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A・w・T  作者: 遠藤れいじ
60/64

60・拠点攻略戦終




 ナンなの、コレ……。



 セティカたちは予想外の展開に呆然と思考停止した。


 とは言え、一部のテラリス兵は今なお覇王樹の守護者と交戦中だ。「おい、ぼさっとしてんな!」


「…は、そうだ!、あんなのはどうでもいい、それよりダンマスを追うぞ、遅れるな!」


 セティカは、すぐに天井に消えた狂戦士たちの事を頭から追い払うと出入り口に向かった。

 なんか気獣が二匹、頭上でうろちょろとムカつく動きを見せていたが、それも無視。


 テラリスは罠を警戒しつつダンマスの後を追った。だが一本道の通路を抜け、突き当たりの一室で目にした光景に一同はまた愕然とさせられた。


「なんだこの馬鹿デカい転移陣………」


 そこに設置されていたのは魔王雛の漆黒イルフェンネスが所有していた(極大)魔法【次元踏破】の転移門だった。


 だが、そのあまりの巨大過ぎる転移門にテラリスの追跡手段は頓挫した。


「まさか、こんな巨大な転移魔法を持ってるなんて…」


「隊長!、一か八か俺たちにやらせてくれ!」


 数名の隊員がセティカに直訴したが、その追跡は許可出来るものではなかった。


「ダメだ、間違いなく無駄死にで終わる、許可出来ない…」


 この作戦の重要性を考えると多少無茶な事でもやってしまいそうになるが、無駄と分かっていて兵を死地に送るほどセティカもテンパってはいなかった。


 どうやら完全に手詰まりの状態だ。


 と言うのも、かなりその数を減らしたとは言え、今だに圧倒的な兵力をテラリスは有してしている。これだけ敵の近くにまで食らいついてしまえば、後はもう単なる時間の問題でしかないと考えていたのだった。

 そして転移魔法についてはこちらも転移魔法で追える算段であったのだ。これほど巨大な転移魔法でなければ、だが。


 そもそもあらゆる転移魔法の転移門は規格が統一されているので、転移魔法があれば誰でも利用可能だ。転移門の周囲を封鎖する事は土建技術的に可能だが、門自体に鍵を掛けるシステムは存在しない。

 しかも転移門はかなりデリケートな陣魔法で、維持にも多大なコストが掛かる事からも分かる様に破壊も簡単だ。ところが次元の繋がりが切れて完全に機能停止、又は崩壊に至るには30分〜1時間くらいのタイムラグが存在した。


 転移魔法で逃げたら、門閉じてハイさよならって訳にはいかない理由がこれだ。


 問題なのは、今回テラリスが持参したのが一番ポピュラーな定員数10名弱の転移魔法であった事だ。(とは言えこれでも大魔法なので普通に高価なレア魔法だ)


 ダンマス側もこの一般的な大魔法であったらなら、数十名いるメンバーは数回に分けて転送しなければならなかっただろう。


 もちろん転移魔法は非戦闘用魔法なので、詠唱の待機時間も長い。今回の場合なら間違いなく魔童連盟のメンバー全員が転送される前にテラリスはこの場に到着出来た。

 そうなればここに残るメンバーを制圧した後に、転移門の向こう側に随時部隊を送ればいい。各個撃破にもなるし、恐らく向こう側で敵が待ち構えているだろうが、部隊全員が転送する頃には決着がつく筈だった。


 だがこんな巨大な極大の転移魔法で一気に全員転移されてしまったら、逆に送り込むテラリス側が各個撃破されてしまう。

 敵が待ち構える所に敵より少ない人数で乗り込むなんて殺されに行く様なものだ。単なる失敗だけじゃなく全滅すら覚悟しなければならない。

 そりゃあ政府のお偉方はそれでも行けと言うかも知れない。しかし現場の指揮官としてはそんな明らかな死地に隊員を送れる訳がない。諦める他なかった。


「はぁぁあぁ、何なのコレ……」


 セティカの隣でクニオが頭を抱えた。


 それもその筈、この敵の使った極大の転移魔法は普通あり得ないのだ!。


 と言うのもこんな転移魔法は大国でも一個持ってるかどうかと言う超極レア魔法。恐らく世界に二桁と存在しないだろう!。つーか国家レベルで運用する物であって、単なる一団体が持つには過ぎたる代物だ。

 そんなの一体何処で手に入れたのかは知らないが、見つかったらソッコーで身柄を拘束されて接収されて、出所について尋問されてもおかしくない案件だし。


 て言うかナニ?、迷宮核持っててスキル『魔核連繋』所有のダンマスが、さらに超極レアの(極大)魔法まで揃えてるってのか?!、そんなの不自然にも程があるだろ!。絶対にオカシイ、こんなの100%偶然なんかじゃない!。


 となると他国、しかも大国の関与…?。


 だが、敵の装備レベルや力量はそれなりに平凡な物だった。ちょっとおかしな奴もいたはいたけど、ダンジョンマスター率いる一団として総合的に見ればそんなもんだろう。

 確かにおかしい所は多々あるんだが、それにしてももし関与する国がその繋がりを隠したいと思うのならお粗末なくらい失敗してる。逆に隠す気が無いのならもっと徹底して効率的な組織を作るべきだ。


 それにいくら大国でも迷宮核や極大魔法なんかをそうホイホイと持ち出せる訳もない。つまり彼らはただひたすら他に類を見ない変な集団って感じなのだ。


 とまあ、こいつらの組織的な背景は一旦脇に置いておこう。あまりにも情報が足らなさすぎるからだ。これ以上詮索した所で答えは出ないだろう。それよりもセティカたちにはもっと他にやる事があった。


「クニオ!、本部へ目標に逃げられた旨を報告しろ。そしてダンジョンマスターの転移先を調べせるんだ。恐らくこの森迷宮の何処かに転移した可能性が最も高い。

 もし他の迷宮に転移したのなら我らの任務は終了だが、そうで無いならまだ終わりではない!。ダンジョンマスターに対する先制攻撃は失敗したが、ダンジョンマスターの確保には今だ我らが最も近くに存在する部隊だ。任務はまだ続く!。みんな!、気を抜くのはまだ早いぞ!」



「「「了解!!!」」」



 セティカがすかさず士気を維持する。だが、



「ちょっと待て!」



 セティカの背後から一人の男が割って入って来た。


 管理官デルク・ジモンズ少佐(30)独身だ。



 あ゛あ゛っ?!。



 たとえ精鋭部隊とは言え気落ちしてもおかしくないこの状況。そこへ一番ヘコんでてもおかしくない指揮官が、自らの役割を見失わない確たる態度を見せたのだ。部隊の気持ちも一丸になろうと言うもの。なのにそれを「ちょっと待て」たあ穏やかじゃない。


 歴戦の戦士たちが不穏な空気を漂わせる中、デルク・ジモンズ少佐はKYにも程がある態度でズカズカと現れた。背後に直属の部下4人を従えて。


「ちょっと待ちたまえ。

 中佐、あろうことか君はこの重大な任務に失敗した!。国が威信を賭けて行った作戦を君は台無しにしたのだ。そんな君にこの部隊を率いる指揮官の資格はもはや無い、失格だ!」


 まあこいつが何を言いたいかは皆だいたい分かってた。


「よって、以後この部隊の指揮は私デルク・ジモンズが代行する!。貴様は負傷者と共に今すぐ国へ帰るがいい!」


 戦士たちが剣に手を掛ける不気味な音色が辺り一面を響かせた。ジモンズの背後に控える直属の部下もその動きに緊張を糸を張り巡らせる。が、どういう訳かジモンズはそんなヤバい雰囲気など全く気にする様子もなかった。


 モンスターが出る度にビビってる男が、変な奴め。


 セティカは何か珍しいモノを見る目でその男を眺めた。


 とは言え確かに電撃作戦は失敗した。ここからは出遅れた各国の部隊が次々と追い付いて来るだろう。この状況は重大だ。

 確かにセティカが何か致命的なミスを犯したかと言えばそう言う訳でもないのだが、隊員の中にもセティカの指揮官としての力量に不安を抱く者も存在するだろう。

 ゆえにセティカはジモンズに対し真っ向から正論を述べるべきかも知れない、と言う考えも一瞬脳裏をよぎる。


 が、速攻でその思いを翻してジモンズに歩み寄った。


 高い確率であのダンジョンマスターはまだこの森迷宮に存在してる。それならまだ任務は続行中なのだ。今グダグダと内輪でやり合ってるヒマなど無い!。


 満面のドヤ顔で腕組みするジモンズ。その目の前にセティカが立ち止まった。


 そしてセティカは、

 そのイラっと来る男の土手っ腹に、

 蹴りをブチ込んだ。


 フェイントとか小細工一切無しの蹴りだったが、予想通り何の抵抗もなくセティカの爪先は容易くジモンズの鳩尾に吸い込まれた。コイツ反応悪すぎ。


 悲鳴と共に腰を折り曲げて下がるジモンズの頭部をガッチリ掴むと、さらにセティカはその顔面へと膝蹴りを食らわせた。


 ジモンズはクシャッとなって潰れた。


 セティカは苦々しげに地べたに転がるジモンズを見下ろした。


 つーかお前にこの部隊の指揮なんか取れる訳無いだろ!。モンスター1匹仕留め方を知らない奴が一体どんな指揮を振るうと言うのだ?。それにそもそもこいつに指揮官を更迭する権限なんか無いし!。


 セティカがザッと長い銀髪をかき上げてジモンズの部下を振り向くと、彼らは他の隊員によってすでに拘束されていた。髪の毛を掴まれ、腕を背後に捻られ、剣先を突きつけられている。


「お前たちの上司が上官に対する反抗や規律違反で訴えられたくなければ、任務が終了するまで大人しくさせておけ!」




「「「カスが!」」」


 立ち去るテラリスの戦士たちに次々と足蹴にされてジモンズは転がったと言う。


 まー、死にさえしなければ回復魔法で何とかなるしね。(クニオ)


 こうしてデルク・ジモンズの乱は一瞬にして鎮圧されたのであった……。







ーーーーーーーーーー







 うーす、俺はエルドウィン・サーバル。


 どうも上では何やら面白そうな気配を漂わせているみたいたが、それはともかく、どうも今回このままだと文字数が少ないらしい。なのでついでに現在の状況説明でもしとこうかって事になった様だぜ。


 まあ主に魔童連盟とテラリス部隊の残存兵力を正式にアナウンスするって事なんだが、意外とこう言うのをストーリーに上手く絡めて語るってのは大変らしい。

 だから誰か適当な奴に適当に喋らせてやり過ごしてしまえって訳だ。え?、そこまで言わなくていい?、あっそ。


 つー訳でそれじゃあ言うぞ?、てか面倒くせぇから分かり易く列記するな。




 拠点攻略戦前のテラリスは75人。

 20人死亡→現在55人。




 魔童連盟は気獣も加えて計46名。

 13名死亡→現在33名。


 ※魔童連盟の詳しい内訳。

 気獣が6匹死んで生存9匹。

 皮剥ぎ団が4人死んで残り8人。

 戦闘奴隷は3人死んで残り5人。

 その他残りが11人。




 今回俺はこれを言う為だけに呼ばれたんだが、一応感想的なものも付け加えよう。


 んー、こうして見ると結構死んだな、って感じかな。(軽い)


 特に気獣が6体も殺られたってのは痛い。


 気獣は基本死ににくい生き物なんだが、メンバーの盾になる事が多かったのでさすがに結構やられちまった…。

 気獣ってかなり使えるから盾なんかさせるのは勿体ねえんだが、召喚主のダンマスがそう望むんだからしょうがない。気獣の奴等はエダルに頼まれたらなんだってするからな。


 つー訳で、以上だ。

 …あ?、何?!、もっとちょっとなんか喋れ?。

 あーー…、スマン無理だ、特にねえわ、じゃあな。







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