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A・w・T  作者: 遠藤れいじ
28/64

28・ランター亭にて

 いまさらですが、ようやく免悟の魔導書が確定したので、これを第2話に差し込みます。いまさらなのは見通しがついてないのに確定するより書きながら出揃うのを待ったからです、すいません。


 魔法の効果は追々本文でやります。基本使える魔法はすでに出てきているので、後は微妙な奴が多い感じです。



【震動】、【浮遊術】、【索敵】、【魔力盾】、【掌壁】、【光弾】、【研磨】、【業炎破】【処置】、【避妊】、【休息】

 結局免悟の再起動には時間が掛かった。何しろ毒剣を手に入れた直後に飛剣も入手してしまったのだ。さっそくメインの剣がダブってしまうと言う無駄なシチュエーション。

 どうせ貰うのなら魔法にすれば良かったと思うが、免悟的には格好いい剣は大好物。別に何本あっても持てるだけ身に付ける所存だ。

 問題はどう体にぶら下げるかだが…。


 ただ、今日のメインイベントは装備のテストだけではない。これから行われるメンバー全員揃って初のパーティー会議、これ重要。


 場所は免悟御用達の宿屋、ランター亭。

 別に場所は何処でも良かったのだが、と言うかパーティー会議と言っても見た目はただの飲み会。話の内容も当人達はマジだが、恐らく低レベルのぐだぐだトークになる事は間違いない。


 まあ議題内容は置いておくとして、結局飲み食いしながらなので出来れば安くて美味い店を選びたい。そうなるとやはり専門の食事処となるのだが、一応言っておくと宿のランター亭にも食堂はあって飯も出る。ただ、ぶっちゃけあまり美味しくないのだ。特別に不味い訳ではないが、もっと美味いものを出す店はいくらでもある、わざわざ好んで食べる程じゃあない。

 ちなみに作るのは店主のミックさんだ…。


 なまじ仲が良いが故に言いにくい、なんてそんな情緒ある心情など欠片も無い免悟だが、そこはやはり類は友を呼ぶ宿命。今更料理の腕をどうこう出来る訳でもなし、ミックさんとてあっさり開き直る。


「わがまま言わずに食え!」



 嗚呼、なんて無粋な世界…。


 つー訳で、近頃ミックさんが、たまにはうちの宿で飯を食え、とうるさいのであった。ぶっちゃけ売り上げに貢献して欲しいらしい(泣)。

 そこで仕方なくたまにはランター亭で食うか、となったのだ。一応ハルベル姉弟もランター亭に泊まっているし。

 それに直ぐはっちゃけるガキ共もいるし、人気の少ないここなら気兼ねなく騒げるしね♪。


(そんな理由聞きたくなかったよ!)


 ちなみに場所選びに関して交渉の余地が出て来たので、当然ながら子供らが自動的に値引き交渉を開始する。

 子供にしてはまあまあな交渉術を持つ彼らだが、基本はとにかくしつこく食い下がるのがメイン戦術だ。

 金に対するそら恐ろしいまでの執念、そして疲れを知らない若いエネルギーと有り余る暇。忙しく生活に疲れたオッサンにはきつい相手だ。ミックさん早々に白旗掲げて免悟に泣きついた。


 そんなこんなで色々あった訳だが…。


「なんでデヒムスまでいるの?」


 パーティー全員が大卓を囲み食事を始めていたのだが、ここでやっと再起動を果たした免悟が違和感に気づく。ちゃっかりデヒムスがエダルの横に座っていたのだ。


 ゴツいオヤジ系デヒムスは、基本自分から動かずに指図する専門だが、今日は気の利くサラリーマンのような腰の軽さでご機嫌を振り撒き、場を盛り上げていた。


「免悟、デヒムスさん食事代の半分持ってくれるんだって!」


 免悟の隣でホノがフォローを入れる。


 え?、金か。金に釣られたんか?。

 つーかデヒムス、現ナマ出して来たんか、直球だな!。もう小細工なしか?。


 だが、現金を出されては子供らに選択肢は存在しない。デヒムスは完全に子供らの金の亡者っぷりを把握しているようだ。エダル大丈夫だろーか?。


 案の定デヒムスが豪快に笑いながらエダルの肩に腕を掛けようとする。が、素早くその手を払い除ける者がいた。カルだ。


「ちょっとデヒムスさん、困りますね、あんまり馴れなれしくエダルに触らないで下さいよ?」


「イヤイヤ、別にそんなつもりは無いよ、近くだからたまたまそうなるだけだよ」


「じゃあエダルの場所変えて貰ってもいいですか?、エダルは人見知りする方なんであまり知らない人の隣はつらいと思うんですよ」


「えっ!、そこまでする事も、ないんじゃないか、な?」


 その時デヒムスを挟んで逆隣にいたフェイジがデヒムスの肩をつつく。すると二人はコソコソと商談めいたやり取りを交わし始めた。そしてデヒムスがなにやら用紙にペンを走らせる。その間にフェイジはカルにOKサインを出して、そしたらそれを確認したカルがエダルに耳打ち。


 何?、この長たらしいやり取り…。全然必要性を感じないし、嫌な予感しかしない…。


 用紙をフェイジに突き出したデヒムスが振り返ると、エダルがちょうどデヒムスのコップに酒を継ぎ足している所だ?。そしてデヒムスと目が合うと、エダルはちょっとぎこちないがエフェクトが付きそうな位の笑顔を見せた。


 デヒムスが悶死した。



 ナニやってるの君ら…。



 しばらく免悟は不審な目で監視を続けた。

 つまりフェイジがデヒムスとの交渉役、んでカルがエダルの振り付け役。エダルが接待役。


 何処のホストクラブだよっ!。


 後で分かったのだが、デヒムスが何かを書き込んでいた用紙は、各種サービスが書かれた誓約書だったようだ。


「大丈夫だよ!、カルとフェイジがちゃんと管理しているから」


 いやいやいやいや!、なーんか違うよホノちゃん!。

 そもそもエダルにデヒムスみたいな変態を近付けちゃダメでしょ!。


 エダルはエダルであんまいまいち意味分かっていないぜあれきっと、アイツ結構バカだから…。


 エダルの基本スペックは残念な天然ちゃんだ。ただ何となくみんなに期待されているってのは分かるのだろう。とりあえずみんなの役に立ちたい一心で振られた役割を目一杯頑張ってる感じだ、天然なりに…。


 それにしても…、これはどーなんだろ?。一体どっちが被害者で、どっちが加害者なんだ?。

 とりあえず普通ならエダルがピンポイントで被害者確定な気がするが、本人はそれには気付かず一生懸命頑張っているし。


 はあ…、まあいいか。金儲けの邪魔したらコイツらむっちゃ怒るだろーし、デヒムスもガルナリーじゃちょっとは知られた商人としての世間体ってのがある。そう無茶な事にはならんでしょ。


 て言うかどいつもこいつも本筋のストーリーから外れた行動ばかり取りやがって、一体どう収拾つけるつもりだ。ちゃんと収まるんだろうな!、まったくもう俺は知らねーからな!。


 半分ヤケになって免悟は酒をあおった。



「さ〜て、それじゃあここからは私の出番のようね!」


 ふいにネビエラが酒杯を持って立ち上がる。けど顔を真っ赤にして「プハ〜〜」とか言ってますけど?。


「さあ、そろそろ例のアレ決めるわよ〜!。

 そう!、我らがパーティーの呼び名、パーティー名をねっ!」


 とたんにあちこちで喚声が上がる!。


 そう!。今日のこの会合の議題はパーティー名の決定、これのみ!。そうなのです、パーティーの名前を決めるためだけにこの会議と言う名の飲み会が開催されたのです。


 そしてパーティー名が決まった。(はえーなオイ)

 まあチャッチャと決めなきゃこのままだとキリが無いからな!。



 その名は「魔童連盟」。



 誰が考えたか今となっては分からないが、ヘタに面白半分やノリで決めたら間違いなく後悔する姿が目に浮かぶ。つーかこのメンバーが遊びに走ったら後で身悶えする程の黒歴史が産み出される可能性大!。

 なので免悟もここは真面目に行かせてもらいました。多少族っぽい気もするが、でも基本この世界のネーミングは大抵中二テイスト豊かだからこんなもんだ。

 とりあえずなんとか無事にマシなネーミングで着陸成功です。あ〜良かった。

 

 ネビエラなんかは「ネビエラルズ!」とか言い出すし、お前のチームじゃねーんだよ!。コイツは直ぐに自分自分だよ。


 シントーヤはシントーヤで何故か横文字ばっか使いたがるし。インフィニティー〇〇とか〇〇アブソリュートとかビジュアル系バンドじゃあるめーし!。

 まさかシントーヤがこんな痛いセンスしてたとは意外だ。文学系中ニ病患者とでも言うのだろうか、早く目を覚まして欲しい。


 と言う訳で、チーム名、パーティー名、どっちでもいいが、とにかく名前の決定を重視したのには訳がある。


 いまさらだが、この世界には冒険者ギルド的なものは無いが、実は傭兵ギルドと言うのがあった。そしてそのギルドには集団として登録する必要があるのだ。つまりパーティー名が必要となる。

 免悟たちはこの傭兵ギルドに自分たちも登録しようと考えていたのだ。


 異世界もののテンプレに良くある冒険者ギルドは国境を越えた独立組織として普通描かれるが、この世界にある傭兵ギルドと言うのはそんなに大した機関ではない。

 ぶっちゃけ国が戦争等の緊急時に民間の武装集団を掻き集める為の単なる出先機関に過ぎなかった。


 モンスターが蔓延る物騒なこの世界には、個人的に武力で生活の糧を得る者が大勢いる。そんな潜在的な戦力を管理する便利なシステムとして各国が独自に設置しているのだ。

 特にガルナリーみたいな前線都市はハンターが良く集まるので、都市防衛の際は民間の余剰戦力を利用すれば、常駐兵はかなり少なく抑えられる。


 登録する以上、武力的なランク付けをされたり、信用度を測る為にある程度情報を握られたりはするが、登録する傭兵側にも当然メリットはある。

 まず、登録すれば色んな仕事を見つけやすい。さらにローンや保険等の制度もあるし、協賛店からの各種割引サービスも存在する。


 なんだかかなりリアル臭いお話しだが、免悟はともかくつい最近までその日の食事すら事欠く浮浪児だった子供らには見過ごせない特典だ。


 つまり具体的に免悟たちはこの割引制度を利用しようと言うのだ。と言うのもそろそろカルたちもスラムで寝起きするのは限界だったからだ。一般的にはそれほど豊かな生活とは言えないが、スラムと言う底辺で暮らすには不釣り合いと呼べる程にはなって来ていた。実際に時々身の危険を感じる事があるらしい。

 なのでホノやエダルと同じく全員街中の宿屋に引っ越す事にした。その際に子供らは傭兵ギルドの割引制度に目を付けたのだ。(相変わらずお金には敏感でいらっしゃる…)

 これを利用すれば宿代が1割引される。基本長期滞在だから、たった1割引でも馬鹿にならない。

 幸いミックさんちのランター亭は傭兵ギルドの協賛店だ。今泊まっている免悟やホノ、エダル、ハルベル姉弟も割引き出来るからミックさんも渋い顔をするかも知れないが、子供ら6人が新規でやって来るので相対的にみれば売り上げUPだ。

 どうせ免悟たち以外の宿泊客は殆どいない。そもそも免悟がこのランター亭を紹介されたのもギルドからの斡旋だったし。


 そして協賛店にもメリットとデメリットが存在する。

 当然の事ながら1割引のサービスを強制される訳だが、これには特に補助金とかは出ない。自助努力で何とかする感じだ。その代わり行政や関係者が店の宣伝や斡旋をしてくれる。

 ランター亭みたいな知る人しか知らない隠れた〇店な所は結構ありがたいのではないだろうか?。


 てな訳で、公式にきっちり登録される以上、後で後悔する様な変なチーム名を付ける訳にはいかない。変更は可能だが、手続きが面倒らしいのであまり冗談は出来ないのだ。


 案の定あっさりカオス的な飲み会末期の惨状を晒すみんなの姿を見て、なんとかチーム名を確定出来た事に免悟は安堵の息を吐いた。

 なにしろ免悟はチームリーダーだ、お前たちはドコの者だ?、と問われて「俺たちは槍々戦士団だ!?」とか「フランベルジュ・ナイトサファリです…」とか名乗った日にはSAN値ガリガリ削られてく気配が半端ない、無意識に膝つくレベルだ。


 だいたい「フランベルジュ・ナイトサファリ」ってなんだ?、と聞いたら、意味なんて無いよ!、と真顔で答えやがったシントーヤ、お前バカだろ?!。とりあえず頭の中に涌いてる虫を今すぐ駆除して下さい。


 流石はネビエラの血縁者だ、血は争えんぜ。もしかしたら俺たちはとんでもない奴らを仲間にしてしまったのかも知れない。

 と、免悟は自分の事は棚に上げて泥酔の泥沼の奥へと沈んで行ったのでした。


 ちなみに例のべ〇リット、「魔王雛の漆黒」はどうなったかと言うと。どうしても自分を免悟の身に付けて欲しいらしく、ペンダントとして免悟の首に掛けられていた。

 なんと、卵の胴体から小さな手をニョッキリ出現させると、ペンダント用のチェーンをギュッと握りしめたのだ。

 ポケットにでも入れて、その内わざと落っことして失くしてしまおうと思っていた免悟には予想外な展開だ。

 一応試しに結構マジで振り回してみたが、手が離れそうな気配は全くない。なんちゅう握力…。


 つーか、これ身に付けなきゃなんないの?、気持ち悪いんですけど…。しかもオチも無いし…。


 オチ無いよ。



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