あなたの夢は何ですか? 幻想編
はい、幻想編です
色々と辛かったです
本当に…
※このお話しは現実編で倒れてた人たちが何を見ていたかのお話です。
ま、まさかこっちから読み始める人は…居ないよね?
ということで
人物表
叶 夢
メイド メイド要素0ですとも
柚香
人間 女子校生 依頼主
霞日 シュン
人間 不幸な学生です ええ、本当に
病院の少女
病院に居たあの子です 名前はきっとない
覆面の男
ドラクエのガン○タ見たいなのを想像してください ですが決してガ○ダタではないです 誰かわからない人は筋肉ムキムキのパンツ1枚の男が覆面被ってるのを想像してください
ミツキ
クラゲ ふわふわ
気が付くと周りは真っ暗闇、その中で出口のようにぽっかりと白い扉が見える。…呼ばれてる?。
『ダメですよ、エウナさん』
どこからか少女の声がする。
『永遠に見える夢なんて無いんですから、行っちゃダメですよ』
でも…呼ばれて…
『あそこがどんなに幸せな世界でもそれは幻想なんです。幸せだったころには戻れません』
あなたは…だれ?
何でだろう、私はこの声を知っている気がする。楽しかったあの日、いつまでも続くと思っていたあのころ。どうして今は思い出せないの?
『…思い出さなくてもいいですよ』
誰かの声が優しく私にそういう。でも…思い出さないと…あの子が…
『ほら、早く戻ってあげないと。メリーさんが泣いてますよ』
メリー…そうだ、メリーは…
『エウナさん、幸せですか?』
私は…
そこで私の意識は闇に閉ざされた。
□ □ □ □
ここは…?
少女…柚香がふと目を覚まして辺りを見渡すと、見慣れない教室。えーと…
何かを思い出すかの様にしながら首をかしげる柚香。確か…ユメさんがジャグリングをしてー…アレはすごかったー、最後のほうとか一緒に回転してましたし。
そこまで思いを巡らすと彼女は思考を止める。しっかりするんだ柚香!今話を進行するのは君しか居ない!やめて!このままだとまたグダグダ進行とか言われるー!
ユメさんちっちゃくて可愛かったなー…あんな妹が私にもほしいです…。
しかしそんな神の焦りも関係なく柚香は別の方向へと思いを巡らせていく。…しょうがないので柚香が居る部屋を簡潔に説明しておくことにしよう。
まず彼女が居るのは旧校舎の一室。ちょうど開かずの教室の隣の教室である。つまり移動してないんだよ!
しかし彼女が見慣れないと思ったのも無理はないだろう。その教室の壁は塗装がされておらず、むき出しになっているコンクリートの灰色が覗いているのだから。
彼女の正面には何も書かれていない黒板、横に置いてあった人形がなくなっていることには気づいているのだろうか?
そして後ろにあるのは個人用ロッカー、ちょうど人を折りたたむと入りそうなサイズの。…関節外せてかばんの中に入れるようなびっくり人間でもない限りは無理だろうけど。
とそこまで解説し終わった辺りでちょうど柚香の回想も終わったので話を戻すことにする。
っと…いけないいけない…。そういえば他の人はどこに行ったのかな…?
とりあえず扉から顔だけを出して辺りを見渡してみる。右側は…部屋、と。左側は…暗い通路、と。…た、たぶん皆帰ってくるよね。
そう思い直すと私は教室に戻る。見渡して気づいたけれど、どうも場所は変わってないみたい…?
気が付いたように窓の外を見ると、もう真っ暗で月明かりだけが照らしている。今、何時なんだろ?
携帯は…あったあった。え…何…これ?
携帯のディスプレイでは猫が丸時計を持っているが、なぜか針の部分だけが表示されておらず。さらに電波には圏外という無慈悲な字を表示している。
壊れちゃったのかな…
私は時刻を確認することは諦めて携帯を仕舞うと改めて回りを見渡す。
コンクリートが剥き出しとなっている教室内には机と椅子だけがぽつんと並んでおり、動くものは何も無い。
『少女は思いました。他の皆はどこに行ったのだろう?と』
静かな教室を見つめていると、頭の中でA子が話していた怪談が浮上してくる。えっと…。
『そして少女は待ち続けましたが、他の友達は帰ってきませんでした。そう、少女は一人夜の学校に取り残されてしまったのです。
そして、一人教室内で戸惑う少女の耳に誰かの足音が聞こえてきました…』
この状況って…
ギシ…ギシ
「ひ、ひぃ!」
廊下から誰かの足音が聞こえてくる。
その音に私はまるで金縛りにあったように廊下の方向から視線を動かせない。
『そして…』
「おー、やっと発見」
恐怖で固まる私の眼に飛び込んできたのは、何かを包んでいる学生服の上着をもって私に笑いかけている、ついさっきまで一緒に居た少年だった。
「ん…大丈夫か?」
「だ、だいじょうぶれひゅ」
「そ、そうか…とりあえず立てば?」
誰かに会えた安心感と緊張で呂律が回らない…ついでに腰が抜けて立てない。
私は少年に手を貸してもらって立たせてもらうと、目の前に居る黒髪の少年を改めて見つめる。えーと…確か…
「シュン…君?」
「ああ、そうだけど…その様子だと何も知らないみたいだな」
「は、はい…」
話を聞いてみると彼が気づいたのはこの階の別の教室で、誰も居ないことを不審に思った彼は1部屋ずつ確認しながら私のところまで来たらしい。
「そうか…起きたばかりで何も知らない、か」
シュン君はそう呟きながら何かを考えていて、何だか話しかけづらい様子。
「イチゴとレモン」
「へ…?」
私がぼけ~っとシュン君の様子を見ていると突然話しかけられた。
「イチゴとレモン、どっちが好きだ?」
イチゴとレモン…何のことだろ?
でも、どちらかというと…
「イチゴ…?」
「俺に聞かれてもな…まぁ、ほら」
そう言うとシュン君はポケットから何かを取り出した。えーと…コレは…飴?
「こんなしかないけどな、まぁ食えよ」
「え…あ、ありがとう」
私が受け取ると彼は黄色い飴を取り出すと、自分の口に入れた。たぶんレモン味だよね、アレ。
私も彼に習って飴を頬張る。うん、イチゴ味。どことなく懐かしい味を舐めていると、照れ隠しなのか笑いながら話しかけてきた。
「昔、姉さんが何かあるとくれたんだ」
姉さんって言うのはメリーさんのことだよね?確か…
そのまま二人とも無言で飴を舐め続ける。何この状況。
男子生徒と放課後に二人っきり…お話だともう少しロマンチックな何かがありそうなんだけれどなー…まあ、現実なんてこんなものか。
「それじゃ、俺はもう少し辺りを見てくるわ」
「え…あ、はい」
「そんな不安そうな顔するなって。何かあればすぐ帰ってくるからさ」
…そんなに不安そうだったのかな?そりゃ少し…かなり一人でここにいるのは不安だけれど…。
私がそんなことを考えている間に、シュン君は笑いながら私の頭を一撫ですると彼は教室から出て行った。
私はというと特にすることもないので床に座って一人飴を舐める。そしてふと彼が残していった上着に目がとまる。
あ、そういえば…何が包んであるんだろう?
すっごい大切そうに持ってたけれど…
んー、と少し悩んだけれど、何も言われなかったからいいよね?という結論が脳内会議で出た。
「それでは早速ご開帳ー…」
さびしいので呟きながら開けてみる。
中にあったのは白い…え?
「ひっ!」
喉から声にならない悲鳴が出る。
私はそのまま後ずさりしていくと、背中がロッカーに当たった感覚がする。
かちゃん
隣で何かが開くような音がしたのでとっさにそちらを見る。
そこにあったのは…
首がなく、全身が折りたたまれてロッカーに詰められた女生徒の死体だった。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
悲鳴が出る。何コレなんでこんなのがロッカーあるの…?
「おい!どうした!」
私が混乱していると廊下から誰かが走ってくる音がしてきて彼が帰ってきた。
骨を大切そうに抱えていた彼が…
「コレは…」
彼はロッカーの死体を見つけると眉をひそめる。その様子は見つかっちゃいけないものが見つかったかの様で…
「お、おい!危ないって!」
私はすぐに別の出口から出ると、少しでも遠くまで逃げるために走り出す。何…?何なのアレ…どうしてこんなところに…
一目散に廊下を走り抜けると、後ろを気にしながら階段を駆け下りる。
「きゃっ!」
後ろを気にしすぎたのが悪かったのだろう。私は最後の一段を踏み外してしまった。痛みを堪えてすぐさま後ろを確認するが、彼はまだ来ていない。
悪い方向に捻ったのか、じんじんと痛む足を庇いながらまた動き始める。逃げないと…早く、何処かに…
先ほどよりはゆっくりと、けれども出来るだけ早く動いていると、向こうの廊下から誰かが歩いてくるのが見えた。
その誰かは覆面を被っており、片手には大きなハンマーを持っている。
そして、覆面越しに私と目が合ったのを感じる。
「ひっ…」
覆面の男はゆっくりと腰に付いたナイフを取り出すが、逃げようとしても私の足は恐怖で張り付いたように動かない。
そのまま男は私に向かってナイフを振りかぶると…
「おい!なにぼーっとしてるんだ!」
声がしたかと思うと、私の目の前に誰かの腕が突然現れると私を投げ放たれたナイフから庇った。え…?
「早く逃げるぞ!走れるな!」
そのまま誰かに腕を引っ張られて階段を駆け下りる。誰かの腕にはナイフが刺さっており、上着が血で染まっている。
「あの…」
「喋るな!走れ!」
誰か…シュン君は混乱している私を引っ張ったまま教室へと入ると止まった。
「足、見せてみろ…」
「血が…」
「いいから見せろ!」
私がそう呟いていると苛立った様に彼が怒鳴った。
「ひ…」
「あ…悪い…とりあえず、足見せてみろ。折れてないか確認するから」
赤黒く晴れ上がっている私の足を見ながらシュン君は「大丈夫だな…」と呟くと腕に刺さっているナイフで上着を切り始めた。
「止血、習ったよな?」
「え…はい」
「頼む…一人じゃ出来ないから」
上着で作った包帯を差し出すシュン君。
そのまま彼の言うとおりに傷の処置をすると、彼は私の足に包帯を巻いていく。
「こんなものしかないけどないよりはマシだろうから」
そんな風に笑いかけながら彼は包帯を巻いていく。その様子を見ていると私に疑問が浮かんだ。
「どうして…?」
「ん?」
「どうして…あなたはそこまでするの?」
私なんて…今まで接点なんかなかったのに…怪我までして…。
その思いは言葉に出なかった。彼が何だか困ったように笑うから…。
「あー…何でだろうな…」
そう言うと彼はポケットから飴を出すと私の口に入れた。さっき舐めたばかりのイチゴ味。
「俺もよくわかんないや」
自身にも飴を入れると、私に笑いかけた。そのときの彼の顔は私にはとても輝いて見えて…私は何でかわからないけれど、赤くなった顔を逸らした。
「骨…」
「え?」
「骨…見たんだな」
「…うん」
そのままシュン君は無言になる。
「アレな…行方不明になった教師のなんだ」
しばらく二人とも無言で居ると、静かに話し始めた。
「バカな教師でさ、自分の損なんて考えずに生徒のことばかり考えて…今回も行方不明になった奴等のことを必死に探してたんだ。
その結果こんなとこで死んでるなんてな」
「本当に…バカな教師だよ…」そう呟くとシュン君は顔を伏せた。
私はその姿に何か声を掛けたくて…でも、言葉が見つからなくて…
「あの…」
「待て…誰か来る」
私が声を掛けようとすると、シュン君が小声で制止した。私も耳を澄ますと、小さくギシ…ギシ…と鳴る音がする。
「いいか、もしもあいつが出たら俺が囮になるからあんたは隙を見て逃げだせ…」
「で、でも…」
「足を怪我してるあんたよりは大丈夫さ」
彼は不安そうにしてる私を笑いながら撫でるとそう言った。
そして真面目な顔になると、息を潜めて音のする方向に視線を向ける。
「いいな…」
私も祈りながらその方向を見つめる。…ここには来ないでください。
そんな私の祈りも届かず、やがて教室の前で足音が止まると、引き戸が開けられた…
「シュンさまに柚香さま、どうなさいましたか?」
そこには宙に浮いているクラゲと、メイド服に赤いコートを着た少女が驚いたような表情をしていた。この子って…
「ユメさん…?」
間違いなく少し前まで一緒に居た彼女である。
「と、とにかく早く入れ!」
ユメさんを中に入れると、シュン君が何も知らないという彼女に今まであったことを説明する。
「なるほど…それは大変でしたね」
彼女は最後まで聞くと、扉に何かを貼り付けた。
「何してるんだ?」
「簡易式の結界です。とりあえず作業中に邪魔が入られると困るので…シュンさま、手伝っていただけますか?」
「あ、ああ…」
…作業って何?
私がそんなことを悩んでいる間にも、シュン君はユメさんの指示でチョークをもって床に何かを書き始める。出来上がった形は…魔方陣?
「何をするの?」
「あなたたちを元の世界に戻すための準備です」
…えーと?
私の表情から何かを感じたのか、彼女は軽く微笑むと。
「詳しい説明は省きますが…今居る世界は夢の様なもので、この魔方陣はあなたたちを帰すためのものです」
「そんなことが出来るのか!?」
「はい、仮にも魔法使いだったこともありましたので」
驚いたように聞き返すシュン君に応えるユメさん。
「それで、戻るために大切なことがあるのですが…」
「何?」
私がそう聞くと、彼女はどこか戸惑うそぶりを見せる。何だろう?
「戻るためには、キスが必要なのです」
「へ…?」
思考が止まった。キスってアレだよね?恋人同士がしたり外国では挨拶程度に交わすアレ?
「はい、この魔方陣は一人用なので二人とも戻るためには体液の交換が必要なのです」
しかも深いほうだった。いや、いやいや…いきなりキスとか…そんな…しかも深いほうだ何て…。
見ればシュン君も硬直している。よかった…ノリノリだったらどうしようかと思った。
「何もないのはさすがにし辛いと思いますのでこんなものを用意しました」
彼女はそういうと水筒を取り出した。ここから導き出される答えは…!
「口移し…か?」
シュン君が出した。
「でもよろしいかと」
「そうか…」
何もよろしくない!よろしくないよユメさん!そしてシュン君も諦めない!そこはもっと粘ろうよ!
「あの…他に手段は…?」
「はい、体液が交換できるのであれば何でもいいですが…」
そこでいったん切ると、彼女は廊下の方に視線を向ける。
「あまり時間はないかと思います」
彼女がそう言い終えると扉に何かが叩きつけられる音がする。何でこんなタイミングで来るの!
「いや…あの…でも…」
それでも私が拒んでいると、シュン君が動いた。
「あー…悪い、先に謝っとくわ」
そう言って彼は水筒に口をつけるとそのまま私にキスをした。
「ん…!?んぅ…」
ゆっくりと私の口へと流し込まれる水。
『失われし我が名の元に命ずる…』
その水を飲み込んでいくと、そんなような呪文が聞こえ、私の視界が白く染まっていく…
「別にマウストューマウスである必要はないのですが…」
白く染まっていく視界の中、ユメさんが困った顔でそう言った気がしたけれど、すぐに何も見えなくなった。
この後、無事に戻った私は彼を好きになっていくのだけれど、それはまた別のお話し。
ちなみに…私のファーストキスはレモン味でした。
□ □ □ □
月明かりの照らす病院の前に、クラゲを連れた一人の少女が立っている。黒髪の少女はメイド服の上に赤いコートを羽織っていて、片手には水晶のあしらわれた杖を持っている。
赤い少女は少しの間病院を見上げていたが、ゆっくりと病院内へと入っていった。
病院内では各部屋から幸せそうな声がしてくる。
ある部屋では誰かが恋人と過ごしていたり。ある部屋では大金持ちになっていたり。また、別のある部屋では空を飛んでいたりする。
そこには人それぞれの夢の形があった。
クラゲがその1つ1つに嬉しそうに触手を動かすが、少女は特に反応することもなく、ゆっくりと歩き続けている。
やがて、少女とクラゲはエレベーターへと入ると、ボタンを押す。ゆっくりとした動きで上へと上っていくエレベーター。
チンという軽い音がして8階へと付くと、少女はまたゆっくりと歩き始めた。
そこではもう幸せそうな声は聞こえなかった。
ある部屋では誰かに包丁を向けられていたり。ある部屋では借金に負われている。また別のある部屋では天候が悪くて今にも落ちそうになっている。
「夢の終わりは幸せじゃない…ですか」
その様子を見た少女がポツリと呟く。
そして、少女は805と書かれている部屋の前で止まると、中へと入っていった。中にあるのは空のベットと真新しい花の生けられた花瓶。
少女はその花瓶を少し見つめると、手に持った杖を立てる。
『…我が名の下に命ずる』
すると、その場に留まる杖の上にクラゲがふわりと止まった。
「それじゃ、後はお願いしますね」
少女は杖の上に居るクラゲにそう言うと、その場を後にして屋上へと向かった。
ぎぃ…とした音を立てて屋上への扉が開く。そこにいたのは宙に浮かんでいる肌白な少女の姿。
「こんばんわ、いい月夜ですね」
その様子に特に驚くそぶりも見せずに、赤い少女はぺこり、とお辞儀をした。
「あなたは…?」
「はい、正直言って最初はどうでもよかったんですが…この世界を壊しに来ました」
「そうですか…
あなたにとって自由ってどういうものだと思いますか?」
「考えたこともないですね…
幻想の中に作られる自由の世界だなんて、ボクには関係ない話です」
少女は問いに首を振りながら応えると、ゆっくりと動き出す。
「この世界が壊れたら、ほかの人が帰って来れないかもしれないですよ?」
少女はその問いに微笑むと
「言ったじゃないですか。ボクにとって他の人なんてどうでもよかったんですよ。ただ…」
そこで切ると微笑みをを消して宙に浮く少女を睨みつける。
「ただ…あなたはエウナさんを巻き込みました。
ボクにとって理由なんてそれだけあれば十分です。それに…どうせ壊れたら帰ってくるんでしょう?」
その言葉に宙を浮いている少女は面白そうに笑う。
「あなた面白いわね。正解、確かにこの世界を壊せば他の人たちは戻るわ。でも、ここを壊したとしても私を殺さない限りはまた別の世界が出来るわよ?
…それとも、ここで私を殺す?」
「でしょうねー。まあ、それはそれで別にいいです。
あなたを殺して止めるほどの興味もありません」
浮いている少女はその言葉を聞くと、怪訝そうに眉をひそめる。
「じゃあ、どうしてここに来たの?」
少女は病院の端まで歩くと振り向いて応えた。
「あなたに、ここでは出来ないことを教えてあげようと思いまして」
「出来ないことなんてありません。ここは私の作った世界ですから。
ここなら…私は何だって出来ます」
「それがあるんですよー。今からお見せします」
「…何をするつもりですか?」
「簡単なことですよ。
ところで、この世界がある限りあなたは自由でしょうけれど…あなたのせいで縛られている人も居るわけです」
くすり、と笑うと少女は後ろに一歩踏み出した。当然、端に居る少女の姿は後ろへと倒れていく。
「その人をあなたはどうするんですか?」
ゆっくりと倒れながら少女はそう笑いかける。
そして少女は病院の屋上から落ちていく。
少女が地面に叩きつけられるのと同時に、夢を叶えることが出来る幻想の世界が音もなく崩れた。
□ □ □ □
「その人を、あなたはどうするんですか?」
そう言って赤い少女が落ちていき、私の目が覚めた。
目を覚ましてまず見えるのは病室の無機質な天井、横に視線を動かせば点滴と彼が定期的に持ってきてくれる花たち。
「縛っている…ですか」
花を見ながらポツリと呟く。どうするか?いいでしょう、開放してあげようじゃないですか。
…幸い、方法は彼女が示してくれましたから…後は実行するのみ。
彼女は病室でそう思い立つと、動かない体を動かして車椅子に乗り始めた。
□ □ □ □
病室で、白髪の少女が月の出ている外を眺めていると、窓の外から人が降ってきた。
その人が窓の外を通り過ぎるまでの数秒間、無表情のまま目で追う少女。
「それが、あなたの答えですか。
あなたは、強いんですね…」
自由が夢だった少女が過ぎ去った後、窓から見える月を見ながら白髪の少女はさびしそうにポツリと呟いた。
そして外から誰かが走ってくる音が聞こえてくる。
「ユメっ!」
エウナが叫びながら部屋に入ってくると硬直する。
「エウナさん…早いですよー…ってわわ!ユメさん、その髪どうしたんですか!」
後からついてきたのだろう、メリーも入ってくると驚いたような表情を浮かべる。
「これはエウナさまにメリーさま、そんなに急いでどうかなさいましたか?」
ユメは月から視線を外すとエウナのほうを見つめてそう言った。
エウナはその言葉になにやら悩んでいたが、やがてユメに笑いかけると。
「お帰りなさい、ユメ」
「はい、ただいま戻りました」
ユメは無表情のまま、しかしどこか嬉しそうにそう応えた。
はい、無事長め回完結しました~ヾ(>ω<)ノシ
意味不明という感想は受け付けておりません。ごめんなさい。
ということで柚香ちゃんがシュン君を好きになる話でした、それだけです。はい。
それでは、少しでも楽しんでいただけたら幸いです