ホワイトデーは3倍返しと言いますが愛を3倍入れましたという言い訳は通用するんでしょうか?
少しフライングでホワイトデーネタです
この辺りから作者が残念な状態でいつ投げるかもわからなくなったので半分気合と使命感で書いてる感があります
そんな裏話はおいといて人物表
エウナ
吸血鬼 イベントに疎い そろそろここに書くネタがない
メリーさん
幽霊 イベントに聡い
叶 夢
メイド 世間知らず
「はい、ユメさん」
「これはどうもありがとうございます」
私はメリーとユメが何やら渡しあっている様子をすでに空となったカップと手に持っている本を使って回避する。何…何なの?
ちらりと見るとユメはもらったのであろう猫耳を頭に装着してる。ただし、般若を被った状態で…
正直言ってかなりに怖い。何せ起きたら目の前にメイド服を着た般若の面があったのである。何の呪いかと思ったわよ。
さらに今、般若にプラスされて猫耳が付いた訳で…メイドに般若の面、そして猫耳。何というか…ものすごく怖い。
それはもう普段の彼女ならばきっと似合っていたであろう猫耳も…般若のせいですべて台無しである。メリーもその辺はわかっているのか、ユメとあまり顔をあわせようとしない。
そういうわけで私は空のカップとまったく内容が頭に入らない本を読むことで、この奇妙なメイドに触れない用にしているのである…誰か助けて。
「エウナさま」
「っ!?な、なに?」
必死に本を読んでいる(振り)をしていると、突然般若が話しかけてきた。昨日まで小さかった無表情っ子が今日起きたら般若を被っている…この恐ろしさ、誰かわかる?
「お代わりをお持ちしましょうか?」
「え、ええ…お願い」
どうやらお代わりを入れてくれるらしいので空のカップを差し出す。今、私の武器が1つ消えていった。
私の目の前で注がれていく、茶色い何かと甘い湯気の香り。…ごぽごぽと泡が出てるんだけど…何度なのかしら。
「えっと…これは?」
カップに入れられているのは明らかに紅茶ではない。もしかして毒…?いやまさか…ね?
思わずメリーの方を見るがすごい勢いで首を横に振られた。彼女も何かわからないらしい。
「ホットチョコレートです」
「そ、そう…」
ホットチョコレート?何で?というかコレホットっていえる温度なの!?
まて…落ち着くのよ私…今のですべてヒントは出たはず!まずは日付ね、今日はたしか…
壁のほうを見ると、数十年前の日付のままで風化している日捲りカレンダーが見えた。…誰がめくってたんだっけ?
思い出そうとしてみたが、頭に鋭い痛みが走ったのでカップの液体を一口含む。
「っあつ!」
「どうかしましたか?」
「ひ、ひえ何でもないわ」
ひ、日付は諦めましょう。私は何とか平静を保ちながら思考を続けようとする。日付がダメなら…そう!メリーがユメに何か渡してたじゃない!アレがヒントのはずよ。
何か渡す日は…クリスマスか…誕生日か…後なにかあったっけ?
まず、誕生日の線は私もメリーも知らないだろうから消去しましょう。私だけ忘れているという可能性もあるけれど…それは考えたくもない。
次はクリスマス…クリスマスか…
「メリー?」
「はいはい、何ですかー?」
「今晩は、にゃひケーキ?」
「…?ケーキがいいならそうしますけど…舌大丈夫ですか?」
…どうやらクリスマスじゃないらしい。となると後はなんだろうか。ああ、舌が痛い…。
「はい、エウナさん」
「…ありひゃとう」
何かを察したメリーが水を持ってきてくれたので口を癒す。ちなみに般若は地獄のような暑さのホットチョコレートを入れると、静かに部屋から出て行った。帰ってくるまで後どれだけの猶予があるか…
しかたない…一人で考えていても答えは出なさそうなので、ここは偉大な親友に聞いてみることにしよう。
「ところでメリー」
「はいはい」
「今日って何の日?」
「えーと…ホワイトデーってしってます?お返しの日の…」
ホワイトデーか!そのとき、私に電流走る。
いや、実際に走ってないんだけれど。
それにしてもホワイトデーか…ホワイトデーね…うん、言われて見ればホワイトデーよ。確かバレンタインの時は…
『ばれんたいんちょこです』
思い出そうとしたら脳内で舌ったらずの声がした。うん、確かに貰ったわね。うん…そういえば忘れてたわ…
「拙い!」
「ど、どうしました!?」
思わず声が出る。というか何も用意してない!コレは拙い…何が拙いかわからないけれども色々と拙い。
かくなる上は!
「メリー!」
「はい!」
「今何時!」
「そーね、だいたいねー」
カップが割れた。
「…大体1時です」
1時か…お店は仕舞ってるわね。いや、待つのよ私!ホワイトデーは12時から…つまりまだ明日の夕方がある!
「明日チョコレート買いに行くわよ!」
「はぁ…チョコですか…」
「まだホワイトデーは終わってない!」
そこまで叫んだところでユメが帰ってくる。ふふ…原因がわかった私にもう恐れるものは!ごめんなさいこっち見ないでください怖いです。…ここでがんばらなくていつがんばるのよ!
「ゆ、ユメ!」
「はい、何ですか?」
「明日チョコレート買いに行くわよ!」
言った…私はついに言った…
「そうですか」
アレ?反応が薄い。アレ?どうして?
「あのー…ユメさん?」
私が固まっているとメリーがユメに話しかけた。
「はい」
「ホワイトデーって知ってます?」
「はい、聞くところでは般若の戦いが起きる日だとか」
誰に聞いたそんなことを。
「そ、それじゃそのお面は?」
「…?ホワイトデーとはこういうものではないのですか?」
「…」
私の今までの葛藤は何だったのよ…
「どうかなさいましたか?」
「ユメさん…エウナさんはちょっと疲れてるんです…そっとして置いてください」
「ですが…はい、わかりました…」
無言で空を仰いでいると、そんな会話が聞こえてきた。
□ □ □ □
何はともあれ次の日の夕方、チョコレートを買いに街まで来たのだけれど…見事に閉店ぎりぎりね。
見ると他の店はシャッターが下りているし目的の店も明かりに元気がない。
「やってるんでしょうかねー?」
メリーも同じ考えなのか首をかしげながら店のほうを見ている。
「やってるでしょ…たぶん」
私はそういいながら店の扉を開けると、ユメがトテトテトテと小走りでショーケースに近づくとにらめっこを始めた。ちなみにユメは般若だけ外した状態で来ているつまり猫耳メイド…また無駄に似合っている。
「まだやってる?」
カランカランというドアベルの音を聞きながら声を掛けると、定員の子が慌てたように顔を上げた。
「も、申し訳ありませんが…本日は…」
「そう…それは残念ね」
うーむ…やっぱり遅かったか。しょうがない…お返しは何か別のものに…
「!?あ、あの!」
「ん?何?」
私がメリーに説明しようと振り向くと定員が何かに気づいたように声を掛けてきた。
「えっと…もしかするとエウナ様でしょうか?」
「え、ええ…そうだけれど」
私…何かしたっけ。
「知り合いですか?」
「知り合い…なのかしらね?」
メリーが不思議そうに聞いてくるけれども、私には覚えがないから何もいえない。
「て、店長から聞いてます!その節ではお世話になったそうで…」
「そう…なの?」
本当に昔の私は何をしたのだろう…?
私が本気で悩んでいると裏から気の強そうな女性が出てきた。あー…何処かで見たことあるような。
「ちょっと何時まで!…ってエウナ様ですか!?」
「ええ、久しぶりね」
とりあえず微笑んでやり過ごす大人な対応。
「覚えていたのですか、てっきり忘れてるものだと思ってたのですが…」
私がそういうと涙ぐみ始める彼女。
(ちょっと…エウナさん誰ですかあの女)
メリーが服を引っ張りながら小声で聞いてくるけれども、身に覚えがないわよ。
(エウナさん…聞こえてるんですか?エウナさん…!)
「あー…チョコレートがほしかったのだけれど…もう閉店だったみたいね」
とりあえずメリーは無視して聞いてみる。
「そんなとんでもない!エウナ様の言うことなら何時までも開きますとも!」
「そ、そう…それじゃ少し買いたいのだけれど」
(へー…私の知らないところであんな綺麗な人とコネ作ってたんですかー…そうですかー…)
…徐々にメリーの力が強くなって肌に食い込んでくる。アレ?私悪くないよね…?
「ゆ、ユメ?」
「はい」
「ほしい物は決まった?」
(応えないってことはそういうことなんですかー…ほー…そうなんですかー…)
このまま話を続けていると大変なことになりそうなので、さっきから商品を見つめていたユメに聞いて見る。お願いだから早くして…メリーの指が痛い…。
「はい、ボクはコレがいいです」
「えっと…本当にそれなの?」
「はい、コレがいいです」
ユメが指差したのは1ホールのチョコレートケーキだった。…1ホール、円形のアレよ。カットされてないアレ。
(…)
メリー…そろそろやめて…。
「め、メリー?」
「はいー、何でしょうかー」
…笑顔が怖いと思ったのは久しぶりよ。
「あなたも何か買う?」
「え…?」
痛みを堪えながら聞くときょとんとした顔になって聞き返してくる。ついでに指の力も弱くなってやっと一息。
「いえ…ユメも買うのだからあなたもどう?」
「えーっと…」
何やら悩んだ顔をしているメリー、そしてなぜか私の腕に抱きついて無言の講義をしてくるユメ。…何なの?
「私はいいですよー」
「そ、そう?遠慮しなくてもいいのよ?」
「遠慮なんてしてないですよー、それよりも今晩お酒に付き合ってくれるだけで満足です」
「そう…それじゃコレもらえるかしら?」
要らないと言ってるのだから無理にいう必要もないでしょう。ということで、ユメの選んだケーキを買って戻ることにしましょう。
「そ、そんなお代だなんて!」
…なぜか顔を赤らめてそう言ったとたん、メリーの指が私の腕についてユメの抱きつきが強くなった。それに伴い私の腕が臨界点を突破して素敵な形になるまではあとわずか!
「いえ…いいのよ商品を買ったら代金を払う…その辺はきっちりするものでしょう?」
ああ…骨がぎしぎし言ってきた…コレはかなり拙いかも。
「そうですか…それではありがたくいただきます…」
何とか代金を渡すてユメとメリーを引っ付けたまま外へ出ると、二人とも静かに離れた。ああ…自由って素敵。
「エウナさま」
「ん?何?」
私が自由を謳歌しながら手を動かしていると、ユメが空を見上げながらいった。手にはどこから出したのか、水晶があしらわれている杖。
「いつもの感謝の気持ちを返そうと思いまして」
「…?それってどういう…」
『わが名のものとに命ずる』
私が全部言う前にそんな呪文がユメの口からこぼれると、彼女から光の柱が空へと上っていった。
「へぇ、時星術ですかー…珍しいですね」
その光景を見たメリーが隣で面白そうに言っている。え?ナニソレ?
混乱しながらも、しばらく光の先を見つめていると空から何かが降ってきた。えっと…これは…雪?
特に冷たくもない、季節外れの暖かい雪。明らかに自然の産物ではないそれは静かに降り注いでいる。
「コレが…ボクからのお返しです。気に入ってはもらえましたか?」
うん…正直言って原理とかはまったくわからないのだけれども。
「雪の降るホワイトデー…ですか」
「へぇ…素敵じゃない。そうと決まれば今日は宴会と行きましょう。理由はもちろん!」
今は大きな奇跡を起こした、小さな魔法使いを称えましょうか。
たとえどれだけ人気がなくとも!
読んでくれている人が居る限り私は最後まで走り続ける!
泣いても笑ってもつまらなくても誰も読んでなくても次ラストです
ということで少しでもお楽しみいただけたら感謝感激