バレンタインってチョコレート安くなって素敵ですよね
1日早いですがバレンタインネタ
チョコレート・・・おいしいですよね
ということで人物表\( ´▽`)ノ
霞日 エウナ
吸血鬼 金髪ロングの赤目 今日は白ドレス お酒はまあまあ
霞日 メリー
幽霊 銀髪サイドポニーの碧目 紅い浴衣 お酒は大好き
叶 夢
メイドさん 白髪黒目 メイド服 お酒はドウダロウ?
柚香
人間 栗色の髪をロングをリボンで束ね 苗字なんて以下略 恋する乙女パワーですべてを粉砕したり
束嶺 雛歌
人間 起伏の乏しい体系 私わ忙しいんだからね!とのこと 窮鼠猫を甘噛み 友情出演
もうしばらくすれば夕焼けかという不安定な空の下、メイド服の少女が大きなかばんを持って街の中を歩いていた。かばんの中にはあふれんばかりに詰められたチョコレートの包み紙と1冊の本。
少女の白い髪は肩のところで切りそろえているが、耳を隠している両サイドの髪だけは長く胸ほどまである。また少女の顔はかわいらしいのだが、いかんせん無表情なのでまるで人形のようである。
「お、今帰りかい?」
その少女が酒屋の前を通り過ぎようとしたとき、酒屋の店主が気軽そうに少女…ユメへとそう声を掛けた。
「はい、もう用事は済んだので」
ユメの方も店主の方と知り合いなのか、店主の声に立ち止まると応答する。
「バレンタインか…どうだい?チョコレートに合ういい酒があるんだが、どうだい?」
ユメは不思議そうに首をかしげると
「なぜボクがばれんたいんだと思ったのですか?」
「そりゃこの時期にそんなにチョコを買ってたら誰だって気づくさ。それで、酒はどうだい?」
「なるほど。お酒はお断りします、それではまた」
ユメは無表情のままぺこりとお辞儀をすると、これで会話は終わりとばかりに歩き始めた。
「ちょっ…ちょっと待ってくれよ」
店主は立ち去ろうとするユメにあわてて声を掛けて止めると
「チョコの良い渡し方があるんだが、興味は無いかい?」
「ちょこの良い渡しかた…ですか?」
その言葉に興味が出たのだろうか、ユメはまた立ち止まると店主のほうを振り向いた。
「ああ、今ならこのチョコに合う酒とセッ「買います」」
ユメは最後まで聞かずに財布を取り出すと店の中へと入って行った。
「それで、良い渡しかたとは?」
「あ、ああ…実はな…(省略)というものなんだが」
「なるほど…そういう渡し方が良いんですか」
ユメは店主の言葉にいちいち頷くと、手に持っている手帳に何かを書き込みお辞儀をした。
「大変有意義なお話ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ毎度あ…ぐふっ」
店主がそう言ってお辞儀をしようとすると、店の奥から女性が飛び出し店主に向かって飛び蹴りを放った。
「あなた!またユメちゃんに変なこと教えて!」
「ま、まて!大体アレはお前がしたことじゃ…ごほっ」
「少し、黙れ」
女性は倒れている店主に踵落としを決めるとそのままユメの方を向いて
「ユメさん?あんましこの人の言うことをあまり真に受けちゃダメですよ?」
「はい、とても勉強になりました」
「あなたのせいでまたユメちゃんが変なこと覚えたじゃない!」
「それでは私はコレで」
そう言うとユメは酒屋から断続的に響く打撃音から遠ざかっていった。
結構長い間話していたのだろう、あたりはすでに暗くなっており、街灯が帰る彼女のことを照らしていた。
□ □ □ □
「おろ?珍しいですねー」
何の気なしにキッチンに行ってみると、そこには持っている本と目の前のチョコの山とを何度も交互に見るユメさんが居るではないか。料理ができない彼女がキッチンにいるなんて本当に珍しい。
どれどれ?持ってる本は…『誰にでも作れるバレンタインチョコ!』ですか。ありきたりな名前ですね…ふむふむなるほど!ピキーンときました。
「何かお困りですか?私でよければ助けになりますけれど?」
ピキーンと来たので声を掛けてみる。つまり!チョコレートを作りたいってことですね!
「メリーさま…実は…この部分の意味がよくわからなくて」
「ふむふむどれどれー?」
彼女の指し示すところを見てみるとそこに書いてあったのは…
「えっと…湯煎…ですか?」
「はい、残念ながらボクには湯煎というものが何なのかわからず…」
…湯煎がわからなかったんですか。ま、まぁみじん切りがわからないと言われるよりはマシですね。この本にみじん切りは載ってないですが。
「湯煎って言うのはお湯で容器の中の物を温めるってことなんですよー」
「はぁ…容器の中を…ですか」
やっぱりわからないですか、しょうがないですね。
私はうつむいて容器の中容器の中と呟くユメさんへと微笑むと
「よかったら一緒に作りましょうかー」
「よろしいのですか?」
「はい♪一人よりも一緒に作るほうが楽しいですよー」
ユメさんはしばらく考えると、お願いしますと言ってお辞儀をした。
さてさて…ここからが大変です…。
~チョコレート製作中ヾ(>ω<)ノシ~
「…後はそれを型に入れて完成です」
「はい」
ユメさんはゆっくりと慎重に型へと9回目となるチョコレートを流し込む。その姿に私も自然と緊張する。無理もない、さっきチョコレートをぶちまけたのがこの工程だからだ。
バレンタインチョコ作りは予想以上に困難だった。何をしても普段が無表情ゆえにわかりづらいが、ユメさんは非常にドジである。道を歩けば転ぶほどではないが、肝心なところで何処かずれているのである。それはもう、湯煎のお湯に手を突っ込むわ、チョコレートを刻めばチョコが何処かへと吹っ飛び、チョコを湯煎で溶かせばボールを吹っ飛ばすほど。
そんなことが今まで続いている、これで緊張しないほうが無理というもの。本人はすごい真面目でそこが可愛いんですけどねー。
私が背伸びしながら一生懸命チョコレートを型に流し込むユメの姿に悶えてる間に作業は終わったらしい。
「できました」
「よくできましたねー」
思わず彼女を抱きしめると頭をなでなでする。はぅ…至福です。
「メリーさま、この後は?」
「うふふー」
「…メリーさま?」
…はっ!私としたことが…いけないけない。
「は、はい!この後はですねー、冷蔵庫で冷やして固めると完成です」
「なるほど」
そう言うとユメさんはゆっくりと冷蔵庫にチョコレートを入れると、ぱたんと扉を閉めた。そしてそのまま冷蔵庫の方を見つめたままびくりとも動かない。
「あ、あのユメさん?どうしたんですか?」
「はい、バレンタイン当日までここで見張っていようかと」
「…ずっとですか?」
「ずっとです。ばれんたいん数日前から当日までは一瞬たりとも気を抜いてはいけないと聞きました」
「…ユメさん、誰にそんなことを聞いたんですか?」
「柚香さまです」
柚香ちゃん…苦労してるんですね…
思わず彼女の今までのバレンタインに涙が出そうになったが今はそれどころではない。
「ユメさん?ずっと見張ってなくてもいいんですよ?」
「ですが…大切なちょこなので」
「このお屋敷にはユメさんのチョコをとろうって人は居ませんし来ませんよ?」
彼女に向かってゆっくりとわかりやすいように話しかける。
「メリーさまの分もあるのですが…」
「よし!私が責任を持って守りましょう!ですからユメさんはゆっくり休んでてください」
「…よろしいのですか?」
「はい♪任せてくださいな♪」
私はそう言ってユメさんを自室へと戻らせると、冷蔵庫にあらん限りの防備をすると封印した。
「ふふ…私へのチョコ…私へのチョコ…」
よーし、お姉ちゃん張り切っちゃうぞー!
□ □ □ □
バレンタイン当日の満月の夜、屋敷のテラスにて一人の女性が本を読んでいる。
少しの風が、赤いドレスを着た女性の金色の髪を月明かりを反射させながらさらさらとゆれている。
女性はそんなことも気にしていないようでぱらり、ぱらりページをめくっていた。
「つまらないわね…」
私はそう呟きながらも本から視線をはずすことはない。他にするものがないのだからしょうがない。
ユメはというと紅茶を入れるや否や電話をするとこで行ってしまった。…一応は暇だという私のためにこの本を持ってきては来たのだが。
「深海の生物大百科なんかでどうしろっていうのよ…」
視線の先では見たこともない生物が説明付きで載っていた。しかしここは山の中、深海どころか海すらも縁が薄い場所である。そんなものを渡されれば思わず声も漏れるもの。
しかし他にするものもないので機械的にページをめくっていると、突然後ろから腕を回された。
「私メリーさん、今あなたの後ろに居るの」
私の後ろから声がする。そりゃ抱きついてるんだから後ろに居るわよね。
「…メリー、何してるの?」
「ちょっとエウナさん成分の補給を」
「何よそれ…」
こいつは人を栄養素か何かと間違えているのかしら…
いちいち後ろを向いて相手をするのも癪なので視線を本から外さずに応答する。うわ…これホントに生物なのかしら。
しばらくの間その姿勢のままで読みつづけていると、メリーは離れてここにきた用件を告げた。
「ご飯ができたので食堂までどうぞどうぞー」
「はじめからそう言いなさいよ」
「なんと!今日はバレンタインなのでフォンデショコラです!私が十分に愛をこめて作りましたからおいしいですよー」
「ああ、今日バレンタインだったのね」
「反応薄っ!」
適当にメリーの相手をしながら本を置くと立ち上がる。いつものことだけれど意外と律儀よねこの子。わざわざ本人が来なくても渡す方法なんていくらでもあると思うのだけれど。
「そういえばユメさんはどこですか?姿が見えないですが…ぐぉぉぉぉ!」
メリーはそういいながらスカートの中なんかを覗き込んで来る。当然殴った。
「ユメなら雛歌のところに電話中よ。たぶん途中で会うんじゃない?」
うずくまっているメリーに冷ややかにそう告げると食堂へと歩き始める。
すると電話が終わったらしいユメがこちらへと向かってきているのが見える。
「エウナさま、紅茶のお代わりでしょうか?」
「食事よ。どうせだし一緒に行きましょう?」
「かしこまりました」
ユメはそういってお辞儀をすると私の後ろからついてくる。
「何のお話だったんですかー?」
歩きはじめてすぐ、復活したらしいメリーがユメのほうへと話しかけていた。もう立ち直ったのか…強めにしとけばよかったわね…
「はい、雛歌さまの思い人に彼女ができたらしくその話を少々」
「ほー、そりゃ大変ですねー」
「後は窮鼠猫を甘噛み等を」
「ふむふむ」
「まて、あんた他人に何教えてるのよ」
「ですから、窮鼠猫を甘噛みについてを」
思わずため息をつく。この子たまには見た目どおりの行動を取ってはくれないのかしら… いや、掃除とか洗濯のときとかは足場を使ったり背伸びをしていて十分子供みたいなのだけれど…
私がそんなことを嘆いている後ろで二人は楽しそうに話し続けていた。
□ □ □ □
「ああ…気持ち悪い…」
あの後、食堂でチョコに合うとか言うお酒をユメが持ってきた。このお酒が思いのほか美味しく、またメリーの作ったフォンデショコラとあまりにも合ったのが原因か、飲みすぎたらしい。
気がついたら酒瓶がいくつか転がっている光景は少し恐怖を誘うものね。
そんなことを思いながら少し膨らんでいるように見えるベットの布団をめくると、そこには一糸まとわぬ姿のユメが無表情でこちらを見上げていた。
「お待ちしており…」
思わず布団を元に戻すと深呼吸をする。ああ、私酔ってるのね…だからあんな幻覚を…
深呼吸も終わるともう一度布団をめくる。
「お待ちして…」
私は布団を戻すとドアから出ると食堂へと向かった。
「ありゃ?エウナさん、お酒ならまだありますよー?」
「要らないわよ…」
食堂ではメリーが一人でお酒を飲んでいた。どれだけ飲むのよこの子は…
「ふむふむ、お酒じゃないとしたらどうしましたか?てっきりもう寝に行ったものだと思ってましたが」
「ええ、少し酔いが酷いみたいだから水を一杯もらえない?」
私はメリーがどうぞー、といいながら渡してくる水を飲み干す。ああ、美味しいわ。
「ありがとう。それじゃもう寝るわ。お休みなさい」
「あいあいさー、おやすみなさいー」
水を飲んで少し鮮明になった視界のまま寝室へと戻る。これでもう幻覚は見ないわね。
「お待ちしておりました」
「…」
何をやってるんだこの変態メイドは…
寝室に戻ってベットをめくるとそこにはさっきと変わらずユメがいた。ただし、一糸まとわぬ状態というわけでは無いようで、サラシと下着、そして首にリボンを巻いたという姿で。
どう見ても変態である。特にリボンがきれいなちょうちょ結びになっているところとか何を考えているのかわからない。その表情は少しも恥ずかしがっておらずいつもどおりの無表情なのがものすごくシュールである。
「あなた、何、してるの?」
ゆっくりと、沸きあがる怒りを抑えながら聞いてみる。なんで人のベットに脱いで入ってるんだこいつは…私か!?酔った私がそう言ったのか!?
「はい、エウナさまに渡したいものがありましてこうしてお待ちしておりました」
どうやら私ではないらしい…が、それよりもまずは
「私は外にいるからまずは服を着なさい、話はそこからよ」
「かしこまりました」
部屋に入って改めて服を着たユメと向き合う。だから何であなたは私のベットに入ってるの…
「それで、渡したいものって?」
ユメの頭でゆれているナイトキャップのぽんぽんに目移りしながらも聞いてみる。
「はい、こちらになります」
そう言うとユメはベットから抜け出すとラッピングされた箱を手渡してきた。結局出るのね?つまりベットに入ってることに意味なんてなかったのね!?
「人肌で暖めておきました」
「人の心の中を読まないで頂戴…ところでこれは?」
ユメは一言はい、というと
「ばれんたいんちょこです」
ふむ、バレンタインチョコね。なるほど、チョコレートね。
「ありがと、用件はこれだけ?」
「はい、それではエウナさま、おやすみなさい」
私は顔がにやけない様に注意しながらユメを部屋から出すと、チョコレートを棚へと大切にしまうとカーテンを閉める。
ユメのバレンタインチョコ…いつ食べようかしら…
ベットへと入ると思わす顔がにやけるが誰も見てないからセーフだろう。
お返し…何にしようかしらね。
闇に染まっていく意識の中でそんなことをぼんやりと考えた。
作者は作るはいいが渡す相手が家族と友人以外居なかった
自作で食べるの美味しいです
恋人なんて…恋人なんて…
雛歌さんはこちらから友情出演です
http://ncode.syosetu.com/n0488q/
ちょくちょく出てくる誤字チェックしてくれてる友人です
世界観が違うのは電話越しということでひとつどうぞ
それでは、バレンタインネタ楽しんでいただけたら幸いです