表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A・w・T  作者: 遠藤れいじ
9/64

9・戦後処理

 去って行く鎧狼の後を目で追っていると、免悟はふと自分が大汗をかいているのに気付いた。

 いや、汗だけじゃない。地面に座り込みたくなるくらい強烈な疲れが襲い掛かって来た。


 だがゆっくりするのはまだ早い。


 免悟は腰に付けた革の小バッグからプラスチック製のポットを取り出す。蓋を開けて中の液体一気に飲み込んだ。これはゲームで良くある体力回復薬、スタミナポーションだ。

 この世界では体力も魔力も一緒なので、MP回復薬とも言える。これもクロスボウと一緒に買ったアイテムの一つだ。


 とりあえずこれで緊急避難的に体力を回復させる。あっさりと動悸、息切れが収まった。


 ちなみにこの世界の物価は総じて安いが、唯一魔法系アイテムだけは馬鹿みたいに高い。その例に漏れずこのポーションも高価で一本1万Gする。これでも下級のポーションで、品質や回復量によってはもっと高い奴もあるのだから恐ろしい。

 ところでポーションには味がなかった。飲んだ感じも炭酸ぽいが液体感は無く、すぐに拡散して吸収される感じだ。

 貴重なファンタジー体験だが、今はそんな事より鎧狼だ。奴らはもうすでに逃げたようだが、一応【索敵】を展開しておく。こっそり戻ってこられたら堪らないからな。


 安全を確保したら次は子供だ。やはり子供が二人大怪我をしていた。他の子に抱えられて傷を押さえている。

 免悟は他の子供たちを退けて怪我を見る。おそらく噛みつかれて振り回された子だ、腕をざっくり切られて血が溢れていた。


 免悟はバッグから薄紙を取り出す。今度は治療符だ。治療回復薬・ヒールポーションの亜種で、見た目は湿布だが効果はポーションと同じだ。ただ外傷の治療には張り符の方が効果的らしいのだ。


 免悟は裏紙を剥がし治療符を二枚貼った。傷に触れた張り符はすぐに治療を開始する。


 怪我した子には悪いが、免悟は魔法治療薬の性能と言うものに興味があった。なるべく早く使って見たかったのだ。

 治療符が張り付くと、紙の上からも分かる程だった酷い傷口が、あっと言う間に再生されて平らになっていく。


 おお…。


 苦痛と恐怖で歪んだ表情が次第に収まり、少年は不思議そうに目を開いた。その様子を傍らから見守っていた子供たちからも安堵のため息が漏れる。

 もう一人も同じように治療符を使う。他にはそれほど大した怪我人はいなかった。盾にした荷物やヘボ武装でどうにかなったらしい。これは絶対たまたまだな…。


 そして、鎧狼が一体だけ死んで残っていた。子供に怪我を負わせ至近距離で光弾を食らった奴だ。


 首元に深い穴が穿たれている。


 どうやら【光弾】とクロスボウはほとんど威力が同じようなのだが、鎧狼は弓矢一発くらいでは死なないらしい。

 だがさすがにこんな至近で撃たれたら免悟の狙いだって正確になるし、只では済まない。一発でお陀仏だったようだ。


 とりあえず免悟たちは後片付けを済ませると、逃げるようにその場を後にした。もう今日はこれ以上さっきと同等のバトルを繰り広げる余裕が無かったのだ。

 なるべく最短距離で街道に戻ると、何事もなく無事に街へ辿り付く事が出来た。


 その時遠目に見えた街の頼もしさったらハンパなくカッコ良かった。みんな疲れも忘れて早足になったくらいだ。


 こうして初の合同探索は終わった。

 ちなみに今回の鎧狼は3万5000Gで売れた。


 出来れば免悟は即宿に帰ってゴロ寝したかったのだが、獲物とは言え実質ただの死体でしかない鎧狼を宿に持ち帰る訳にもいかない。疲れていたが先に売り払うことにした。

 子供たちが集めた残りの採取品は、面倒だったので報酬として子供に譲った。大体7000Gくらいになると喜んでいた。


 子供たちは街に戻ると意外に元気を取り戻していたが、免悟はもういろいろ限界だったので、鎧狼を売ったら宿に直帰して即寝した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ