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アフロネイロ〜霊廟殿〜
「近いぞ、フェイ」
「うん」
フェイがとある部屋の前に着くと向かいからレイナが来た。
「フェイ」
「貴方達も来てたようね」
「当たり前じゃ」
「オーブの気配が消えた!?急いで中へ入りましょ」
フェイとレイナは扉を開けて中へと入った。
中には全身 氷で下半身は蛇の様に長く上半身は女性の体をしている。
「あのガキ…」
グラスディーテは片腕を失っていた。
『んっ?ちょうどいい、あいつらを…』
グラスディーテは部屋に入ってきた少年、少女に目をつけると自らの後ろに氷の針が次々と作り、数十本程になると二人に向かって飛ばす。
グレネリスはすぐさま炎の壁をフェイ達の前に展開して氷の針を一瞬で昇華させる。
フェイはエレメンタルブレードを抜いて構えた。
「なんなんだあいつ?それにオーブはどこに?」
「この氷の召喚獣のせいで感知できないわ」
「ではこいつを倒さねばならぬということじゃな」
「相手が氷なら、炎斬!」
フェイはエレメンタルブレードに力を込めて振るい、朱い刃を放った。だが、炎斬はグラスディーテの目の前で掻き消える。
「炎斬が…」
グラスディーテは片手を天に翳す。すると手の中に塵のように小さな無数の氷が渦巻き、球体を作り上げていく。
「シルヴァーナ」
グラスディーテは手に渦巻く氷の球体シルヴァーナをフェイに向けて放った。
放たれたシルヴァーナは周囲に先端の鋭い氷の花が咲かせながら素早く向かっていく。
そんなシルヴァーナに対してグレネリスは再び炎の壁を作った。
「また同じことを芸がないわね」
シルヴァーナは炎の壁と接触した。その瞬間、炎の壁は一瞬で凍り付いた。
「我の炎を凍らせるだと…」
「まだ終わってないわよ」
グラスディーテは凍り付いた炎の壁の間近まで来ており、グラスディーテは長い尻尾で凍り付いた炎の壁を叩き砕いた。
砕けた破片が壁の裏にいたフェイ達に襲い掛かった。
辺りは砕けた氷の粉塵に包まれた。
「やり過ぎちゃったわね」
粉塵が晴れるとまるでハリネズミのような氷の破片が突き刺さる半球状の水の膜があった。
「あら良かったわ、死体は美味しくないもの」
半球状の水の膜が氷の破片とともに塵となり消えた。
「危ない所じゃったな」
「本当に、力が落ちたんじゃなくて?」
「何をゆうか、この婆さんは」
「なっまだ数百年しか生きてないわよ」
「四捨五入したら我とさして変わるまい」
「あなた何処を四捨五入したのかしら?」
ミリアリスは鋭く冷たい声でグレネリスに言う。
「まぁまぁ、二人とも」
「レイナ、ありがとう」
「あっうん」
「茶番は済んだのかしら?」
「あぁ、どうしてわざわざ待っていたんだ」
「興味が湧いたのよ、この石と同じ力を感じるその二つの石に」
グラスディーテは自らの体内にある碧色の石を示す。
『あれは!疾風のオーブ!?何故…?だが、これで炎斬が消えたわけも納得が行く』
「もしかしてあれが三つ目の」
「そうじゃ、疾風のオーブ。だからこそ我等の力を。故に遠距離からの攻撃は意味がないぞ、フェイ」
「じゃあ、それなら…」
フェイはエレメンタルブレードの柄を握り直し、グラスディーテに向かって行く。そして、飛び掛かり真上から振り下ろす。
それに対してグラスディーテは掌で受け止めた。
「そんな剣ごときで私に傷つけることなど…」
グラスディーテの掌に亀裂が入る。
「くっ…」
「炎斬」
フェイはエレメンタルブレードを受け止められた状態から炎斬を放つとグラスディーテの拳の亀裂が広がり腕にまで達した。
「もう少し…」
フェイは力を込めてエレメンタルブレードを振り抜く。するとグラスディーテの腕は砕けた。
グラスディーテは苦痛の叫び声を上げ、フェイを尻尾で弾いた。
フェイは咄嗟にエレメンタルブレードで防御したが空中だったこともあってそのまま飛ばされた。
だが、フェイは上手く体勢を変えて壁へと着地して地面に降りた。
「私の腕を…これ以上は無理ね…」
グラスディーテのいる地面に魔法陣がコンパスで円を描くように現れた。
「この借りは今度返す…」
青白い光の粒が魔法陣から湧くように浮き上がりグラスディーテも粒となり消えた。
「まっ待て!オーブを…」
「何者だったのじゃ」
「ヴァルキリアなんじゃ」
「ん…それはなんとも言えんな」
「誰にしろ、奪われたことには変わりありませんわ」
「これでまた行方が分からなくなった」
「せっかく見つけたのに」
話していると何やら部屋の外が騒がしくなってきた。
「何だか廊下から声が聞こえるけど」
「避難して来た人達じゃろうな」
アフロネイロは避難して来た人達で溢れかえっている。




