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A・w・T  作者: 遠藤れいじ
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6・子供たち

 街への帰り道。実は街はもうすぐ近くの所にあった。

 例のちょっとした丘を越えると、もう街の姿が見える程の所まで来ていたのだ。


 子供の話によると、この丘を越えると完全にモンスターたちが自由に活動する危険領域で、そこは力の無い子供などは絶対に立ち入らないようにしているらしい。


 そんな訳で、免悟は子供たちに代わりに鎧狼を引っ張ってもらっていた。免悟としては、ちょうどいい所に使い易そうなガキが来たので、鎧狼を運ぶのを手伝って貰おうと思ったのだ。

 だがどうやらこの街には狩ったモンスターを運んだり、その他雑役をこなす専門の仕事が存在するらしい。主に子供や定職のない人間の就く職業で、このガルナリーで最もハイリスク・ハイリターンな職種であるハンターや傭兵の補助、いわばおこぼれに預かろうと言う感じの立ち位置らしい。

 もちろん子供がやるのは金だけではなく、いずれは自分たちも狩りや戦闘に参加するための弟子入り的な要素もあるようだ。


 と言う事で子供たち自ら鎧狼の運搬を買って出てくれたのだった。話が早くて助かる。

 と言っても街はすぐそこなのだが、免悟にとっては果てしなく遠い道のり。交渉の結果、500Gでやってくれる事になった。つーか交渉らしい交渉もなく、一方的な子供の言い値だ。

 正直免悟からすると高いのか安いのかさっぱりわからないが、とにかくこんなもんらしい。


 そういう訳で免悟と子供たちはほんのわずかな距離だが、街までの道のりを一緒に歩く事になった。そしてその間の世間話で色々な事が判明した。


 まずはこの子供たち。聞く所によると、彼らは親無しのホームレスな浮浪児らしい。


 うんやっぱりね、そんな感じしたわ。言われて全然違和感ないもの。(心中のセリフとは言えもう少しマシな言い方あるだろ…)


 ちなみに免悟は外界人である事を説明したが、さっぱりな反応でスルーされた。意味がわからんのか興味無いのか、とにかくなんだろこれ。


 そしてこの子供たちは意外と物知りだった。と言うか…。


「ほんと、兄ちゃん何も知らないんだな〜」


 そう、免悟の方が何も知らないって事だった。しょうがない事だが、正直ちょっと不安になってきた…。


 免悟が結構深刻な表情でへこんでいると、子供の一人がある提案をして来た。


「なあ、もしなんだったら俺たちを雇ってくれよ、色々役に立つぜ!?」


 ここぞとばかりに子供たちは自分を売り込んで来た。

 うん、みんなすごい期待丸出しな顔してる。


 だがなるほど、確かにそう言う手があったか…。何も自分一人で全部やる必要はないのだ。

 ただ、この世界に知り合いが全くいないとは言え、いくらなんでもこんな子供を危険な場所に連れ出すのはちょっと無茶な話だ。

 今の免悟も大人とは呼べないが、子供と言う程幼くもない。だがこの子たちは確実にまだ子供の域を出てはいない。

 まあ十歳は越えているとしても、免悟より頭一つ分くらい小さい。さすがにモンスター共を相手するにはちょっと早いだろ。


「なあ、報酬は兄ちゃんの役に立った分だけでいい、俺たちを使ってくれよ!」


 そう免悟に語りかける少年は、子供たちの中でもわりと身体も大きく、おそらくリーダー的な存在なのだろう。


「だけどなぁ…、さすがに鎧狼とか出て来たら、マジで死ぬぞお前ら…。

 別に脅かすつもりはないけどさ、ホントにコレ無茶苦茶怖いんだから…」


 そう言って免悟が鎧狼の死体を足で小突く。

 いくら死体とは言え、 やはり実物を目の前にするとその脅威はダイレクトに伝わる。

 たった一匹の鎧狼を子供五人がかりで引きずっているのだ。みんなそれぞれの場所を掴んで引っ張るせいで、引きずられる鎧狼はどうしようもなくあられもない姿を晒してしまっているが、その生前の勇姿を思い起こすのはそう難しくはない。


 免悟の言葉にピリッと緊張を走らせる子供たち。しかし。


「でもどうせ俺たちの何人かは大人になる前に死んじまうよ。実際にこの前の冬も何人か死んでるしな。

 死ぬのは嫌だけどどうせ死ぬならやれる事は全部やっておきたいんだ」


「ぉぅ…」


 つい免悟にも驚きの声が漏れる。マジかよ…。


 つーか重いよ、重すぎるだろ。その歳でどんだけ修羅場くぐってんの?。お兄ちゃん胸が痛いわよ。

 いつの間にか、他の子もみんないい顔して頷いてるし。


「まあ…、そこまで覚悟があるなら構わないぜ。俺だって出来れば仲間が欲しい所だからな…。

 …んじゃ、いっちょやってみるか?」


 免悟がそう言うと子供たちは超嬉しそうにはしゃぎ出した。


 えマジで?、やった!、ハンターか?!。


 子供たちが喜びに沸く中、唯一鎧狼の死体だけが大地に放置されたまま眼を腐らせていた。

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