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Shining Heart  作者: 201Z
19/71

5−3


使用人の後についてフェイ達は廊下を歩く。


「貴女はここには長くいるんですか?」


「えぇ、十年程になります」


「長いっすね」


「ここで働いているのは貴女だけなの?」


「はい、屋敷の全てを任されております」


「一人この大きな屋敷をっすか!」


「はい」


「一つ聞いてもいいですか?」


「なんでしょう?」


「どうして屋敷の外へ出てはいけないですか?」


「申し訳ございません、私の口から申し上げることはできません、直接ゲルヴ様にお聞きになって下さい…」


そこで食事を行う、広間に着いた。

使用人は扉を開け、フェイ達三人を中へと促す。


「すごいっすね」


広間には長机いっぱいに並べ料理がある。


「これも貴女が一人で?」


「はい、どうぞ御席へとお座り下さい」


「ゲルヴっていう人いないね」


「ゲルヴ様はいつも自室でお食べになりますので」


「そうなんっすか」


「それではごゆっくり」


フェイ達は席に着き、食事を取った。


「はぁ〜食った食ったぁ〜お腹いっぱいっす」


「食い過ぎたな」


「うん、凄く美味しいかったからね」


「さてと腹も膨れたし屋敷の散策といこうか」


フェイ達は広間を出て廊下を歩いていると少し開いた扉の隙間から光が漏れている部屋があった。

三人はその部屋の近くまで行くと中から話し声が聞こえてきた。


誰かと会話しているようだが相手の声は聞こえず、独り言のように聞こえる。


扉の隙間から部屋の中を覗くとそこにはゲルヴの姿があった。


「事は順調に進んでいます」


「………」


「あの三人は明日直ぐにでも出て行きますのでご安心下さい」


「………」


「はい、全てはヴァルキリア様の為に」


『ヴァルキリア!?』


「どうやら奴の支配下のものらしいな」


「どうするんっすか?」


「気付かれないうちに部屋へ戻ろう」


フェイの言葉にレイナはそっと後ずさる。すると廊下にあった台座にぶつかった。


台座に乗せてある壺がグラグラと揺れて地面に落ちて砕ける音を響かせる。


「誰だ!」


ゲルヴは部屋の扉を勢いよく開け放ち、廊下を睨むとそこには割れた壺が地面に散乱している。


「奴ら」


「………」


「後はこちらで処理します」


フェイ達は部屋へと着いた。


「何の目的でこの町を」


「まずはこの建物から出た方がよかろう」


「そうだね、立ち聞きしていたのがバレただろうし」


「ごめんね」


「大丈夫、気にするなって」


「誰か来るみたいっすよ」


「みんな隠れろ」


三人はそれぞれ別々の場所に隠れた。


そこへゲルヴが扉を勢いよく開けると部屋の中を睨み、部屋へと踏み入る。


「ちっいないか…まだ外へは出てないようだが」


使用人が現れ、部屋に入ってきた。


「ゲルヴ様、どうなさったんですか?」


「奴らが逃げたお前も早く捜せ!見つけたらわかっているな…」


「はい」


ゲルヴは部屋から出て行った。


「いるのは分かっています」


「…」


「仕方がないですね」


使用人はポケットから懐中時計を取り出しつまみを捻る。

時計の文字盤が光り、使用人の背中に純白の羽根が現れ、衣服も変容する。


「天使クロノスが命じる隠されし者をあらわし給え」


部屋にあった家具は消え、隠れていたフェイ達は露になった。


「何が起きたの!?」


「分からないけど見つかったのは確かだ」


リーシュはボーガンを取り出し構えた。


「警戒は不要、危害を加えるつもりはありません」


「貴女は一体…?」


「コイツはクロノスじゃ」


「知ってるの?グレネリス」


「グレネリス?グレネリスってあのグレネリス?久し振りね、いつ振り」


「ひよっこ天使がこんな所でなにをしてるんじゃ?」


「なっ!失礼なもう立派な天使になってます!」


「ほう、それで?」


「私はこの町に異変が起きてるから調査として送られたの」


「そうゆうことでしたか」


声の方をみるとゲルヴが居た。


「ゲルヴ!どうして?」


「私が気付いてないとでも?ずっと監視はしていたのですよ」


「なんですって!……なんてねそんなこと百も承知よ」


「だったらこれもご存知かな、天使殿」


ゲルヴは部屋の壁にある燭台を下に引いた。すると四人を囲むように格子が降り閉じ込められた。


「これじゃ何処にもいけない」


「大丈夫」


クロノスはフェイ達に小声で言い、続けて呟くように呪文を唱えると床に魔法陣が広がった。


「ここは私に任せて早く逃げるのよ、あと青い炎には気をつけて」


「ちょっ…」


フェイは言葉を発しようとしたが身体が浮き上がり、部屋からフェイ、リーシュ、レイナの三人の姿が消えた。


「これでよしっと」


「余計な真似を」


三人を追いかけようと振り返るゲルヴをクロノスが呼び止める。


「待ちなさいよ、私を置いてどこへいくつもり?」


「お前の相手はそいつだ」


床から六体の鎧が浮き上がるように出てきた。


「こんなの直ぐに」


クロノスは呪文を唱えたが何も起こらなかった。


「どうして?」


「そんなことは自分で考えるんだな」


ゲルヴはそう言い残し、立ち去って行った。


「いてて…ここは?」


「屋敷の外みたいっすよ」


「まったく急なんだから」


「君達…いい加減どいてくれないか」


三人は白いローブを身に付けた男の上に重なる様に覆い被さっており、三人は急いで立ち上がり謝った。


「あの貴方は?」


「聞いてないのか?アイツまさか何も説明せずに転移させたのか?」


「アイツってクロノスさんのことですか?」


「そうそう、俺が町の外へ案内する手筈なんだ」


「そうなんっすか」


四人は町の外へ向かう為に動き始めた。


「名前はまだだったな、そうだな…」


白いローブの男は少し考え込み、名前を言う。


「俺の名はキューレ」


町の中は真っ暗でその暗闇を青い炎がいくつも漂っている。


「あれはなんっすか」


「魂だよ、囚われのね」


「囚われ?」


「そう、魂だけを仮の肉体に入れて動いている人形を囚われと言わずになんというのか、俺は聞きたいね」


「それはどういう?」


「それはっと…」


キューレは三人の動きを手で制して建物の陰からこれから移動する先を覗き込む。


「…全く足止めも碌に出来ないのか…」


そこには青い炎を引き連れたゲルヴがいた。


「奴らを捜せ!まだ近くにいるはずだ」


その時、隠れている四人の背後がぼんやりと明るくなる。


そこには青い炎が漂っていた。


「きゃっ」


青い炎の中には無数の骸が何か訴えるような姿が見える。


フェイは咄嗟にエレメンタルブレードで振り払うと青い炎は距離を置くようにゆらゆらと後退る。


「そんな所にいたか」


ゲルヴが四人の隠れる場所に視線を向ける。


「ここは俺に任せて君達は先に行きな」


「でも…」


「いいから」


キューレは手で空を払い除けるように動かす。


三人は背後の青い炎を避けて近くの細い路地に入る。


「出てきたらどうだ?」


キューレは建物の陰から歩み出る。


「これはこれはどうしてここに?」


「こっちもこっちの理由で動いていてね。あの子達のことは後はこっちでやるから例の件を進めてくれ」


キューレはゲルヴと親しげに話す。


「あとあれを借りるよ」


青い炎を指差し言った。


「分かりました」


ゲルヴはすんなり立ち去った。


「どこへ行っても青い炎がいるっす」


「これじゃどうやって町の外へ行けば」


「ねぇ あそこに人が居るわ」


「あの人は…」


「スチュアートさんっす」


スチュアートは青い炎に囲まれていた。


「助けなきゃ」


フェイはエレメンタルブレードで青い炎を払い退ける。


「大丈夫ですか?」


「……あぁ、すまないな」


払い退けられた青い炎は自らを燃やすかのように勢いを増す。そこへ他の青い炎達が集まり、炎が膨れ上がっていく。


そして、地面が盛り上がり、骨の手が突き出した。


青い炎が地面から突き出した骨の手に燃え移ると骨の手は地面に手を突き立て、地面から虚ろな目に青い炎を宿した髑髏が姿を露わす。


青い炎を纏う骸骨(フィアスカル)は両手を地面に突き、地面から這い出る。


フィアスカルは骨で出来た車輪のようなものを両手に構えて襲い掛かって来た。


回転させながら振り下ろされる骨の車輪をフェイはすぐさまエレメンタルブレードの刃で弾くと骸の車輪の一部分に紅い火が燈った。


「ここは任せて二人はスチュアートさん連れて町の外へ」


「わかったっす」


「さぁ、スチュアートさん」


二人はスチュアートを連れて町の外へと向かった。


「さっさと決めるぞ、グレネリス」


エレメンタルブレードとオーブが輝き、剣が双剣へと変化した。


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