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Shining Heart  作者: 201Z
18/71

5−2


降りた先には放棄された坑道があり、埃と蜘蛛の糸の被ったトロッコが在った。


「これ、動くっすかね」


リーシュはトロッコを調べ始めた。


「どうだろうな」


フェイはそう言うと近くに在った机を見ると机の上には埃を被ったランプと筒状に巻かれた古ぼけた革があった。


「これは使えそうだ」


腕輪の炎を使い、ランプに火を点した。


「これはなにかな?」


筒状に巻かれた古ぼけた革を開くと坑道の地図らしきもの描かれている。


「二人ともこれを見て」


リーシュとレイナはフェイの広げる古ぼけた革に描かれた地図を見た。


「これ、この坑道の地図?」


「多分ね」


フェイは地図上のある部分に指を差した。


「ここにゼルゼ、そこにはシルスって書いてあるからね」


「じゃあ、そこにあるトロッコを使えばすぐに着くっすね」


「使えるの?」


「調べて見たけど問題なかったすよ」


「じゃあ、行こう」


フェイ達はトロッコに乗るとレバーを動かしてブレーキを外した。するとトロッコはゆっくりとレールを進み始めた。


トロッコは徐々にスピードを増していくとトロッコの前面にあるライトが光も増していき、前方の状況を照らし出す。


「なんか速くない?」


「これじゃあ、カーブが来た時に曲がれない。リーシュ少しブレーキをかけて」


「分かったっす」


リーシュはブレーキレバーを引くとトロッコのスピードは徐々に落ちていく。


「これなら大丈夫そうね」


突然、ガキンっと音が聴こえた。


「あっ…」


ブレーキをかけ続けているリーシュの方から聞こえた。


「リーシュ、今の音って……」


フェイとレイナはリーシュの方を見ると折れたブレーキレバーを持ったリーシュが苦笑いする。


「ははは、外れたっす」


気まずい雰囲気が流れる中、トロッコは徐々にスピードを増していく。


「どっどうするするすか」


「どうするってさっきちゃんと調べたんじゃないのか!?」


二人は言い合いを始めた。


「二人ともそんなこと言ってる場合じゃないよ!前!」


レイナが二人の間に割って入り、前を示す。


途切れたレールが遠くに見える。


「やばいっす」


フェイは何かを発見した。


「あそこにレールの切り替えレバーがある」


途切れたレールの近くに分岐点があり、切り替えレバーはその手前にあった。


「リーシュ!あれを何とかして狙えるか?」


「狙えるけど矢じゃ軽すぎてレバーを動かすまでの力はないっすよ」


「じゃあ、外れたレバーを飛ばすってことはできない?」


「できると思うけど狙いが定まるか…でもやってみるっすよ」


リーシュは外れたブレーキレバーをボーガンにセットし切り替えレバーに狙いを付けた。


『よし、もう少し…あと少し……今だ』


リーシュは速度と距離を計りながら狙いを定め放った…。


ブレーキレバーは回転しながら飛んでいき、見事切り替えレバーに当たった。


切り替えレバーは当たった衝撃で動いたが後少しで切り替わるというところで止まった。


「くそ!もうすぐ分岐点に着く」


その時、突然、坑道全体が振動し地震が起こった。


「くっこんなときに…」


三人はトロッコにしがみつく。


切り替えレバーは振動で徐々に元の位置へと動いていく。


「天井が崩れそうっす」


天井から岩が落ち、切り替えレバーに当たりギリギリの所でレールが切り替わった。

トロッコは無事、崖の底に落ちる事なく走って行くが後方からドドドンッという音が聴こえ、地震が止まる。


「ふぅ〜危なかったっすね」


「でも逆方向に来ちゃったな」


三人で地図を見た。


「本当ね。今、向かっている方向だとフラビナルって言うところに繋がってるみたい」


「しょうがないか、もう戻れそうもないし…」


フェイは後方を気にしながら言った。


「…まずはここから出る事を優先しよう」


「そうっすね」


三人が話をしているとトロッコのスピードが徐々に落ち始めた。そして、突然、急ブレーキが掛かる。


「どうしたんだろう?」


「今頃、ブレーキが利いたみたいっすね」


リーシュは急ブレーキでぶつけたのか頭を擦りながら言った。


三人はトロッコから降り、調べてみた。


「…ダメっすね、ブレーキがレールに食い込んでるっす」


レールの表面がささくれのように捲れ上がり、レールにただ押し当てるようなブレーキが捲れ上がったレールの隙間に潜り込んできっちりと噛み合うようになっている。


「確かにダメだね」


三人がトロッコの下を覗き込んでいると声が聞こえた。


「こんな所に人が来るとは珍しいな」


三人は声の方向を見ると光る石の付いた杖を持った老人がいた。


「何十年振りになるかのぉ〜さっきの大きな音はお前達か?」


「僕たちってゆうか坑道全体が揺れて天井が崩れたんです」


「そうか、しかしわしはそんな揺れは感じなかったがのぉ〜」


老人は顎を手で撫でながら首を傾げる。


「あの聞きたいことがあるんですけど」


「なんじゃ?」


「港町シルスに行きたいんですけど何処か行ける道を知りませんか?」


「シルス?聞かん町の名前じゃな…ここから近い町となるとフラビナルじゃがわしもそこに住んでおる」


『じゃあ、この地図は…ひとまず』


「リーシュ、レイナ」


フェイは二人に呼び掛けた。


「ひとまずフラビナルって町に行こうと思うんだけど」


「いいと思うっすよ」


「だって他に進めるとこもないみたいだしその町にいけばシルスに行く道が見つかるかもしれないものね」


「すいません、おじいさんフラビナルまで案内してもらってもいいですか?」


「構わんよ、こっちじゃついてきなさい」


老人は歩き始め、三人もその後に続いた。




暫くしてフェイ達、三人は町に着いた。


そこはドーム状にくり抜かれた場所で上の方に光り輝くものがあり、町全体を照らしている。


「坑道の奥にこんなものがあるなんて驚きっすね」


「うん、どうやって掘ったのかな」


「ここはわしらの祖先が来る前から在ったんじゃが、誰が何のために造ったのかもわからん」


フェイはドーム状の壁に触れる。


壁は温かく艶があり滑らかだった。


「温かい…」


「それは壁中に地熱で温められた水脈が通っておるからじゃよ」


「なんかすごい町っすね」


「スチュアート、こいつらは?」


老人に話し掛ける声が聞こえた。


「これはゲルヴ様」


老人は黒い長髪の眼鏡を掛けた男に頭を垂れる。


「この方々は坑道が崩れて通行出来なくなり困っていたので連れて来た次第じゃ」


「困るなぁ勝手に部外者を町に入れてもらっては」


「君達は何処へ行こうとしていたのだね」


「港町シルスです」


「聞かん名の町だな…まぁいい、こいつらは私が預かる」


「分かりました」


「君達、着いてきたまえ」


フェイ達はゲルヴの後に着いて行くと大きな屋敷へ着いた。


三人は屋敷の一室に通された。


「座りたまえ」


言われる通りフェイ達は近くにあった三人掛の椅子に座った。


「君達にはすぐにでも出ていってもらいたいところだが、もう夜になる屋敷に泊まるがいい」


「ありがとうございます」


「礼などいらん、こちらとしては今すぐにでも出ていってもらいたいのだからな」


部屋の扉を叩く音が聴こえ、扉が開いた。


「失礼します、お部屋ご用意が出来ました」


女の使用人が一礼して入ってきた。


「あとは頼んだぞ」


「はい。それではお客様、部屋までご案内しますのでこちらへ」


フェイ達は席を立ち、使用人の後について部屋を出た。


「こちらの部屋をお使い下さい」


そういうと使用人は一言付け加えた。


「あと夜は決して屋敷から出ないで下さい。それでは失礼します」


使用人は扉を閉めた。


「なんか変っすね」


「うん、屋敷から出ないでなんて変よね」


「今は言う通りにしよう」


「どうしたんっすか?いつもなら真っ先に行動するのに」


「気になることが幾つかあって」


「気になること?」


「なんっすか?」


「この町に入って違和感があってさこれだけ大きな町なのに全く人気ないし、建物や道も妙に綺麗過ぎるからさ」


「確かに」


レイナは窓から外を眺める。


「うん、でもそれだけじゃないんだ」


「他にもあるんっすか」


「うん、それは夜になってみれば分かると思う」




町中に鐘の音が十三回鳴った。


鐘が鳴り終わると町中を照らしていた光が消えていく。そして、町の明かりが灯っていき、部屋の明かりが灯った。


そこへ部屋の扉を叩く音が聞こえ扉が開いた。


「失礼します。お食事のご用意が出来ましたので呼びに参りました」


フェイ達は使用人の後について部屋を出る。


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