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Shining Heart  作者: 201Z
34/71

8−2


アフロネイロ〜癒雨凪〜


ベッドだけの殺風景な部屋、その中にはベッドに眠るフェイとその傍でフェイを看るレイナがいた。


「ここは何処?」


「怪我人を治療するための部屋のようだな」


「でもベッドだけで他に何もないけど?」


「それはだね ここ天上界ソフェルでは治癒に特化した能力を持つ者がいるからだよ」


部屋にレイナやフェイと同じくらいの年頃の一人の少年が入ってきた。


「僕はマレ、樹木を操る天力を持っていて、ここの部屋を任されている者だよ」


寝癖のような癖のついた頭を掻きながら言う。


「そして、ファーレス様の弟子だ」


マレと同じ顔立ちの少年が入ってきた。


「レク、どうしてここに?」


「この部屋を任されてるのはマレだけじゃないぜ。この俺様もいることを忘れては困るな」


レクは直毛の髪を耳に掛け、眼鏡の位置を正す。


「さてと…でっその人?怪我人?」


「…はい…」


「大丈夫よ、危害を加えるつもりはないみたい」


ミリアリスはレイナだけに聞こえるように言った。


「これはひでぇな服がぼろぼろだ」


「まず、服を脱がして怪我の具合を見よう」


レクとマレは服を脱がす…その行為にレイナは目を背ける。


フェイの身体には何処にも外傷が見られなかった。


「表層は問題ないな」


レクとマレはフェイの身体に手をかざした。


「内部も…!傷ついた細胞を自己修復している」


「面白いなぁ地上の人間は皆そうなのか?」


「僕に聞かれてもな」


「あの…フェイの容体は?」


レイナは明後日の方を見ながら訊ねる。


「案ずることはないお嬢さん」


レクはマレと話している時とは全く表情を変え、笑顔で答える。


「またレクの悪い癖が…」


マレはため息をついた。


「俺にまかせな、時にお嬢さんお名前は?」


「レイナですけど…」


「レイナちゃんかいいねぇ〜」


「あっ!やっと見つけたぁ!」


明るい声が響き、白い長い髪を揺らしながら少女が入ってきた。


「またうるっさいのがきたな…」


レクは鬱陶しそうな表情をする。


「もうまたこんな所で油売って師匠が不在だってゆうのに」


「不在だから此処に来てんだよ…」


レクは聞こえるか聞こえないかというような声で呟く。


「何か言った?」


少女は鋭い視線をレクに向ける。そんな少女にマレは聞く。


「フィーナ、今日はどうしたの?」


「リネルト様があたしとレクを御呼びなのよ。ほら、行くよレク」


フィーナはレクの腕をがっしりと掴んで引っ張る。


「ちょっ何すんだよ!」


レクは抵抗するがフィーナの拘束から抜け出すことが出来ない。


「ほらほら抵抗しない」


レクはフィーナに連れていかれた。


「僕もファーレス様に呼ばれているから行かないとな」


「あの……ありがとうございました」


「礼なんていいよ、何もしてないしね」


マレも部屋から出て行った。


「……ここは?」


フェイが目を覚ました。


「天上界じゃ」


「あれ?服が」


フェイは上半身、裸であることに気付いた。


「治療の為にちょっとね」


レイナは背を向けながら答える。


「レイナが?」


「ううん、天上界の人がね」


フェイはベッドの上に用意されていた清潔な服を着て、ベッドから降りた。


「身体、大丈夫?」


「全然 大丈夫 なんか身体が軽いよ」


フェイはその場で軽く跳びはねた後、エレメンタルブレードを振り回していると部屋の入口から声が聞こえた。


「大丈夫そうね」


部屋の入口を見るとクロノスがいた。


「…どうして僕たちはここに?」


「それはたぶんそのオーブがあるからだと思うわ」


「じゃあ、どうしてサウザンド号の皆まで?」


「それは私もわからないわ」


「皆は何処にいるんですか?」


「ベルグトに行っているって聞いてるけど」


「ベルグト?」


「天上界の人が住む街の一つよ、あっそうだ付いてきて」


クロノス、フェイ、レイナの三人は部屋から出た。




アフロネイロ〜光瞬華篭〜


フィーナは光の賢者であるリネルトの部屋、光瞬華篭の扉をノックした。


「フィーナ・フィング、レク・アンガード御呼びにより参りました」


「どうぞ」


中から入室を許可するリネルトの声が聞こえ、フィーナは扉を開ける。


フィーナとレクの二人は部屋の中に入った。


「さぁ、二人とも座って」


リネルトは椅子へ座るよう促し、二人が座るのを待つ。


「なんの用で呼んだんだ…」


レクは椅子に座るなり聞くと隣のフィーナから肘打ちが放たれる。


「…ですか?」


「いつもの調子で構わないですよ」


リネルトは笑みを見せる。


「さて、何から話していいのか…」


「何があったんですか?」


「………率直に言う氷水の賢者アビスが闇に落ち、堕天使となった」


「そんなアビス様が………」


「んな、馬鹿な!どうして師匠が」


レクは信じられないという風に席を立ち上がる。


「そして、その事により後任賢者を決めることとなった」


「ちょっと待って下さい、急にそんなことを言われても突然のことで私達、心の整理が…」


「それもそうでしょう。では夕刻にフィーナ、レクの両名は氷水の賢者の部屋、絶対氷壁へ」


「勝手にそんなこと!俺は行かないからな」


そういい放ち、レクは光瞬華篭から飛び出して行った。


「ちょっとレク!すいません、失礼します」


フィーナはリネルトに頭を下げてからレクの後を追うように出て行った。


「もう少し柔らかい言い回しをされた方が良いですよ」


部屋の中に聞こえた声にリネルトは返す。


「マルカナ、いいんだよあれで(これは彼等が決めなければいけないこと、僕も通った道)」


アフロネイロ〜樹海深緑〜


樹木が生い茂る部屋の中にいる二人の人物、一人は蔓が絡み合う椅子に座り、もう一人の話を聞くファーレス、もう一人はファーレスの前に立ち、報告をするマレ。


「…それで」


「間違いありません」


「そうか」


「それとあれは異質な存在で過去のものと照合した結果、合うものが一件」


マレはファーレスに資料を渡した。


「実に興味深い結果だな」


「はい」


「誰だ!?」


ファーレスは誰かの気配を感じ言った。すると仮面を付けた男が現れた。


「ふっ奴の命令か」


「詳しい話を聞かせていただきますよ」


「ちょうどいい、あれの力を試させてもらおうぞ」


アフロネイロ〜業炎凰火〜


フェルセルクは開いた扉をノックする。


「フェルセルク…まぁ掛けろ」


部屋の中で佇んでいたオルカスは椅子に座るよう促す。


フェルセルクは言われた通りに椅子へ座った。


「元気そうだな」


「はい…あのこれを」


フェルセルクは赤く輝く宝石、火のエレメントを長机の上に置く。


「もう、いいのか?」


「はい、いかような罰でも謹んで受けます」


「そうか、では…」


そこでアフロネイロ全体に大きな振動が走った。


「なんだ、この振動は!?まさか」


火のエレメントが強い光を放つ。




アフロネイロ〜歓楽の泉〜


「師匠が堕ちるなんて…」


レクは噴水の淵に座り俯いていて、フィーナはその様子を見て、柱の陰で話し掛けられずにいる。


『レク…』


「どうした?レク、そんな暗い顔をして」


噴水の反対側から声がした。


レクは立ち上がり、その方向を見ると黒装を纏ったアビスが居た。


「師匠!?どうして」


「何がだ?」


「どうして堕天使に!?」


「私は堕天使になったつもりはない、ただ私は友を救うためにしたことだ。そして、今も友の為にここへ来た。氷のエレメントは動かしていないな?」


「氷のエレメントで何を?」


「全てのエレメントを回収し、この世界を崩壊へ誘う」


「………」


レクはアビスの言に言葉を失う。


「お前も来るか?一緒にこの世界が消える様を楽しもう」


「貴方には冷徹な言葉の中にも凍りつかないほどの温かさがあった…もう俺が知っている師匠ではないんですね……」


「温かさ?俺の知る師匠はいない?何も見ていないようだな私を、お前には失望した」


アビスは肩を落とし、落胆する。


「フィーナ、そこにいるな」


「はっはい」


フィーナは突然、名前を呼ばれて思わず、返事をしてしまい、柱の陰から出る。


「お前はどうする?」


「私は…」


「答える必要ない!俺が…俺がここでこの命に換えても師匠を止める!」


レクの手を覆うように冷気を放つ三つの鉤爪状の武器が現れる。


「出来の悪い弟子に仕置きが必要だな…」


アビスもアイシクルソードを出した。

二人が武器を構えると噴水の水はみるみるうちに凍り付いた。


アビスはアイシクルソードを一降りすると噴水は砕け散り、レクは飛んで来る噴水の破片を武器で掻き切る。


アビスはその瞬間にレクの背後へ回る。


レクはそれに気付き、振り返るが振り向き様にアビスに殴り飛ばされた。


レクは地面に鉤爪を突き立て、飛ばされた勢いを抑えるとすぐさま鉤爪で空を斬る。


「マーテルフロー」


鉤爪から三日月状の刃が現れ、アビスに向かって行くが目の前で粒となり消えてしまった。


「どうして消えて…」


「忘れたか、この剣は同属性を吸収する」


「………」


地面が大きな振動し始めた。


「この振動はなんだ」


「始まったな」


「じゃあ、氷のエレメントを」


「これでこの世界は消え行く、最後に師匠から弟子への贈り物だ」


アビスはアイシクルソードで数回、空を斬るとアビスの背後に巨大な魔法陣が現れた。

そこから氷の怪物グラスディーテが出て来た。その姿は全身氷で下半身は蛇の様に長く上半身は女性の体をしている。


「やっぱり外の世界はいいねぇ、ちょうど食事にもありつけそうだしね」


氷の怪物グラスディーテはレクとフィーナを物欲しげに見る。



『このフロストネイルじゃ、効果が得られそうにない…』


レクは手を覆う冷気を放つ三つの鉤爪状の武器を動かす。


「食事の前に遊んであげるわ」


グラスディーテは勢い良く息を吹くと周囲に氷柱が立ち、その氷柱は延びてレクに向かって延びてきたそれを避けようとしたが手足を拘束された。


『どうしよう、何とかしないとでも…』


フィーナはそう思い、アビスを見る。


「さて、ここが崩壊するまでどう遊んであげようかしらね…ふふふ…」


グラスディーテは笑みを浮かべ、舌舐めずりする。


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