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A・w・T  作者: 遠藤れいじ
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10・免悟のアイデア

 翌日、免悟と子供たちは街郊外のとある空き地に集合した。と言うか、昼まで寝てた免悟を、子供たちが宿まで乗り込んで来て連行したのだ。


 とりあえず装備を背負わされた免悟は、子供に袖を引っ張られながらもあちこちで朝食を買い食いしながらこの空き地にやって来た。

 話を聞くと、昨日の採取品は頑張って売り先を選んだおかげで総額1万Gになったようだ。特に香草が高く売れたらしい。


 つまり、今日もやる気満々なのだった。


 あのなぁ…、お前ら昨日鎧狼5匹に襲われたんだよ?。現金な奴らだ、あの時は無茶苦茶びびってたじゃん。逆に怖くなってやる気を失うかと免悟は思っていたくらいなのに。


「まあやる気あるのはいいんだけどさ、もう少し何か対策考えないとあんな怪我ばっかりしてたら利益薄いぞ?」


 実際に免悟の飲んだスタミナポーションが1万G、治療符4枚で2万G。治療代を請求する訳ではないが、こんな無駄コスト体質は早急に改善しなくちゃならん。


 対策、つまりアイデアだ。


 とは言え相手は子供。そんな簡単にアイデア沸いて来るなら苦労してねえよな。子供らもそう言われて目を逸らす、まあそらそうだ。


 しょうがねえ、大サービスだぞ?。ふふっ、俺がちゃんとアイデア考えて来てやったよ!。


「…ホントに?!」

「さっすが兄ちゃん!」

「やっぱ男前は違うな!」

「以下略!」


「フハハハ、俺を褒め称えるが良い!。おい誰だ手を抜いた奴は…」


 免悟のアイデアは簡単。子供たち全員に槍を持たせる、ただそれだけだ。


「「「「は…?」」」」


 なので、子供らも免悟のバカを疑ってしまう。


「いいか、別にお前たち自身が鎧狼をどうこうする必要はないんだ。

 要は俺が鎧狼を各個撃破するから、その間の時間稼ぎが出来ればそれでいいのさ」


 つまり免悟が鎧狼を処理する間、怪我する事ないよう守備に専念してれば良いのだ。

 別にカウンターを決めるだとか、急所を狙ったりとか難しい事は一切必要ない。単に槍で牽制して、懐に飛び込まれなければそれでいい。至極簡単。


 な、なるほど…、と子供たちの頭が機械的に上下動する。まだなんか半信半疑だ。


 そしてその後、それぞれが身体に見合った「槍」を構えた子供たちは不審な目付きで免悟を見た。


「ほんっとーにコレで合ってる…?」


「…………うむ?(汗)」


 たし、かに、コレは免悟の想像とは少し?、違う気がする。なんか違う。


「「「槍っつーか棒だしコレ!!!」」」


 ん…、どう見ても攻撃力はあんま変わってない…。そして見るからにショボい。

 ああ、正直普通に棒を持った子供、単にモブキャラ少年団が誕生しただけだ。


 スマン、あっさりやられる姿しか思い浮かばないや…。


 だけど武器屋で売ってる本物の槍って高いんだよね、しかも×8人だし。


 う〜ん、だが今さら「ごめ〜ん、なんか

想像と違ったわ〜」では済まされない、雰囲気的に…。


 少々マズいな…。免悟は慌てて脳細胞をフルブーストさせる。かつてない危機感が、珍しい程の超演算能力を発揮し始めた。


 おっ…、こっこれだ!!。


 つー訳で、免悟は「棒」の先に釘を打ち込んでみた。要は釘バットのパクりだ。

 棒の先から数十cmの範囲に小さな釘を打てるだけ打つ。そして一番先端には特別デカい釘を打ち込む。


 ちなみにこの世界にも鉄は一般的な素材として出回っている。ただ一品一品がハンドメイドなので加工費が少し割高なだけだ。だが釘くらいなら大した事はない。


 はっきり言って子供らの見た目はほとんど変わってない。だがしかし、攻撃力は確実に大幅UPだ。

 単なる日用品の棒が、いきなりヤバめの凶器にクラスチェンジ!。

 攻撃面積が大きくなって当たり易くなったのに、逆に威力が上がるなんてどんだけお得なんだろう。正直ちょっと体に引っかけただけでかなりイタい。


 子供たちも明らかに凶器となった棒に結構手応えを感じたのだろう、嬉々として振り回し始めた。


 ふふっ、でもモブキャラに変わりないのは内緒だな。


 よし!、免悟たちは勢いそのままに狩りに飛び出した。そしたら速攻で鎧狼と遭遇した…。


 ほんとコイツら良く会うな…。


 そこでふと、免悟は思った。もしかしてこの鎧狼、相手選んでケンカ売ってないか?。

 詳しくは知らないが、とにかく鎧狼はズバ抜けて優秀な索敵を持っているらしい。その抜群の索敵能力と機動力で、奴らは時にベテランハンターすら出し抜くと言う。

 そんな鎧狼とこんなに高確率で出会うのは絶対に偶然なんかじゃありえない!。間違いなく見つけ次第襲われてるのだ。


 くっそ、鎧狼ムカつく!。

 なんつー憎たらしい奴だ。


 つーか街周辺の序盤モンスターでコレって、もうちょい設定ユルくならんかねこの魔法世界。ホント現実世界並みのクソゲー仕様だな。もっと楽に稼げるザコモンスターはいないのか?!。


 と言う訳で、とりあえず免悟と子供たちは襲い掛かる鎧狼を迎え撃った。

 しかし本日の鎧狼は4匹。うん、昨日より一匹少ないな、やったろうじゃん!。


 出来れば二匹仕留めたい。と思ったが、やはり殺せたのは一匹だけだった。


 鎧狼は少しでも形勢が不利になるとすぐに退却しやがる。しかも足があるから、戦うかどうかの選択権は常に鎧狼にある。

 集中砲火で瞬時に畳み掛けないと、ちょっとでも命の危険を感じたら速攻で逃げられてしまうのだ。


 ちっ、今回は4匹だし、子供たちの心配もしなかったのでかなり殺せると思ったのだが、なかなかやはり鎧狼は手強い。

 フッ、だが俺たちをカモ扱いするならすればいい。むしろ逆に探す手間が省けてサンキューだぜ。


 免悟の中で、子供たちのメイン役割である運搬の他に、鎧狼ホイホイと言う新たな役割が加わった瞬間だった。


 いずれ俺たちの姿を見れば、尻尾巻いて逃げ出すくらい狩り尽くしてやるぜ!。


 ちなみにこの時、いわゆるモブキャラホイホイ少年団のみなさんは、あちこち怪我だらけで(同士討ち含む)大地に転がってぐったりしていた。

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