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Shining Heart  作者: 201Z
32/71

7−6


クロノスが瞼を開けると目の前に白いローブを身に纏った一人の男の背中があった。


『あの人、フラビナルで会った』


フェイは近くに突き刺さるエレメンタルブレードを掴み、全身の痛みに耐えながら支えにして立ち上がる。


「やれやれ全く世話が焼ける…」


男はアビスに視線を向けながら言う。


「兄さん!?」


「オルカスの元弟子か、私の氷槍を盗んだ火のエレメントで防いだか」


「兄さん、どうして!?」


「理由あってお前達を監視してたんだ」


「(火のエレメント…厄介なものを)邪魔が入ったが一緒に消えて貰うことにしよう」


「やめるんだ、アビス」


アビスの後ろから聞こえ、アビスは振り向いた。そこにはフェイクがたっていた。


「ど、どうしてここに…」


アビスの顔に動揺が広がる。


「君を止めに来たんだ」


「止めに…?私は君に…」


アビスは何故か混乱していた。


『どうゆうことなんだ?偽物?いや、だがこの感じはたしかに…』


「落ち着けよ、君らしくないぞ、アビス」


「惑わされるな!我が友、アビス。そいつは偽物」


アビスの真横から声が聞こえた。


そこには裂けた空間に暗闇が存在した。その中からフードを被り、仮面を着けた男が出て来た。


「珍しい、直々にこんなところに出てくるとはドラクマ…いや…ヴァルキリア」


ヴァルキリアはフードを取った。


「あれがヴァルキリア…」


「そうだ」


クロノスの呟きに白いローブの男は答える。


「アビス、あれに惑わされるな。あんな者まやかしに過ぎない」


「だが、同じ気配を感じる…」


「ではあれが持っていない闇の賢者たる証を見せてやろう」


ディーテハウロ内の光が徐々に失われ、闇に染まって行く。


『これは…まずい』


フェイクはカードの束を取り出し、ヴァルキリアに向かって投げた。

カードの束はヴァルキリアの寸前で何かに弾かれ、ディーテハウロ内全体に散らばった。


「相も変わらず無駄な足掻きをそんな攻撃が通用するとでも思っているのか?」


「…」


ヴァルキリア以外の頭上に散らばったカードが浮いている。


「まぁなんであろうと力を失ったお前なんぞ造作もない」


ディーテハウロ内は闇で満ちた。だがその闇の中で光るものがある。それはフェイクのカードだった。


「これはさっきのカードか」


カードを軸に闇を切り裂くように光の柱が現れ、天に向かうようにのびる。


「光神楽」


「…」


「忘れてもらっては困るよ、闇と光は表裏一体、お互いの関係のようにこれでその力も効果を果たさない」


「ふん、その程度で…」


突然、アビスとリーシュの頭上の光神楽が闇に侵蝕され、二人もろとも闇に消えた。


「何を驚くことがある、光と闇は表裏一体なのだろう?心が闇に染まり逝く者にとっては光すら闇に呑まれる…」


ヴァルキリアはそう言い、暗闇に消えて行った。

ヴァルキリアが消えた後にディーテハウロ内に満ちていた闇と光神楽は消え、元の空間に戻る。


「くっ…(奴の力が戻りつつあるか)」


「フェイク」


といいフェルセルクはフェイクに近付いた、その時、地面に円形の輪が現れ、光が溢れる。そこに顎に白い髭を蓄えた老翁、ラファエロと瞳の光彩の色が希薄な盲目の少年、リネルトの姿が現れて輪の中から出てきた。


「事の次第は見させてもらった。アビスの処遇はわしらが行う…それとフェルセルクと…」


ラファエロは白いローブを身に纏った男を見た後、フェイクに視線を向けるとリネルトは言う。


「貴方にも聞きたいことがあります、天上界までご同行願います」


「イヤと行ってもこの空間からは逃げれそうにないな」


フェイクは周囲の気配を感じつつ、両手を挙げてお手上げする。


「えぇ、お気づきの様に」


「私達はどうすれば?」


クロノスがラファエロに訊ねる。


「一緒に来てもらう、無論、上にいる者達にもな」


「上?」


ディーテハウロ内が少し暗くなり、クロノスは塔の上、吹き抜きを見上げる。


「あれは船?…サウザンド号!船が浮いている」


「ここにいる者達をあの船に飛ばすぞ、ディスケープ」


ラファエロは杖を掲げると杖の石が光り、ディーテハウロ内に居た、全員が消えた。


サウザンド号〜甲板〜


「フェイ達は何処にいるだ」


グラハムは船を動かしながらそう言っていると甲板上にフェイ達が現れ、グラハムは突然のことで驚いて操舵から手を放しそうになった。


「都を元の姿に戻します」


リネルトは甲板に着くなりそう言い、天に片手を突き上げた。すると日の光から光の粒が都に降り注いだ。

光の粒は都中の物や人を覆っていた氷に溶け込むと氷にヒビが入り、粉々に砕け散る。

粉々になった氷は大気中を舞い上がり、キラキラと輝いている。


「都の方はこれで大丈夫でしょう」


「フェイ、大丈夫?」


レイナはアビスの闘いで怪我をした様子のフェイを心配する。


「平気だよ…でもこれからどうなるんだ」


「この船ごと天上界に運ぶつもりだと思うわ」


「この船ごとだって?そんな…」


フェイはあることに気付いた。


「リーシュは何処に?」


「それは…」


レイナが言おうとした時、フェイクが謝ってきた。


「すまない、私のせいでヴァルキリアに連れてかれてしまった」


「どうしてあなたが…」


フェイはフェイクに敵意を向ける。


「やめてフェイ、この人は私達を助けてくれたのに」


「でも、こいつは…(あれ?どうして俺はこいつにこんなにも怒りを?)」


フェイは自分の中に渦巻く感情に疑問を抱く。


「いい加減にしろ!君にフェイクの何が分かるんだ!この人はな…」


「フェルセルク!」


そこでフェイクは白いローブを身に纏った男の言葉を制した。


「すいません」


「兄さん…」


『リーシュ…絶対助けてやるから…な…』


フェイは心に誓い、その場で倒れそうになる所をレイナが支えた。そして、フェイの腕を肩に掛け、船内に入っていった。


「そろそろ、向かっても良いか?」


「えぇ、向かいましょう(いつ以来か…天上ソフェル)」


「リネルト」


「いつでもどうぞ」


『全く話の流れがわからんがあいつら何をする気だ?』


グラハムはそう思いながら様子を伺っている。


ラファエロは何やら呪文を唱え始めた。

すると船、前方が揺らめき法陣が走り、船体は淡い光で包まれた。


「エンディミオ・トール」


ラファエロはそう言い放つと強く光り、船に居た全ての者が瞳を閉じた。


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