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白と蒼の炎  作者: 悠凪
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予兆

「テスト終わったぁぁっ!!」

 校門を出るなりルカは雄たけびのような声を上げた。

 それに盛大にため息をつき呆れた顔になったのは織だった。

「お前、ほんと恥ずかしい奴…」

「だってこれで夏休みだよ。こんな嬉しいことないじゃん」

 満開の桜のように笑ったルカに織は冷たい視線を投げかける。

「お前が夏休み補修じゃないのは誰のおかげだ?」

「もちろん織のおかげ。感謝してるよ」

 織の鬼畜のような家庭教師ぶりで、ルカの苦手科目はかなり良い点数になっているはず。

 いつもなら、そこそこで良いやと思っているルカも、あの夢を見るのが怖くてほぼ毎日朝まで勉強していた。

 疲れ果てて眠ってしまうと夢を見る機会はぐんと減り、数回だけうなされている自分の声で目が覚めたことがあるだけだった。

「でも、今回は成績いいかもな」

「でしょ?私もそう思う」

「こんなに頑張れるんなら夢も悪くないってことじゃないか?」

 眼鏡のレンズ越しににやっと笑った織に、ルカはムッとして睨んだ。

「そう思うなら織も見てみたらいいんだよ。本当に怖いんだから」

 思い出しただけで、あの匂いと熱風の熱さが感じられそうでルカは身震いした。

「あ、そうだ。オレこっちの本屋に寄って行くけどお前はどうする?」

 学校の最寄り駅はルカたちの駅より大きくて何でも揃っている。織は参考書が欲しいらしく買いに行くと言った。

「んー…。私は先に帰る。すっごい眠いから参考書なんて見たら倒れちゃう」

「ん。分かった。まぁ今日くらいは寝ても良いんじゃないか」

「うん、そうする。じゃあね」

 二人は軽く手を振り合い駅前で別れた。

「あ」

 数歩歩いたところで織は振り返り、ルカを呼び止める。

「何?」

「創さんのとこ、寄らずに帰れよ」

「どういうこと?」

 ルカは意味が分からず聞き返す。しかし織はそれ以上は何も言わずに離れていった。

「何なの?変な織」

 ルカは首をかしげながらもさして気にしなかった。おおかたこないだのことを麻貴に聞いたのかなと思う位だった。

 ルカはまっすぐ地元の駅まで帰ってきた。そしていつもと同じ道を歩く。

「あー!ルカちゃん」

 駅から少し離れた所で誰かに話しかけられる。振り返ると創がいた。

「あれ、創さん?」

 ルカを見つけて創は満面の笑みで近づいてきた。相変わらず綺麗な顔立ちをしている。

「最近会えなかったから寂しかったよ。テストは終わった?」

「うん。今日で終わり。創さんは何してたの?」

「オレ?オレは買出しの帰り。うっかりして発注するの忘れたのがあって」

 創は手にしていた袋を軽く上げて笑った。

「お店空けて大丈夫なの?」

「今は殆どお客さんいない時間だし、一応外出してますって紙貼って鍵は閉めてきたよ」

 創はるかと並んで歩くのが嬉しいのか単に上機嫌なだけなのか、鼻歌を歌っている。

「そうそう、最近夢はどうなの?」

 ふいに聞かれたことにルカは面食らった。

「なんで?」

「こないだ店に来てたとき言ってたじゃん。夢見悪いって」

「良く覚えてるね」

「そりゃオレの大好きなルカちゃんのことだしね」

 爽やかな笑顔で創は言ったが、やはりルカには度が過ぎて見えて胡散臭い。

 悪い人ではないけど、この軽さはどうかと思う。

「創さんの言葉は信じない」

「えー。ひどいな。本気なんだけど」

「そんなに軽く言われて本気だなんて思えないよ。だいたい創さんと私とじゃ年が違いすぎるし」

「年なんて関係ないことない?それに軽くなんて言ってないし」

 ニコニコして創はルカの顔を覗き込んだ。綺麗な顔が近づいてきてルカは少しドキドキした。

「も、もう。絶対信じないもんね。あ、夢は少しマシになってたような気がするよ。勉強しててあんまり寝てなかったのもあるけど」

 ルカは話題を変えようと夢の話をした。創はルカの言葉に一瞬驚き、そして。

「じゃあ、まだ目覚めてないんだね」

 そう言った創の顔はいつもの創とは違って陰惨で妖艶な顔だった。

 数歩先を歩くルカの後姿を、じっと眺めた創の顔。

 それはルカが夢の中で見た鬼に良く似ていた。


 

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