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A・w・T  作者: 遠藤れいじ
56/64

56・拠点攻略戦2

タイトル変えました。






 「大広間」に陣を張った免悟たちはテラリスの接近を関知すると準備万端でテラリスを待ち構えた。


 だと言うのにテラリス部隊はなかなか突入して来ない…。なんか大広間周辺をうろうろ嗅ぎ回っているようだ。


 エルドウィンは罠を警戒してるんだろ?と言うが、良く分からないまま待たされる方としてはなんか嫌な感じだ。

 多分問題無いとは思うが相手は戦慣れした軍隊だ、どんな手を使って来るか分からない。不気味だ。


 ちなみに【二枚舌】と発動に時間の掛かる【加重舞陣】はすでに展開済みだ。別に舞陣は放っておいてもいいが【二枚舌】は4分くらいしか保たないので、効果が切れる前に重ね掛けしないといけない。面倒くさいので早く来やがれテラリス。


 テラリスの部隊はすぐそこにいるので、なんか食べたり雑談しながら待つ訳にもいかない。向こうが主導権を握ってるんだからいつ敵が飛び込んで来てもいいように待ち構えてなきゃいけないのだ。

 そんな先の見えない緊張感に皆の集中力は次第に斜め上な未知の領域へ…。そして限界を超えた緊張感はあっさりと地べたに転がった…特に気獣が(ゴロゴロと)。それを見たエルドウィンの機嫌も悪くなるし、あ〜あ……。


 ちょっと、いい加減なにやってんのテラリスぅ…?。


 だがグダグダになっちまった空気は自然と目的を求めてさ迷い、いつしかテラリスに対する純粋な敵意へと変換されて行った。そして適度な殺意が熟成された頃、突然テラリスは突入して来た。


 待ってたぜ…。


「死なす!」(エルド)


 まあ向こうも敵の都合なんか考える訳ないが、こっちもちょうど誰かをブン殴ってやりたい気分な所だ!。



 てな訳で、まず三部隊の内の一隊が大広間に侵入すると一直線でエダルに向かって来た。


 (エルドウィンの指示で)エダルが【泥人形】を一斉に起動。侵入して来たテラリス部隊と魔童連盟の戦士たちとの間に魔法陣が浮き上がり、雑な造りのゴーレムが姿を現す。

 このゴーレムは設置型の魔法陣と一体化してるのでその場からは動けない。さらに知能はほぼ無いが壁としてはなかなか出来る壁だ。


「それにしてもコイツらだけか…、他の部隊はどうしたんだ?」(免)


「なんか(考えがあるなら)面倒くせえが、バラで来るなら削れる内に削っておこう。

 とりあえずクリック(奴隷リーダー)らは俺について来い。バルサンら(皮剥ぎ団リーダー)は待機な?」


 敵はたった一部隊とは言え20人くらいの人数がいる。それをエルドウィンが奴隷戦士8人を連れて迎撃に向かう。当然倍以上の兵差があるが【加重舞陣】と【泥人形】で何とかするみたいだ。


 エルドウィンたちが激突する直前に(免悟の指示で)エダルが全ての気獣エアハウンドを解き放った。気獣は呼べばすぐに戻って来れるので遊撃として必要な所に送り出せる。


 気獣がエダルの元から飛び立つと一気にエルドウィンたちの背後に迫った。


 ゴーレムを壁にエルドウィンたちとテラリス部隊が接触した。強化魔法のエフェクト光が激しく瞬き、続いて気獣の群れが流れる様に斬撃を加える。

 テラリスの右翼と左翼の分隊は魔法専門兵のいない純戦士系ばかりだ。肉弾戦で足を引っ張る者はいない。だが【加重舞陣】で足枷食らってる状態では気獣のスピードに付いて行けない。


 激しい激突の後、さすがに足並みを乱しかけたテラリス部隊だが、そこをグッと堪えると態勢を維持しながら少し後ろに下がった。

 エルドウィンたちも少なからずゴーレムを壁にしている以上あまり飛び出す訳にはいかない。

 一方、状況変化も気にしない気獣の攻撃がガードされたりカウンターされる。


 テラリス分隊は中魔法【城壁陣】を張ってその場に足掛かりを作った。とその時、別の入口からもう一つのテラリス分隊が現れる。


「気にすんな、前だけ見てろッ!」


 エルドウィンが気にせず剣を振り回す。


 エダルのいる本陣は大広間の奥。侵入して来る入口のない壁を背後に置いてるので、いきなりエダルの近くに何者かが現れる事はまずあり得ない。

 そしてテラリスの第二陣に対して皮剥ぎ団が迎撃に向かった。気獣の群れも半分だけそちらの応援に飛んで行く。


 本陣からはエダルが前方の味方に対して【復癒唱】を連発する。

※【復癒唱】は中範囲の体力回復魔法。広く薄く味方の疲労回復を助けると共に脂肪の燃焼を早め、お肌に瑞々しさと潤いを与えます。



 ここで免悟は迷った。テラリスの本隊は何故かまだ現れない。ならば出揃う前に全力で二つの分隊を叩くべきか?。それとも計画通り揃うのを待ってからまとめて叩くべきなのか?。

 なんで同時に突入して来ないのかは謎だが、って言うかまあそれだけ兵力差があるから出来るんだが、これはまたチャンスでもある。


 ただし中途半端に削ったら逃げられて、手の内だけ見られて再度来られるのはちょっと困る。

 それにこっちも事前の戦術ってのがあるし。

 一人で戦ってる訳ではないのでみんなが意思統一しやすい流れに沿う必要があった(ただでさえ魔童連盟はバラバラなチームだ)。臨機応変に動こうとしても付いて来れなければ意味がない。エルドウィンもまだなんとも言って来ないし。


 とかなんとか考えていたら本隊が現れた。



 来たんかい!。



 戦術変更してる暇のない絶妙なタイミングだなあ。結局俺の悩みは無駄に終わったんだね…。


 現れた本隊はすぐさま両分隊のバックアップを始めた。この本隊の出現位置は両分隊のさらに後方だ。

 本隊の人数が一番多いが直接戦闘の出来ない魔法専門兵がいるのであまり前線には出られないのだ。


 だがようやくテラリスも揃った、ここからは計画通りに事を進めよう。免悟は【増撃】を付与して貰うと気獣と共に戦闘に加わった。



 さて、免悟から指示(通信魔法で)を受けたエダルはメンバー全員にメッセージを飛ばすと共に、ネビエラに大魔法の発動を促した。

 もちろんそれは【獄滅龍破】だ。

 そして当然ながらメンバー各員が受け取ったメッセージは「大魔法に備えろ!」だ。



「うふふふっ、まあっかせなさい!。こんな戦い私がサクっと終わらせてあげるわ!。刮目して見よ、我が必殺の一撃をッ!」



 相変わらずワケの分からんテンションで残念美人ネビエラが【獄滅龍破】の詠唱を開始した。


 一応魔童連盟のメンバーたちはフレンドリーファイヤーを食らわない様に立ち位置を修正し始める。

 そしてテラリス部隊がそれを阻止すべく回り込んで新たな駆け引きが始まった。


 しばらくは大魔法の発動と言うアクションを軸に戦闘が動いて行く。

 テラリスは魔童連盟の戦士に絶えず肉薄し、あわよくば大魔法の使い手を攻撃しようとする。

 一方魔童連盟側は守勢に回るが、気獣だけがテラリス本隊の魔法班へと狙いを変えた。


 【獄滅龍破】のエフェクトが目紛るしく姿を変える中、両軍は不気味なくらい落ち着いて戦闘を繰り広げた。

 ただ、【縮尺】でサイズ変更もせずに素で発動された【獄滅龍破】の巨大エフェクトが刻一刻とカウントダウンを宣告する。


 ネビエラが体を張って刻んだ詠唱短縮効果のお陰で、約40秒にまで減少した大魔法【獄滅龍破】。

 ネビエラがその完成寸前で術名を叫ぶべく大きく息を吸った時(そんな事しなくていい)、エフェクトに異変が起きた。


 大広間の天井に収まり切らず上半球が隠れてしまっている球形魔法陣。そこにネビエラが見た事のないひび割れが入り火花のエフェクトが駆け巡った。すると球形魔法はボロボロと崩壊を始めたのだ。



 「はあ゛っ?!」



 吐き出される筈だった術名の代わりにネビエラが変な声を捻り出す。


「…カウンターされた?」


 ネビエラの横でカルが初めて見る大魔法クラスのカウンターを静かに見つめる。


「うっそ、マジで?」


 完全停止した獄滅龍破のエフェクトが砂時計の様に儚く零れ落ちて行く。



「よし!」


 一方テラリスの本隊で指揮官のセティカがクニオを振り返って強く頷いた。クニオは魔法班の班長であり、獄滅龍破を打ち消したカウンター使いの一人だ。

 クニオもセティカの視線に気付いて頷き返す。が、顔を伝う汗をこっそり拭い落としたのは内緒だ。



(ぅわあああぁぁあぁ!、アッブなかった〜〜〜〜!。マジで間に合わないかと思ったあぁーー!)



 カウンターを成功させた4人の使い手は皆極度の緊張で半端ない疲労に襲われていた。だが今は地面に座り込みたくなる気持ちをぐっと堪えて痩せ我慢だ。

 すぐ側でハラハラしながら見ていた魔法班のメンバーもホッと一息つく。


 ぶっちゃけ今のカウンターはギリギリ成功だった。危うくカウンター失敗→大魔法もろ直撃!、の最悪パターンに陥る寸前だったのだ。


 打ち消しカウンター魔法とはメリットとデミリットの差がとてつもなく大きい魔法だ。1度カウンターに成功すればその魔法はそれ以降ほぼ完封出来る。が失敗すればカウンターに費やしたコストは全て無駄に終わる。つまり空振り三振か一発ホームラン、そんな極端な魔法なのだ。


 ところで、このカウンターの説明は間違いなく長くなってしまう。ゆえに誤解を恐れず短めに巻きで行こうと思う。


 そんな訳で簡単に言うとカウンターは他の魔法とは全く違うメカニズムを持つ特殊な魔法だ。

 なんと言っても打ち消すには対象魔法の類型を特定する必要がある。つまり詠唱中に対象の魔法が何なのか素早く判断しなければならないのだ。

 しかも対象魔法と同じくらいの詠唱時間も存在するので、大抵は複数人で組んで詠唱を分担する事になる。


 このように他にも様々な長所と短所が存在し、とにかくカウンターは特別に難易度の高い複雑な魔法なのであった。以上カウンターの説明終わります。


 と言う訳で今回クニオたちがカウンターに手こずった理由は当然ながら【獄滅龍破】を見るのが初めてだったからだ。

 ただでさえ流通量が少ないのに微妙なコストパフォーマンスの【獄滅龍破】なんて実戦でお目にかかることなどまず無い。それゆえに解体コードの特定に時間が掛かったのだ。


 対応する解体コードはある程度大雑把にタイプ分けされているとは言え、そもそも魔法自体が星の数ほど存在する。当然ながら全ての魔法を網羅している使い手などまずいない。使用率の低い魔法の把握はついつい後回しになってしまうのだ。

 特に上級者の装備については現在すでに比較評価の結論が出ている。なので上級者の戦闘において知らない魔法が飛び交う事は殆ど無い。

 あえてカウンターされにくくする為だけに認知度の低い微妙魔法を使うと言う考え方もあるが上級者はやらないだろう。

 カウンターされずに通常の立ち回りで対応されてしまったら、微妙な魔法を使う分だけアドバンテージが積み重なって行くだけだ。



 時々いるんだよね〜、こう言うコスパ無視したマイナー魔法使う素人が。やりにくくて仕方ないよ…。(クニオため息)



 なっ、なにぃぃ…!、ぐぐぐ……。(ネビ怒)



 まあそんな訳で、一流プロのカウンター使いとは成功させて当たり前。と言うか失敗するならカウンターするな!ってレベルだったりする。

 実際にテラリスのメンバーどころか魔童連盟ですら獄滅龍破はカウンターされるだろう事を前提に行動していたのだ。もしこの獄滅龍破が通っていたなら逆に魔童連盟もビックリしただろう。

 ショック受けてるのはネビエラくらいなもんだ。



 ガ〜〜〜〜〜〜〜ン……。


 あちきのゴクメツリュウハが……。



 しかし戦いはネビエラ放置で滞りなくヒートアップして行く。


「中佐!、飛んでる犬が目障りだ、そろそろ打ち落とそう!」


「許可する」


 カウンターする魔法班の周りで派手に飛び回って妨害活動していた気獣だったが、カウンター後も命令に従わずあちこちをウロチョロしていた。

 加重舞陣のせいで動きの鈍い敵相手に無双出来るのでちょっと調子に乗っているのだ。


 そこへテラリスから詠唱を終えた中魔法が発動された。

 真っ黒な闇から現れた煙の塊が次々に放出されて行く。その数は約10体。大きさはほぼ気獣と変わらない。動きも少し気獣よりキレが無いくらいだが殆んど加重舞陣の影響は受けていない。


 中魔法【魔餓魂まがたま】。

 死霊の様なエフェクトを持つ非物理の精神攻撃魔法。生物にしか効果の無い精神的ダメージを与える上級者用の魔法だ。






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