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A・w・T  作者: 遠藤れいじ
43/64

43・フェイジとか言うクソガキ

 エルドウィンが魔童連盟に仲間入りして思った事は、意外とこのチームには人材が揃っていると言う事だった。


 あらゆる手を使ってエルドウィンに勝って見せた免悟は言うに及ばず、シントーヤに至っては能力的に完全なチートだ。

 更にホノもかなり高い可能性を秘めている。


 その他に、子供の中では統率力リーダーシップや総合力でカル。

 そしてもう一人がフェイジだ…。



 そう、このフェイジと言う子供は変な奴だった。



 能力ステータス的には何の突出したものも無く、見た目もショボいただの少年である。

 だと言うのに、子供とは思えない良い動きをするのだった。地味に…。


 なんて言うんだろ?、分かりやすく言うとフェイジは嫌らしい動きが出来るのだ。

 もちろんこれはエロいとかセクハラとか言う意味ではない。


 フェイジは、計ったように警戒の薄い所に攻撃を仕掛けたり、意表を突くタイミングで相手の出鼻を挫いたり、戦いにおけるちょっとしたスキを突くのが何故か得意なのだ。

 

 敵の微妙な心理を読み取って集中力を削ぎ、神経を逆なでする。そんな、人が最も嫌がる行動を取れる少年、それがフェイジだ。


 一見するとあまり目立たないが、敵に回すと一番イヤなタイプだ。精神衛生的に。


 だがこれも天性、生まれ持った才能だ。いきなりやれと言われても出来るものではない。


 とは言え、はっきり言ってテンプレな戦士像から思いっきり外れたこの才能。普通の育成課程では取り除かれてしまうかも知れない不遇なこの能力を、エルドウィンは敢えて育ててみようと考えていた。


 さて、ところでこのフェイジ、実は困った性癖の持ち主であった。


 それは泥棒癖だ。


 これをザックリくせと一言で済ませてしまうのもどうかと思うが、フェイジは浮浪児の頃から他人の家に不法侵入する習性があるのだ。(もちろんどうやっても逃れようもなく犯罪ド真ん中だ。スレスレもギリギリもない)

 しかしまたその潜入能力が半端じゃなかった。とにかく今まで一度もヘマを犯した事が無いのだ。


 まあ基本的には留守宅を狙うのだが、フェイジは人の気配にも凄く敏感だった。なので、もし人がいたとしても滅多に見つかる事はないし、最悪顔バレする事は一度もなかった。


 この世界には隠蔽スキルなんてのは存在しないが、小さな子供の体と鋭い感覚、人の裏を掻く才能。まさに盗賊シーフにうってつけの少年だ。


 当然そんなフェイジの性癖を知った免悟は、不必要な危険を犯すのは止めるよう注意した。でもそれは染み付いた本能みたいなもので、なかなか止める事は出来なかったのだった。


 しかしそこは免悟。


 それぞれの趣味思想は個人の問題と考えていた。だから自己責任でやる以上はあれこれ指図する気は全く無かった。逆にあれこれ指図されるの大嫌いだし。

 その代わり何かあったとしても、免悟は躊躇いなくフェイジの首を差し出す所存だ。


 そう言う所はクールでドライにサクリファイスなのだ!。



 そんな訳で、そう。もうお分かりだと思うが、案の定フェイジは例のアレを手に入れてしまうのである。






 誰だ……、


 俺の名を呼ぶ声が、聞こえる…。


 遠く、深い海の底で封印されし我が眠り…、


「免悟免悟免悟ー!!!」


 うるっせ〜よ…!。


 その日免悟は、海の底で封印されし邪神のように静かに惰眠を貪っていた。

 しかし、突然その眠りを邪魔する者が現れた。子供らが免悟の部屋の扉を激しくブッ叩いたのだ。


「免悟ー!、起きろー!」


 う、うう……。


 蠢くゾンビのように起き上がってドアを開ける免悟。


「こんな早くから…、何?」


「「「もうとっくにお昼だよ!」」」


 免悟が薄く開けたドアの隙間に、ホノがすかさず爪先を滑り込ませる。そしたら子供らが扉を押し開いて、一気に部屋の中に雪崩込んだ。


 押されて床に転がる免悟。

 その間に子供らは部屋の中で勝手に騒ぎ始める。


「免悟、フェイジがまたやらかしやがったみたいなんだ…」


 カルがフェイジの首根っこを掴んで現れた。フェイジは居心地悪そうに愛想笑いを浮かべている。


 そんなフェイジを床に倒れたままの免悟が、まだショボショボした目で見つめた。


「え、またフェイジドロしてきたの?」


「それがなんか凄いヤバそうなんだ」

「人死んでるらしいよ〜」

「今、衛兵が外を走り回ってるし」


「いや!、俺はたまたまその場にいただけで全然無関係なんだって!」


 なんか良く分からないので詳しく聞いてみたら、こう言う事だった。



 例のごとく、フェイジが適当な留守宅をコソ泥していると、タイミング悪く家主が帰ってきた。さっそく身を隠すフェイジ。(すぐには逃げずにギリギリまで隠れるのがフェイジのスタイルらしい…、って知るか!)

 するとすぐに別の人間達が現れて口論が始まった。そして家主と思われる人物がケガを負う気配がした。


 おお、バイオレンス!、いや、サスペンスになるのだろうか?。


 とか思っていると、その家主らしき人物に対し拷問的な尋問が行われた。ただフェイジにその内容は聞こえない。


 しばらくして本当に家主が死んだ。

 て言うか、あ〜〜あ、って感じのそれっぽい空気が流れたので、たぶん死んだのだろう。

 するとその拷問者達が家捜しを始めたので流石にフェイジも逃げた。

 でも、なんだか惹かれるシチュエーションだったので、フェイジは帰らずにしばらくその家を遠くから監視していた。(ハア?)


 家と言うか、結構広い屋敷だ。


 シルシティーには貴族と言う特権階級は存在しないが、ここはそれに近い経済的な富裕層が住んでいる地区だ。(お前そんな所行ってたの!?)


 それからちょっと待ってみたものの、すぐに待ちきれなくなったフェイジはまたこっそり屋敷の中に入って行ったのであった。(やめなさいよ…)


 そこではやはり男達が荒っぽい家捜しを行っていた。その物腰から見てかなり荒事向きの戦闘関係者ぽかったが、かくれんぼやモノ探しならフェイジの敵ではない。

 恐らく男達もこの屋敷は初めてなのであろう。だがそれならば地の利の不利はお互い様。むしろ長年の経験と磨き抜かれたスキルでフェイジが遅れを取る事などまず無い。(なんかカッコいい事言ってる感じだけど犯罪だからね!)


 とは言えやはり安全第一。

 フェイジは誰もいない部屋、それも物が散乱してすでにガサ入れが行われた場所を順番に物色して行った。それなら男達と出会う確率は低いだろうからだ。

 途中で何個か死体が転がっていたが、フェイジは気にせず金目の物を漁って行く。


 そして、ついにフェイジは本命の部屋に辿り着いた。


 とは言え、それはフェイジには預かり知らぬ事だ。なのでフェイジ自身は相も変わらず黙々と物色を開始する。


 そしてフェイジはソレを発見してしまう。


 特にソレは巧妙に隠されていた訳ではなかった。それ故に、その自然な配置のせいで逆に先客の男達も見逃してしまったのだろう。

 フェイジも人の探した後をさらに探すのでなければ見つけられなかったかも知れない。


 まさにソレは、ちょうど人の死角に当たる場所に、違和感無く置かれていたのだ。


 フェイジはソレを手に取って眺めた。

 子供の手の平には少し大きめの完全な真球だ。


 素材は水晶っぽいが少し濁っている。そして中心部には電子部品の基板の様な模様が立体的に刻まれていた。

 もちろんフェイジは電子部品なんて見た事も無いので、完全に謎な物体そのものだ。彼の短い人生の記憶を探ってみても、これが何なのかはさっぱり想像もつかなかった。


 ここでフェイジはそろそろ探索を終える事にした。

 どうやら男達の家捜しも一段落したみたいで、また違う慌ただしさが漂い始めていたのだ。もうここらが潮時だろう。


 フェイジは速やかに部屋を抜け出して屋敷を後にしたのであった。


「っておーーーい、なんかむちゃくちゃキナ臭ェじゃねーか!」(免)


「でも大丈夫、見つかっちゃいないし、後を付けられたりとかは絶対ないから」



「「「当たり前だろ!」」」



「まったく何度言っても言う事聞かないしさ。昔ならともかく、今さらそんな事する必要ないだろ!。

 免悟もなんか言ってやってよ、ヘタ打ってからじゃ遅いんだぜ?!」(カル)


「うん…、そうだな、フェイジもうやめとけ?」



(((なーんか軽いな、おい…)))



「えっ、ええ〜?。

 だ、だって、盗みの美学は男のロマンだぜとっつぁん!」


 速攻であちこちからフェイジに蹴りや拳が殺到する。フェイジがボコスカにされて床に転がった。


 誰がとっつぁんだよ、とか突っ込むヒマもない…。


「チャカしていい所じゃねーんだよ!」

「身の程をわきまえろ」

「そして言葉を選びなっ!」


 さすがこの子ら身内にも容赦ないわ…。


 身も心もズタボロになってピクピク震えるフェイジ。と、そのフェイジの懐から少し大きめの珠がポロリと転がり出て来た。


 もはや自ら床に寝転がったままの免悟が、手を伸ばしてその珠を掴む。なにコレ?。


 星が入ってたりは、しない…、集めたら龍がお願い叶えてくれる奴ではなさそうだ。



「免悟様、少し宜しいでしょうか?」



 突然、免悟の胸の辺りでバカ丁寧な声が鳴り響いた。

 魔王雛の漆黒だった。


「お?、おう、どうした…」


 近頃は免悟のネックレスとして完全に空気と化しているので、免悟のみならず周りの子供らもビックリする。


「免悟様が今持たれているそのアイテム、それ「魔核石」と呼ばれる非常に貴重な物で御座います。何卒損なう事のないようお気をつけ下さい」


「は…!?、魔核石ィ?!!!。

 ソ…、ソレって迷宮核なのか?!」


 ニヒル系キャラよろしく、腕組んで壁にもたれていたエルドウィンが突然身を乗り出して声を上げた。

 ちなみに子供らは全員揃っているが、ハルベル姉弟は今いない。


「えっ?、ソレが迷宮核なの?!」

「マ、マジ…?」

「何それ」


 子供らも半数くらいは驚いているが、残りの半数は免悟同様その名を聞くのも初めてだ。

 ただ、名前から何となく分かる気はするが。


「それじゃあ、その男らの捜し物って、その迷宮核なんだろうね…」


 あーー、なるほどね。


 ホノがいち早くその結論を言葉にする。


 ここで、このメンバーの中で一番「迷宮核」を知っているエルドウィンが、ざっくりとその価値を語って聞かせた。

 エルドウィンも世事には疎いが、迷宮に潜った事くらいはある。


 簡単に言うと迷宮核とは、何も無い所から迷宮を作れるくらい凄い力を秘めた魔法の石、だ。(またざっ…くりだね)


 実際はもうちょっとマシな説明だったのだが、とりあえず一同はそのアイテムが持つ莫大な価値を知って言葉を失う。



 「迷宮核」なんぞ手に入れたらどうなるか?。



 そこにあるのは英雄のみが手にする栄光に満ちた覇道か、それともあらゆる全てを失って地を這う惨めな敗者か。

 とにかく、そんな両極端な未来しか存在しないだろう事が容易に想像出来た。


 地道な努力を馬鹿にするかのごとく極端な選択肢。

 人知を越えた巨大な力に身を任せる事の無力感。


 まったく厄介な問題を持ち込みやがって!。


 エダルら年少組はともかく、世の中を知っている年長組と免悟の鋭い視線がフェイジに突き刺さる。


 え、俺のせい…?、だよねっ!。(フェイジ)



「取りあえず専門家デヒムスを呼ぼう…」



 あらためてこの珠が間違いなく迷宮核である事を魔王雛から確認した免悟たちは、仕方なくデヒムスの意見を聞く事にした。あのオッサンならもう少し詳しい話が聞ける筈だ。


 てな訳でデヒムスを召喚した。代償はエダルだ。

 そして案の定デヒムスはニヤけ面で現れた。エダルに手を引っ張られて…。

(ついでにネビエラとシントーヤも呼んだ)


「オイ、あんまり気軽に俺を呼びつけるんじゃねーぞぉ」


 デヒムスは迷惑そうな、それでいて嬉しそうな、でもやっぱり面倒臭そうなウザい表情を浮かべて言った。だが流石は糞オヤジ、すでにこの場の微妙な空気を感じ取っていた。


(ちょーっと待ってくれ!。そんな事より糞とかウザいとか、呼びつけといて散々な形容詞で飾るのは勘弁してくれよ!)デヒ


(あきらめるデヒ!)

(運命デヒ〜〜♪)

(しょうがないデヒ〜?)


 うおおおぉ〜、いい加減にしやがれーーーー!。

 そんな事してっから全然先進まないんだよこの小説!!!。(ごもっとも)




「続くデヒ!」




最終章て言ったわりに全然終わりが見えないので、少し青ざめてます。


何故か早く作れたので投稿しました。

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