4−3
麓町ゼルゼ〜教会〜
フェイは突然、透り抜けたことで体勢を崩して前のめりになる。その流れで扉の取っ手を掴むと扉が開いて中へと倒れ込む。
「いきなりなんなんだ」
立ち上がると前に入ったときと違い、教会の中の様子が変わっていた。
教会の中は火の灯った蝋燭が逆さに浮いていて壁には無数の大鎌が張り付き歯車のように動く。そして、天井には鎖の掛かった扉があった。
「フェイ!気をつけろ、誰かいるぞ」
「あなた何者?」
フェイは声のした方を見ると法衣を来た一人の修道女が不気味な椅子に座っていた。
「あなたこそ」
「私は破滅を招く者キースよ」
「別名、冥界の契約者か」
「よくご存知のようね。囚われの精霊さん」
「まぁな」
「みんなは何処にやったんですか?」
「それならここに」
キースは手を開くと炎が出て青白い球がたくさん入ったランプが現れた。
「まさかそれって…」
「そう、これは生き物の魂…そう死んだのよ」
「どうして…」
「アハハ…どうして?それはね、私の力を強める為よ」
「そんなことの為に」
エレメンタルブレードを構えた。
「許さない!!」
「そう、どうやら貴方も私の糧になりたいようね」
そういうとランプから青白い球が抜け出て、キースの中に入る。
そして、キースは椅子から立ち上がった。
「いくわよ!」
キースは壁の大鎌を一つ引き寄せて掴むと思いきり空を振り抜く。すると無数の刃が渦となった。
「うわっ引き寄せられる…」
フェイはエレメンタルブレードを地面に突き刺し耐えている。
「グレネリス、どうしようこのままじゃあの渦に飲み込まれる」
「フェイ、炎斬を渦の外側に撃つんじゃ」
「でも、この状態じゃ」
「いいから撃て!」
「わかったよ」
フェイは集中してエレメンタルブレードを地面から抜いた。すると身体は徐々に渦に引き寄せられていく。
その中でフェイは渦の外側に向けて炎斬を放った。
「いけぇ炎斬!」
放たれた朱い刃は渦の回転で曲がり渦の反対にいるキース目掛けて飛んでいった。
キースは一瞬、驚いたがとっさに大鎌を盾にして防いだ。しかし、防ぐことに意識が傾いたことで渦は散るように消えた。
「以外にやるようね」
キースの持っている大鎌の柄の部分で折れた。
「これならどう?」
キースは浮き上がり両手を広げ、今度は四本の大鎌を壁から引き寄せる。
大鎌はキースの前に横一列に並び一つ一つが回り始めた。そして、四本の風の渦を作り、次々とフェイに向かって来た。
「これじゃさっきのようにはいかない、何とか避けないと!」
まず一本目の渦を飛び避けたが風で引き戻され、身体が浮き上がる。そこへ二本目の渦がフェイを襲い、渦に飲み込まれた…。
「うわぁぁぁ…」
さらに三本目と四本目の渦も合わさり、渦が消えてフェイは地面に叩き落ちた。
「くっ…身体が…」
フェイは身体中を切り裂かれていた。
「これで終わりのようね」
「まだだ…」
フェイはフラフラになりながら立ち上がりエレメンタルブレードを構えた。
「みんなの…」
「おとなしく死ねばいいのに」
「みんなの…魂を返せ!!」
フェイの中で鼓動が高鳴り、オーブとエレメンタルブレードが朱く光り輝いた。
「まだそんな力があるのね」
「来たようじゃな、心(震)音が」
「でも、なんか前と違う感じだ」
「取り込まれた石の影響のようじゃ」
「剣が!」
エレメンタルブレードが変化し、双剣へとなった。
「変わったな」
「一本増えたところで何が変わるの…」
キースは不適な笑みを見せる。
「…そろそろ決めさせてもらうわ」
地面から三本の刃を持つ一つの大鎌が現れた。
「この神鎌エルセニスでね」
「くっ神具か、気を付けろ。フェイあれは今までのものと別格だ」
「それは感じで分かるよ」
三本の刃を持つ一つの大鎌、神具の放つ尋常ではない気配を感じ取る。
キースは大鎌を構え、一歩の踏み込みでフェイに近付いて大鎌を横に振り抜いた。
フェイはその場で跳躍して避けた。
「避けた…でもね、忘れてない?」
フェイの瞳にキースの笑みを浮かべる口元が映る。
「うわっ!」
空気を裂くような音と共に突風が起こり、フェイは吹き飛ばされた。
『どうやって攻撃すればいいんだ』
フェイは宙を舞いながら思案する。
「また来るぞ」
キースは神鎌エルセニスを振り下ろす、それをフェイは双剣で受け止めた。
「さっきまでの威勢はどうしたの?」
「このぉぉぉぉ」
フェイは大鎌を弾き返し、すぐさま双剣の片方をキースに投げた。
キースは飛んでくる剣を大鎌の柄で弾いた。
「残念だったわね……なにこれ!」
弾いた剣は地面に落ち刺さるとそこから炎が広がり火柱を作った。
「こんなもの…」
キースは大鎌を大きく振ったすると竜巻を産み、風を取り込んだ炎は力を増し部屋全体に広がっていく。
「ぐわぁぁぁ」
「これはどうなってるの?」
「新しい力だろうな」
「新しい力?」
「武器が変化したことが原因の」
「そうだ ランプを!」
フェイは椅子の近くにある魂のランプを取った。
「よし、そういえばこんな炎なのにどうして熱くないの?」
「それは我の力が働いておるからじゃそれにお前は契約者だからの」
「そっか……!!」
炎の竜巻が掻き消える。
「まだ…まだ 終わらない…」
キースの肉体は燃え尽き、青白い球が遺された神鎌エルセニスが天井の扉に飛んでいき扉の鎖を断ち切った。
「まずいな」
扉が音を立ててゆっくりと開く。
『やめろ、キース』
『セリウス どうして』
『これ以上すると奴らに気付かれる』
『でも』
『キース!』
『わかったわよ』
開き掛けていた扉の動きが止まり、閉じ始めた。
「んっ?」
「扉が閉じていく」
気がつくとエレメンタルブレードは元の姿に周囲は誰もいない教会の中に戻っていた。
「なにが起きたんだろ」
「わからん」
「フェイくん!大丈夫ですか?」
教会の入口の扉が開き、クレイルとレイが入ってきた。
フェイは起きた出来事を話した。
「それが魂ですか?」
「うん、でもどうすればみんなを」
「貸してください」
フェイは魂のランプをクレイルに渡した。
クレイルは受け取ると地面に置いて、ランプの扉を開ける。
「グレネリス、力を貸してください」
「わかった」
魂は空中に舞い始めた。
「いきますよ」
地面に円を描くように炎のが走り、その内側に魔法陣がランプを中心に広がる。
魔法陣から光の粒が立ちのぼり、ステンドグラスからの光と交わる。
魂はうっすらと人の姿に戻り魔法陣が七色に強く輝き、魔法陣を囲む炎と共に消えるとみんなが元に戻り、地面に倒れている。
「レイナ!リーシュ!フィーちゃん!」
フェイは三人の姿を見つけ、名前を叫ぶ。
三人と街の人達の意識が戻った。
「あれ、俺達…?」
「フェイ…」
「よかった…」
「どうやら…うっ…無理が過ぎま…たね…」
クレイルは倒れた。
「クレイルさん!?」
「こちらへお運びください」
「すいません」
神父に言われるようにクレイルを担ぎ、ベットへ運んだ。
クレイルの意識が戻らないまま数時間…
クレイルが眠る部屋の前でリーシュとフェイが話している。
「クレイルさん大丈夫なんっすかね」
「わからない、医者が診ても原因が不明だって」
そこへレイナがやってきた。
「あれ?フィーちゃんは?」
「見てないよ」
教会のチャペルではガイとフィーとレイがいた。
「……」
「そうなんだ、名前はガイってゆうだぁ〜」
「この子の言うことが分かるの?」
「うん、心に響いてくるの」
「名前は?」
「フィーはねフィーだよ、あれ何かおかしかったかなエヘヘ」
「そぅ…あなたが」
『おおきくなったわね…』
レイは目を潤ませた。
「どうしたのぉ?」
「いぇ、なんでもないのよ」
「あっレイナお姉さん」
「ここにいたのねフィーちゃん」
レイナがチャペルにやってきた。
そして、外は日が暮れていきフェイ達はクレイルと同じ部屋で眠りに就いた。
クレイルは意識を戻した。
「気が付いたようじゃな」
「えぇ、グレネリス」
「無茶をしおる、制限が解けたらどうるするんじゃ」
「分かってますよ、でもあのままにしておきませんから」
「かわらんな」
「でも、そろそろ皆さんに話さなければいけませんね」
「そうか言うのだな」
「えぇでも何故彼等が」
「冥界のセレディナスに何が起きているようだな」
「そうかもしれないですね」
「ん〜だとすれば由々しき事態じゃな」
「そうですね…」
そして、夜は更けていく。