使徒がかつてあれに仕えていた事もな」


「知られていたとは…」


「端から知っておったわ、そのような事」


「そうか、初めから…ならばもうお前に従う理由はないな」


アンテラは身に纏っていた臙脂色のローブを脱ぎ捨てた。


露になったその姿は鈍色の髪の執事服を纏う老公の男性だった。


男性は右手で何かを掴むような仕草をした。


「無駄だ、お前達の力は拘束した」


「行動不可」


臙脂色のローブ纏う大男が現れ、教主の傍らに立つ。


「キャトルニカ、お前!」


「キャトルニカは初めから私にのみ仕えている。キャトルニカ!アンテラ、ドゥーレナ、トロワンテを拘束し聖魂乃間へ連れていけ」


キャトルニカにそう言いつけて教主は立ち去った。




神殿〜聖魂乃間〜


「入れ!」


臙脂色のローブの者達によってルナ達は聖魂乃間に押し入れられると扉は閉じ消えた。


「レルクさん?…」


リベルは一瞬、目を疑う。


「リベル」


「レルクさん!生きていたんですね!」


リベルはレルクに駆け寄る。


「どうしてここにいるんです?リベル」


「私…いえ、私達は…」


「私達?」


「はい、ラズゥールさんとバルディ様の勅命でメルテクスの調査をしていたんですが…」


リベルはレルクにこれまでの経緯を話した。


「…そうですか」


『あのアンテラという者、まさか…な』


ルナは老公の男性のことを気にしていた。


『これからどうしますか、明らかに普通の部屋と違いますね』


クレイルは部屋を見回す。


室内の壁、床、天井には様々な文字列と幾何学模様が描かれている。

それらは時を刻むように動いている。


「これは時在法…か?」


「大方、私達をノームの贄とするつもりだろう」


クレイルの呟きにルナが答える。


「そんなわけのわからないものの為に命を奪われるなんざごめんだ」


ワグは背中に携えた黒い大刀を引き抜き、霊獣デスヴァルクの力を引き出そうとしたが出て来る気配がない。


「出ない?」


ワグが何をしようとしたのかは分からないが時在法を解析したリベルは床に触れながら言う。


「無駄です、時在法の一部に無効化する力が働いていますから」


「ちっ!」


突然、扉が現れて開いた。


アンテラ、ドゥーレナ、トロワンテがキャトルニカによって聖魂乃間に入れられた。


そして、三人が入ると扉が閉まりまた消えた。


「お前らよくも!」


「落ち着いてください」


ワグが三人詰め寄ろうとするのをクレイルが制した。


アンテラはそんなワグには目もくれず、ルナの元へと向かい跪いた。


「ご挨拶が遅れて申し訳ございません、ルナ様」


「おぬしはやはりファウスト」


「はい、セカンド、サードもおります」


「これでもう演じる必要がないのですね、お久しぶりです姫様」


「おひさ〜姫っち」


ドゥーレナとトロワンテは今までとは違う口調でルナに話し掛けた。


「だがその姿はどうした」


「この町に入る時に姿を変えたんですが、今は力を封じられて」


「その腕輪だな」


「はい」


クレイルは三人の手首に密着するように嵌められた土で出来た腕輪を見ながら思う。


『見た目は脆そうですが…あの状態では外すのは無理ですね、ましてやこの空間では尚のこと』


「それで此処から出る方法はないのか?」


ワグは此処から出ることを優先として蟠りは捨ててアンテラ達に訊ねた。


「私が知る限りではこの時在法コモンソウルが発動してる間は外からしか扉は開くことができない」


「それじゃこのままただ命が尽きるのを待てと!?」


「心配はいりません、手立ては打ってあります」


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