7・パーティー結成
ところで、その後街に着いた一行は、街の正門を素通りして街の裏へ回った。
と言うのも子供たちには市民権を持った保護者がいないので不法滞在者に当たるのだ。
成人は15才で、未成年は市民権を取得する必要はないが、責任の取れる保護者がいないと国民とは見なされない。
なのであまりおおっぴらに衛兵のいる正門からは出入りしたくないらしい。時々殴られたりするらしいからだ。
大変だなお前らも…。
と言う事で外壁の外側に溢れるボロいスラムを通って街に入った。それに市場へ行くにはこのルートが一番近道なのだそうだ。
市場には公営の買い取り所があり、そこなら相場を知らなくてもリスクの少ない売却が可能だった 。実際に鎧狼は3万Gで売れた。かなり引きずったせいで傷跡の分を差し引かれたが、それでも免悟が思った以上の値が付いた。
鎧狼の外皮は色んな使い道があるらしい。実際この世界のモンスターは生物としては危険極まりないが、反面素材としての価値も高い。
例えばガラスとかゴムとか、地球では合成して作られる物質もこの世界ではモンスターや植物、鉱物等から直接天然素材として産出されるのだ。
流石は魔法世界、無茶しやがる。
わざわざ技術や知識を蓄積して作らなくても、脳筋がちょいとそこらのフィールドを突撃してくればすぐに質の良い素材が確保出来るのだ。
ヘタに自分で作るより強奪する方が高品質だったら作る気失せるよなそりゃ。ある意味非常識な世界だぜ。
だが、これは逆に期待出来る。鎧狼10匹で30万G!、夢は広がる、主にハーレム方向に。
とか思ってたら子供たちに釘を差された。この世界のモンスターは人間の使う魔法に敏感で、しかもモンスターも魔法を使うらしい。
鎧狼なんかはかなり優秀な種族固有の索敵魔法を使うので、自分より強そうな相手は簡単にスルーすると言うのだ。
ほほう、じゃあ何か?、俺は獲物っぽかったのか?。まあそうなんだろうな。くっ、だが許せん。
とにかく現実的に鎧狼なんかは、ガルナリー全体で見てもそう毎日何匹も捕れるもんじゃないらしい。
え〜、そうなの?、なんか結構チョロい感じしたけどなぁ。
ちなみに草原龍はもっと高い。一匹40〜50万Gするらしいぞ、マジか?。あのケツを焦がしたバカ馬、今度見つけたら絶対ブッ殺そう!。
問題はどうやって持って帰るかだったが、子供とは言え数さえいればどうにかなる。特に子供たちはハンター向けの情報を良く知っていた。それはたまたまではなく、彼らは将来ハンターとして生計を立てて行く事を考えていたからだ。
と言うのも大抵どの世界の子供も戦士的な物には憧れる。ましてや家も親も無い浮浪児にとってハンターや傭兵として己の力だけで一攫千金を狙うのは、現状考えられるベストの未来予想図なのだ。
とにかくこれで免悟の前に立ちはだかった懸案事項、知識不足と人手はまとめて解消された。
よし、後は狩りに行くだけだな。
と言う訳で早速次の日みんなで狩りに出かける事にした。
免悟と子供たちは朝、街の外のとある空地に集合した。
子供らはかなり前から待っていたようで、免悟が現れた時にはもう待ちきれないって感じだった。
ところで免悟は例の魔法使いローブに鉈剣と言う格好だ。子供たちには一応防御力を上げておくように言っておいたのだが…。
みんなそれぞれ独創的な装備を身に纏ってらっしゃいました。別に無理にそれらしくする必要ないのだがね…。
剣っぽい棒も、盾らしき板切れも、身体中に張り付けられた防具なのであろう何かも全部木製で、ぶっちゃけ学芸会の劇とかで見かけそうな紙装備だった。
なんか手作り感は100%なのに防御力は限りなく0に近い、もはや果汁3%の炭酸飲料並みの存在感だ。
いやはや参ったね、まさかいきなりこんなベタなボケをカマして来るとは。
とは言え突っ込めない。突っ込んだら戻ってこれなくなりそうな予感がするのだ。
うん、こう言う時はスルーだ。触れちゃいかん。つーかコイツらそんな格好でよくここまで来れたな。尊敬を通り越して軽蔑するわ。あ、これ一周して元に戻ってる…。
って、いかんいかん、無視だ、無視するんだ。俺よ無になれ。
はあ、それにしてもおっとろしい威力してんなコレ。どうやってもスルー出来ねえよ…。
まあしょうがない、おそらくあの装備には痛々しい夢が腐るほど詰まっているのだ。だがこれは所詮みんな一度は通る道、中二と言う名の男道だ。憐れみの眼差しで生暖かく見守ってやろうじゃないか。
そんな免悟の複雑な心境をよそに、子供らはすっかりテンションがおかしくなっていた。
「よし!、鎧狼が出たら俺に任せろ、俺が倒してやる!」
「わかった、じゃあ俺らその間に逃げるな?」
「ええっ?、ウソォ~!」
(((大笑い!)))
何、そのネタ…。
「ま…、それじゃ行きますか…」
子供たちは待ってましたとばかりに元気でそれに応えたのであった。
ところで、別に構わないのだが子供たちは何故か8人に増えていた。
とりあえず今日は、なるべく見晴らしの良い荒野を探索する。基本的に今日は狩りではなく、採取をメインに安全重視で行く事になったのだ。
子供たちは街道を離れて荒野に踏み出すと、すぐにさまざまな物を拾い始めた。
何の変哲もない石や草。実際あまり大した金にはならないらしいが、基本的にこのガルナリーの街周辺はモンスターも危険なのが多く、またそれなりのレベルのハンターや傭兵が集まるので、あまり単価の低い素材は見向きもされないのだ。
だがそれゆえにモンスターの領域に踏み込む事さえ出来れば結構簡単に採取できて、そしてそれは浮浪児的な彼らからすれば十分な稼ぎになるのだった。
普通は危険過ぎて指をくわえて見てるだけの物だが、免悟と言う護衛がいる今は違う。しかも単価が安いとは言え、その分大量に採取すれば意外とバカに出来ない。と言うか、必要とする稼ぎが少なくて済む分、ヘタに一攫千金を狙う大人ハンターよりこっちの方がよっぽど確実で手堅いと言えるだろう。
そんなこんなで結構採取が進んだ頃、 一行は辺り一面が一種類の草で覆われた群生地に出くわした。
「テンの香草だ…!」
どうやらたまたま手付かずの群生地に遭遇したらしい。子供たちは歓声を上げてその群生地に突撃して行った。
どこから取り出したのか、新たな採取袋に目一杯詰め込み始める。その間免悟は索敵、と言うか周囲の警戒だ。基本コイツは何もしない。
子供たちは気が済むまで香草を取ると、今度は簡易の橇を作り初めた。
二本の長い棒の上に板を乗せ、それらをしっかり固定する。そしてそれをヒモで引きずって橇にするのだ。
こうして板切れにしか見えなかった子供たちの紙装備は橇の一部になった。正確には橇っぽい感じの奴に。
ふむ、さんざん馬鹿にして悪かった。
細かい事は全部任せろ、と言うのでどうするのか気になっていたのだが、こうするのか。でもまだ見た目は学芸会の衣装レベルから変わってないけどね。
免悟がぼんやり橇を眺めていると、子供の一人が声を上げた。
「な、何か来る…!」
免悟がその方向を振り返ると小さな動く影があった。すぐに100m先まで来ると免悟の索敵にも反応があった。鎧狼だ。
相変わらず索敵意味無ェ…。