8−1
天上界〜ソフェル〜
光が収まり、全員が瞳を開くとそこには球体を内側から見たような所に街や森、湖があり、宙心には上下左右対象な建造物がある。
「なっ!なんだここは…」
グラハムは奇天烈な場所に驚きの声を上げる。
「あそこに向かえ」
リネルトは宙心の建造物を指差し、舵を握るグラハムに言う。
グラハムはその高圧的な言い方に憤りを感じてすぐに言い返す。
「なんだって!これは私の船だ、行き先は私が決める」
「グラハム船長、あの方の言う通りにして頂けませんか?」
クロノスがじ〜っと目を見つめてお願いするので了承して宙心の建造物に向かった。
「何処にも入口がないが?」
「そのまま進めばいい」
グラハムは言われるままに船を進めた。
船首が建造物の外壁に触れると波紋が広がる。
「舵が勝手に!」
誘導されるように船は壁の中へと入って行く。
建造物の内部に入ると通路があり、真っ直ぐ続く通路の途中で上下左右に分かれる通路が現れ、その中心で船は停止した。
「この船に乗船している者は全員、此処で下船してもらう、無論拒否は認められん」
ラファエロは全員に聞こえる声で宣言する。
「なんだって!いきなり来て何の説明もなしこんなとこに連れてこら…」
話の途中でグラハムの姿は消えた。
「エロじじい何を!」
「ラファエロじゃ!心配しなくても危害を加えるつもりはない」
グラハムが消えた後、船内に居た全ての者達も消える。そして、甲板にいるラファエロ達五人も消えた。
天上界アフロネイロ〜霊廟殿〜
アフロネイロの霊廟殿には、テンペルトとオルカスが待っていた。そこへ、ラファエロ達五人が現れた。
『フェルセルク…』
「…」
オルカスとフェルセルクは互いに目を伏せる。
「この事で召集したの?ファーレスとアビスがまだのようだけど…」
そこへファーレスが入ってきた。
「遅れてすまない」
「これで全員、揃ったようじゃな」
ラファエロはファーレスが席に着くのを見届けた後に言った。
「アビスがまだのようだが?」
ファーレスは顔触れを見回し言う。
「そのことについては今から話す」
「アビスに何か起きたの?」
テンペルトの問いにラファエロは答える。
「アビスは闇へと堕ちた」
「闇に堕ちたとは…まさか、帝王の手に」
「賢者から堕天使が出るとは嘆かわしいことですわね」
「まだそうと決まったわけではありません!」
テンペルトの言葉に堪らずフェイクが発言する。
「貴方は何者?ソフェル人でない者が口出しをしないで貰えるかしら?」
テンペルトは三つ巴の瞳でフェイクを睨み付ける。そんなテンペルトにリネルトは言う。
「彼は歴としたソフェル人ですよ。それに賢者全員との面識ありますよ」
「私はそんな者、知らないわ」
賢者達は口々にそのようなことを言った。
「彼は…闇の賢者ドラクマ」
リネルトが名前を発した瞬間、沈黙が流れファーレスが鼻で笑い言った。
「ふっ何を言っているリネルト、我々が知っている者とは全く違うではないか。それに彼はもう生きてはいないはずだ」
「そうですわ」
「僕にはわかるんですよ、光を司る僕には微量の闇の気配でも感じとることができる。この気配は間違いなくドラクマです」
「どうなんだね?」
ファーレスはフェイクに向かって言った。
「…」
フェイクは何も言わなかった。
「何か言ったらどうだね!」
そこへフェルセルクが割ってはいった。
「…私の処分はどうなるんでしょうか?」
「処分?」
有らぬ所からの声にファーレスは視線をフェルセルクに移す。
「そんなものは端から決まっている…」
「それに附いて提案なんじゃが」
ファーレスが処置を述べようとしていた所にラファエロが意見する。
「師であるオルカスに一任してはどうじゃろうか?」
「それでは厳然たる処罰は行えないわ、彼の犯した罪はこの世界を脅かすほどのことなのよ」
「私とてそんなことは承知している。師である故に公私混同はしない」
「それなら構わないけど」
「僕も構いませんよ」
「いいんじゃないか、それで」
ファーレスは不満気に言う。
「ではこれで解散としようじゃないか」
「ラファエロ、まだドラクマの件が片付いてないのに解散とはどういうことだ」
ファーレスは円卓に力強く拳を叩きつけてラファエロに言う。
「それはまた後日でもよかろう」
「何を悠長なことを言っている!掟では追放者はこの地を踏んではいけない事になっている」
「掟ではそうなっていますが、アビスの事もあります。すぐに追い出すのは得策ではないと考えますが」
「それは彼が本当にドラクマであった場合じゃ、それに不用意にこのアフロネイロから出すことはない」
ファーレスは何も言わず、険しい顔をして退席した。その後、テンペルトも退席した。
「フェルセルク、私の部屋へ来い」
オルカスはそう言い残して退席した。
「レイファ、フェイクを天壁鐘楼へその後は彼等の様子を見てくるといい」
「ありがとうございます」
クロノスはフェイクを連れて立ち去った。
「では、私は師匠の元へ」
フェルセルクも立ち去り、ラファエロとリネルトの二人だけになった。
「気付かれましたか?」
「あぁ、ファーレスの奴様子が変じゃったな」
「ファーレスだけじゃなくテンペルトもです、それぞれの賢証に揺らぎが出始めている」
霊廟殿のそれぞれの席には属性を象ったレリーフが七つ有り、氷水と暗黒の二つが消えており、雷電と樹木の二つが揺らいでいる。
「うむ…わしの方で少し調べさせてみる」
「僕はアビスの弟子達に事の次第を話します、賢者の後任のこともありますから」
「彼等にはまだ早い気がするがな」
「大丈夫ですよ、僕も彼等と同じ頃に賢者の任に就きましたから」
「…確かにそうじゃが(お前とは資質が違いすぎると思うがな)」
「心配いりませんよ、エレメントがきっと導いてくれます」
「そうじゃな…」
アフロネイロ〜格子角〜
「ここはどこなんだ」
グラハム、ラスティン、船員達は扉や窓が全くない箱のような白い部屋にいた。
「見たところ全く出入り口のようなものはないですね」
「まったくびっくりしたわ、気づくとこんな所にいるんだから」
「ほんとに驚いたぜ」
「そうだる」
「お前等、まだ居たんだな」
グラハムは騒がしい三人組に向けていう。
「失礼ね、あんた達が牢にいれたんでしょうが」
「色々あったんで忘れてたよ」
「名高き私達のことを忘れてたですってぇ〜!じゃあ もう一度だけ聞かせてあげるわ いくわよ」
「誰も聞きたいとは言ってないんだが」
グラハムは呆れたように呟く。
三人はポーズを取り、言い始めた。
「この世にまだ見ぬ秘宝が有る限り」
「宝が俺らを呼んでいるぜ」
「……だる」
「三人揃ってロ…」
一番いいところでラスティンの声に遮られた。
「…っそういえばフェイ君達の姿が見えないですが」
グラハムは周囲を見回した。
『どうしてあいつらはいないんだ…』
グラハムは疑問に思い考えを巡らせた。
「くぅのぉぉぉ〜」
ロゼは決め台詞を邪魔され、尚且つ存在を蔑ろにされたことに怒り、腰にあるナイフに手を掛けるが透かさず、クックとスリックが止めた。
「落ち着いてロゼ姉」
「そうだる」
「止めるんじゃないよぉ」
「ここで向かっても数的に不利ですぜ、俺に考えがあります」
「かんがえ?」
ロゼはナイフから手を放し、落ち着いてもう一度聞いた。
「考えってなんだい?」
「ちょっこら耳を貸してください」
クックはロゼの耳元で何かを言った。
「なるほどね」
ロゼはクックの話に納得する。
『見てなさいさっきの屈辱、倍にして返してやるわ』
ロゼはそう思いながらグラハムを睨む。
一方、グラハムは…
「まさか、オーブが狙いか?だったら早く此処を出ないと…皆で出れそうな所を探すわよ」
ロリック団以外の皆は格子角内部を調べ始めた。
アフロネイロ〜回廊〜
クロノスはフェイクを連れ立って回廊を歩く。
「何処も昔と変わらないな…君は僕がドラクマだと信じるかい?」
フェイクは回廊内を見回しながらクロノスに訊ねる。
「わかりません…でも地上に居る天使ケルンに話は聞きました。詳しくは言いませんでしたが」
「そういえば彼女は助かったようでなにより、それに精霊との契約を無事済ませたようだしね」
「カードにも書かれていましたが、今一度伺います。何故彼等に構うのですか?」
「彼等への試練、私…帝王を倒す為の(それに彼は…)」
二人は天壁鐘楼に着き、クロノスが扉を開けるとフェイクを中へ促す。
「天壁鐘楼…(鳴り響く鐘の音が罪を浄化する。今の私にはお似合いの場所だな)」
「では、私はこれで失礼します」
「確かこれから彼等に会いに行くんだよね?では彼にこれを」
フェイクはクロノスに何かを渡した。
「これは?」
「渡せば分かるよ」
クロノスは天壁鐘楼の扉を閉めると扉に魔法陣が現れ、鍵がしまった。




