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Shining Heart  作者: 201Z
41/71

9−4


冥界〜権力者の館〜


「ここへ入ったようだな」


屋敷へ続く血の跡を見て言った。


「ここだけ、町の中に比べて空気が澄んでいますね」


「あれがあるからだろうな」


「コアのカケラですか?」


「あぁ」


四人は館の中に入ると中はゴシック調の造りになっており、可笑しな模様が壁や床、天井で蛍光塗料のようなもので描かれている。


「何なんでしょうか?」


レルクは誰に聞くでもなく口にするとルナが答える。


「館全体に侵入者用のトラップが発動している」


ルナは描かれている模様から発せられる力を感じ取る。


「トラップですか、どのような仕掛けが施されているのやら…カケラは何処にあるのでしょうか?」


「この通路の奥にカケラの気配を感じるが他に別の力を感じる」


「それが創者というわけですか?」


「恐らくな、まずはトラップを処理する」


「処理出来るのですか?」


「これくらい今の私でも造作もない、プリシラを貸してくれ」


クレイルはプリシラをルナに渡した。


「我が前に阻むもの、全て拒みて路と成せ」


ルナはプリシラの剣先を通路の奥に向けて言うと剣が光り、周囲が見えなくなった。

光りが消えると通路の壁は真っ白に染まっており、奥にくすんだ色をした扉があった。


「はぁ…はぁ…(しまった…吸収系のトラップがあったか…)」


「大丈夫ですか?」


「…大丈夫だ(私が見誤るとは…)」


ルナはレルクにそう言い、クレイルにプリシラを返した。


「ハーフスピット」


クレイルはルナのプリシラを返す際に腕を掴み、そう呟くとルナの乱れた呼吸が収まる。


『自らの力を分け与える魔法か』


ルナはクレイルの方を見るとクレイルは微笑んだ。


「さぁ、行きましょう」


四人は奥の扉へ向かった。


扉を開けるとその先には一本の木があり、その木は普通の木と違い、枝につける葉の形が全て文字となっている。そして、その言の葉の中に何かが光っている。


「誰だ!」


「貴女が創者ですか?」


クレイルが問う先には鼻筋を斜めに走る傷を顔に持つ女がいた。


「創者?何の事だ?」


「違うようですね、では貴女は誰です?」


「………」


女の返事はなかった。


「おい、ここに倒れているのが創者じゃないのか?」


ワグはクレイルに言った。


ワグの言う方をみると頭から血を流して倒れている男がいた。


「貴女がこれを?」


「そうだ」


「やれやれ、今日は客人が多い」


男の声が聞こえ、倒れている男は液状化して消えた。


「消したのは偽者」


「残念だったな、ネフィル少佐」


声の主が姿を現す、それはタクリ公爵だった。


「ならば、また消すまで」


ネフィルは二丁の拳銃を抜き、躊躇なくタクリに向かって引き金を引く。だが、銃弾は突然現れた一本の剣に阻まれた。


剣は人の姿へと変わった。


「大丈夫ですか?」


「ですかぁ?」


ネフィルの銃弾を阻んだのはディオスとクロイだった。


「事は済んだか?」


「はい」


「それが偽りの生命か」


「ほぅ、これを知っているのか」


「…」


「何故知っているかは想像がつく…いいことを教えてやろう」


「お前のような者に教わることなどない」


「まぁ、聞け。この町の住人の命を奪った者は私ではない、君をここに送り込んだグレンなのだよ」


「そんな戯れ事」


「ぶれないか、芯が強いな」


「やはり嘘」


「それはどうかな?…」


タクリは含み笑いをして、クレイル達に話し掛けた。


「それで君達は何者だね?」


その問いにルナが言う。


「コア・フラグメントを返して貰おう」


「君達は…ん?」


タクリはルナの顔見て、言葉半ばに何かに気付いた。


「これはこれは、器、自らが来るとは」


「それを理解しているならば返して貰おうか?」


「二つ返事で、了承するとでもお思いか?」


「では仕方ありませんね、私の性分に合いませんが力付くで渡していただくしかありませんね」


クレイルはプリシラを構えた。


「やれやれ…」


タクリは言の葉の木に立て掛けてあった杖を引き寄せて掴むと杖の頭の部分が開いた。すると木の言の葉が杖へと吸い込まれていき、言の葉の中にあった光っていたものが露になる。そして、最後に光るものが杖へと吸い込まれて杖は閉じる。


「ディオスクロイ、手加減いらん!あれで一気に片を付けろ」


「はい」


タクリは杖の先をコツッと床につけるとタクリの前に硝子管が床から突き出し、硝子管が割れて中から身体の一部が機械化された者が現れた。


「ディオス、クロイ…」


身体の一部が機械化された者が言った。


「おはよう」


「はよはよ〜パンネル」


「久しぶりに遊べる」


「あれが玩具?」


「そうだよ〜」


「行く」


ディオスとクロイは剣に姿を変え、パンネルは二本の剣を掴むと颯爽と構えた。


「これは骨が折れそうな相手ですね」


クレイルは双振りの剣を構えるパンネルを見て呟くとワグがクレイルの横へと並び、黒い大刀を構えた。


「心強いですね、来ます」


パンネルはディオス・クロイを二人向かって振り下ろした。


クレイルはそれを躱し、ワグは黒い大刀で受け止めた。


「久しぶりの外は愉しめそうな玩具がいるな」


パンネルは大きく口を開けると口の中で光が集束していき、光は放たれた。


放たれた光はレルクとルナの横を掠めて壁に大きな風穴をあけた。


「今のは何なんです…あんなものまともに受けたら一たまりありませんね」


「久しぶりだと、加減と制御が難しい」


クレイルは一旦、後ろに退いた。


「今のは驚いたが剣圧は対したことはないな」


ワグは剣を受け止めたままパンネルを挑発する。


「玩具の癖に生意気」


パンネルはもう片方の剣をワグに振り下ろした。

ワグは受け止めている方の剣を床へと受け流し、振り下ろされた剣を避けた。


「ディオス、クロイ、一つに。遊びは辞め、こいつ生意気だから一気にやる」


パンネルが剣同士を重ねると剣が一つになり、大剣となった。


「やっと本気を出すってことか?」


パンネルはワグに向かって大剣を振り下ろすと同時にパンネルの機械化された部分がキュィーンっと音立てる。


ワグは振り下ろされた大剣が思いの他速かった為、大剣を受け止めずに躱した。


すると大剣は床にぶつかり、床を深く掘削した。


「俺も少し力を出さなければいけないな」


ワグは黒い大刀を床に突き刺した。


「デスヴァルク、行くぞ」


デスヴァルクはバラバラに分裂しワグの身体の各部に装着されていく。

出来上がった姿は上半身を主体とした鎧の姿であり、ワグはデスヴァルクに覆われた拳同士をぶつけた。


「よし」


パンネルはそんな事を気にもせず、振り下ろした大剣をワグに向かってそのまま横に振り抜いた。


ワグはそれを軽く躱して大剣の腹を上から殴り叩き落とすと透かさずパンネルの懐に入り込んだ。そして、腹部へと拳を叩き込み、パンネルを突き飛ばした。


「いてて…」


ディオスとクロイは元の姿に戻っていた。


「マズイ」


「何がぁ?」


クロイはディオスが見ている方向を見ると壁に打ち付けられ、熱を上げるパンネルがいた。


「……玩具の癖に、玩具の癖に、玩具の癖に…」


パンネルはぶつぶつと呟きながら起き上がった。


「あぁ、なったら止めれないよ」


「うん」


「創者様の後を追おう」


ディオスとクロイは誰にも気付かれないように部屋から出た。


「…玩具の分際で!!俺にぃぃ〜!」


パンネルの身体の機械化部分から細い雷針が突き出し、パンネルは大きく口を開けると光が集束して天に向かって光を放つ。

今度は光が拡散して自らの身体から突き出る雷針に集まり、パンネルの身体に電気が帯びた。


「あの光の正体は圧縮した電気だったようですね」


クレイルはパンネルを様相を観察しながら言う。


パンネルは両の拳で床を殴った。すると床を砕きながら雷撃がワグの元へと走っていく。


ワグは防ごうと腕を前で交差した。そこに雷撃が直撃するが身体が少し後ろに押されただけでワグは平気な顔をしている。


「こんなもの…」


腕に装着している黒い鎧の表面で電気が弾ける。


「腕が…」


「今なら」


クレイルは素早くパンネルへ駆け出すとパンネルはすぐにそれに気付いて雷撃を放った。

それに対してクレイルは向かってくる雷撃の先にいるパンネルを目掛けてプリシラをやり投げの如く投げた。


プリシラが雷撃と接触すると雷撃がプリシラに引き寄せられて反転し、電気を纏うプリシラがパンネルに向かって飛んでいく。


「エクティビア」


クレイルはその状況を確認しつつ、魔法を発動させるとパンネルの頭上から水が流れ落ち、パンネルをずぶ濡れにした。

そこへ雷撃を帯びたプリシラが飛んできて、パンネルの胸へと突き刺さった瞬間にパンネルの身体に付着した水が弾け、パンネルの内部に大量の電流が流れ込んだ。


「ぐぅああぁぁ…」


パンネルに内包された電流がプリシラを伝い、逆流して一気に空気中に放電する。


著しくエネルギーが失われたことで機能不全を起こしたパンネルはガクッと床に跪く。


ネフィルは館の地下洞窟でタクリを追い詰めた。


「動くな!」


ネフィルはタクリの背中に銃を突き付けて言った。


「やはり追ってきか」


「よくやった、ネフィル」


声の方を見ると短髪で丸眼鏡を掛けた痩せた男がいた。


「大佐!?」


「少佐、銃を」


ネフィルはもう一丁の銃を投げ渡した。


「ありがとう、そして…」


グレンはそう言い、すぐに引き金を引いた。


「大佐…どうして…」


ネフィルは倒れた。


「お前がここに来るとは話が違うではないか、どうなって…」


グレンはタクリに銃口を向けた。


「おいおい、何の真似だ」


グレンは何も答えず、タクリの額を撃ち貫いた。


倒れたタクリに歩み寄るとタクリの手に握られた杖を奪い取る。


「主の元へと還れ」


杖の頭の部分が開き、光るものがひゅるりと出るとふわふわと何処かへ飛んでいった。




パンネルは憤慨していた。


「…玩具如きにぃぃぃもう遊びは終わりだ」


パンネルの身体から線が延び出ると葉のない木の幹に突き刺す。


「全て消してやる!」


木の枝先に電気を帯びた光の球が灯っていく。


パンネルは口を大きく開くと枝先に灯っている電気を帯びた光の球が集束していき、光の球体を造る。


電気を帯びた光の球が集まるにつれて光の球体の大きさが増していく。そして、更に先程、パンネルの体内から放電された空気中の電気も集まっていき、見る見るうちに巨大化していく。


「マズイ、こんな物を放たれてはこの館は疎か町ごと消えて…」


「喰らえ」


光の球体は一瞬で小さく収縮し、放たれた………。


そして、辺りは強い閃光で見えなくなる。




リベルとラズゥールは出口のない穴の底から脱出を図っていた。


「ラズゥールさん、どうやって此処から出ますか?落ちて来た穴は高すぎて力を使ってもとても…それに」


「あぁ、もう穴は閉じているだろうからな」


二人は真っ暗な縦穴を見上げる。


「他にも出口があるだろう」


「…理由を聞いても?」


「此処を造った時の出入り口があるだろう?」


ラズゥールはそう言って壁を調べ始めた。


『それだと落ちて来た穴が出入り口ってゆう可能性があると思うけど…』


そう思いながらリベルも床や壁を調べているとラズゥールが調べながら他の可能性を言う。


「あとあの蛇女が此処へ入ってきた入口もあるだろう?」


「あぁ、それもそうですね」


リベルは納得という風に呟くとラズゥールが何かを見つける。


「ここに脆そうな壁がある」


リベルはラズゥールのいるところに向かうと少し崩れかけた壁がある。


「どうやって崩すんですか?」


「まかせろ」


ラズゥールは剣で思いっきり壁を突いたが何も起きなかった。


「あの…ラズゥールさん…?」


ラズゥールが剣を収めた瞬間、壁が崩れた。


「何か言ったか?」


「いえ、何でもないです」


二人は崩れた壁に入ると一本の坑道の途中に出た。


「どちらに行きます?」


リベルがラズゥールに聞いた後に銃声が遠くで児玉した。


「こっちだ」


ラズゥールは右の方に走り、リベルもその後に続いた。


「どうしてこっちの方向だと?」


「耳は良い方だからな」


そして、また銃声が聞こえた。


「近い」


二人は急ぐと少し開けた場所に出た。そこはもう整えられた坑道ではなくごつごつとした岩肌が並ぶ洞窟だった。


その場所で二人は誰かが倒れているのを発見した。


「公爵はもう…少佐の方はどうですか?」


倒れていたのはタクリ公爵とネフィル少佐だった。


「脈が弱いがまだ息はある、早く治療を」


リベルは冥力を使い、治療を始めるとそこへ洞窟全体を揺るがす地響きが鳴り響いた。


「なんだこの振動は?」


その時、北部の町メルテクスのある館から閃光が走り、光が町全体を飲み込んだ。


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