旅行に行こう! 温泉は戦いです
はい、始まりました新シリーズ
今回も例によって例のごとく魔法をあまり使わないのにファンタジーを名乗ってます
何が何でもファンタジーです
対して変わりませんが最初ということで注意書きがいくつか
※1 近作は前作、クラゲって可愛いですよね!のかなり後の世界観になっていますが読んでなくとも基本的には問題はないと思います
読んでいただけると歓喜します。きゃっほーいとか言いたくなります
※2 基本的に作者の頭は湧いてます、生暖かい目でお付き合いください
※3 基本的に短い内容ですがたまにいつもよりも長い話があります
その場合は前書きに一言入れるので時間を捨ててもいいと考える方はお付き合いください
何が長いだ長くねーよという方はごめんなさい、作者に文才が無いせいです
※4 作者が書きたいときに書きたいところで書いてるせいで時系列がばらばらになってます、基本1話完結なので問題は無いですが、あらかじめご了承ください
そんなこんなで注意書きもつらつらと書いたところで!
人物表!
霞日 エウナ
吸血鬼 ぼんきゅっぼん ついに苗字が出たよ!
霞日 メリー
幽霊 意外とある 別に結婚とかはしていない
叶 夢
メイド ぺたぺた
それでは、お付き合いいただければ幸い
私も温泉に入ろうとしたら、周りをきょろきょろと見渡しながら外へと出るメリーが見えた。何してるのかしら?
始まりは数日前、私が海の大百科とか言う本のクラゲの欄を読んでいたらユメが反応した。どうも彼女はクラゲは知っていても、それが海の生物だということはまるっきり知らなかったらしい。
何でもお土産なんかで見かけたのを気に入ったとか何とか…。さらに信じられないことにうちのメイドは海というものを今まで見たことがないとのこと。
ということで善は急げの言葉のとおり、今は海の近くのお馴染みの温泉宿に旅行中なのである。ちなみに今の季節は夏で旅館は大繁盛なのだけれど…よくとれたわね。
なんとなくメリーの後を背後霊のごとく着いていくと、彼女はこそこそと藪の中へと入っていった。霊の後を追いかける霊…想像するとシュールね。
「こんなところで何をしてるのかしら?」
「ひぃ!」
うずくまって何かをしている彼女の銀色ポニーテールの髪に声を掛けると、彼女は驚いたように飛び上がった。手に持ってるのは…カメラ?
「ちちちち違うんです、エウナさん!これはあのですね…」
私の方を振り向くとメリーは両手を振り回す。彼女が手を振り回すたびにカメラに付いてるストラップがぺちぺちと周りにあたるあたる。危ないわねぇ…
「へぇ、何が違うのかしら?」
正直何故慌てているのかわからないが、面白そうなので乗ってみる。
「いえ、あの…コレはですね…決してユメさんのお風呂姿を盗撮しようとしているわけではなく…ただあそこにある楽園を記録という形でこの世に残そうとですね…」
何も言わずに黙ってみていたら何をしようか勝手に話し始めた。盗撮…ね、バカらしい。
「そ、それならがんばりなさい」
「へ?」
「何よ?」
「えっとお仕置きはないんですか?」
「へぇ…お仕置きしてほしいの?」
「い、いえっ!そんなことは決して!」
私がメリーに微笑むと、彼女は青ざめた表情で首をすごい勢いで横に振った。…残念ね。
このままここに居ても何もすることもないので、温泉に入ろうと旅館へと足を向ける。
どうせ盗撮なんて出来ないでしょうし。
「ああ、メリー」
一応言って置こうと振り向くとまたカメラを弄っている彼女に話しかける。
「は、はい!何でしょうか!?」
「あなたの体を案じて言っておくけれど、盗撮なんてやめたほうがいいわよ?」
「…えーと?」
「その辺り、罠だらけだから」
そういうと私は小石を拾って投げる。すると、『ぶうん』とした音がし丸太が小石の落ちた辺り目掛けて振り子のように飛び出してきた。
「…わぉ」
メリーはその様子を眼を丸くして見つめている。
「こういうこと、まぁ…がんばりなさいね。私はユメとお風呂に入るから…ちょっと、離しなさいよ」
私がまだ驚いているメリーにそう告げて旅館のほうへと歩き始めると、メリーに服のすそを掴まれた。
「…」
「…」
無言で見詰め合う私とメリー、はたから見たらまるで告白シーンの様でもあったでしょう。もしくは果し合いか。まぁ、私にとっては戻れればどちらでもいいのだけれど。
「エウナさんは…」
「何よ」
先に沈黙を破ったのはメリーだった。私はというと、いかに服を傷めずにこの手を取り外すかを考えるのに夢中になっている。手を引きちぎるのは血が付いてダメだし…
「エウナさんは…ユメさんとよくお風呂に入るんですか?」
「そうだけど…?それが…って泣かないでよ!」
私の言葉を聞くとすごい形相で涙を流すメリー。ちょっと…いやかなり怖い。
「私まだ一度も入ったことないのに!」
「…頼めばいいじゃない?」
「それが出来たら…それが出来たらこんなことしてないんです!」
メリーはそう叫ぶと露天風呂となっている温泉の方へと走り出した。ちょ、だから危ないって!
案の定発動する罠、罠、罠。地面から突然出来る穴や飛び出す槍、降り注ぐ矢の雨、なぜか飛んでくる金たらい、振り子のように飛んでくる丸太や足元に設置されているトラバサミ…等など。…何かひとつ罠じゃないようなものがあった気がするけれど…当たると痛そうね。
メリーはその罠の嵐をあるときは避け、ある時は受け止め、ある時は自力で外して放り投げながら、じりじりとしかし確実に露天風呂へと近づく。
「あっ…」
思わず声が漏れる。
彼女が飛んで着地した瞬間、まるで狙い済ましたかのように槍が飛び出した。それを彼女は強引に体をひねることでかわしたが、完全に避けることは出来ず、その手に持っているカメラが槍に貫かれた。
壊れたカメラをしばし呆然とした様子で見つめる私とメリー。しかしメリーは「ふっ」と笑うとポケットから何かを取り出した。あれは…インスタントカメラ!?
新たに手に入れた戦力を手に、メリーはまた罠の中へと挑み始める。
何が彼女をそこまで急かすのだろうか。決して盗撮のためではない。そう、コレは罠との戦いなのだ!
盗撮はあくまでおまけ。いわばクリアした後のボーナスに等しい。今大切とされるのは、あの罠の中を突破したというその事実のみ!
「危ない!」
私は無意識に叫びながら走り出すと、トラバサミに引っかかって動けないメリーを狙って飛んで来た丸太を粉砕した。
「私が甘かったわ…」
「エウナさん…」
「あなたがそこまで本気だったとは思わなかった…手を貸すわよ、メリー。準備はいいわね?」
「…はい!」
一人では困難な道も二人なら乗り越えられる!さぁ、一緒に行きましょう、メリー!
私たちは二人で協力し合いながら罠の嵐を乗り越えていく。中には連鎖的に発動する凶悪なものもあったが、私の力とメリーの機転、この両方が合わさった私たちにもはや敵はない!…はずだった。
「お二人とも、そんなところで何をしているのですか?」
声をした方を見上げると、露天風呂の壁から白髪の少女…ユメが顔だけを出してこちらを見ていた。
「「…」」
私たちは無言で顔を見合すと、そのまま後ろに数歩下がり綺麗に土下座をする。その一連の流れは少しの乱れもなく、綺麗にシンクロしている。
(メリー、私たち…シンクロでも食べていけるわね)
(そうですね…エウナさん。もしも財政難になったらそれも選択肢に入れましょう)
土下座の姿勢で眼だけで会話して現実逃避する私とメリー。
「それで、お二人は何をしているのですか?」
(どうする…ここで間違うと色々と拙いわよ)
(…ここは私に任せてください)
(大丈夫なの…?)
(はい、任せてください!)
「こ、これはですね!ユメさん…ぐふっ!」
メリーは必死にそういいながら立ち上がるが丸太の直撃を受けて吹っ飛ぶ。…私たちは忘れていたのだ、ここが罠だらけの死地であったことを。
嘘、嘘でしょう?いくときは二人一緒だってさっき誓い合ったじゃない!
「メリィィィィィィ!ぐふっ!」
私も動揺していたのだろう、罠に掛かった彼女へと近寄ろうと立ち上がって丸太の直撃を受けた。…私たちは忘れていたのだ、ここが罠だらけの死地であったことを。
とりあえず四つんばいのままメリーの元へと近寄る。
「エ…ウナ…さん…」
「大丈夫!大丈夫だから!」
「ごめんな…さい…近い…まもなくて…」
「いいから…いいから喋らないでメリー!」
「ぐふ…」
「メリィィィィィィ!」
メリーと私は迫真の演技で場を乗り切ろうとする。そう、すべてはユメを騙すための演技なのである。
ここまですれば後は状況に流されて私たちのしたことは…
「それで、お二人はお芝居をするためにそこにいるのですか?」
「「…」」
…騙せなかった。
(メリー、私たち…役者でも食べていけるわね)
(そうですね…エウナさん。もしも財政難になったらそれも選択肢に入れましょう)
倒れた振りを続けるメリーと目で会話して再び現実逃避を始める私たち。
「聞こえてますか?」
「き、聞こえてるわよ!」
「そうですか。では、お二人はボクにお芝居を見せてくれるためにそこにいるんですか?」
(ど、どうします…この分だと次はないですよ?)
(…ここは私に任せて)
(大丈夫なんですか…?相手は手ごわいですよ…?)
(ええ、何とかするしかないわ!)
「あー、ユメ。私たちはね…」
私は立ち上がりながらユメのほうを見る。…今はユメの無表情が怖い。大丈夫、私は出来る子…大丈夫。
「はい、何でしょうか?」
「あなたとお風呂に入ろうと思っここに居るのよ!」
そこで『びしぃ!』とユメに指を突きつける。…決まったわね。
すると足元でメリーが小さく「あちゃー」といっているのが聞こえた。
…私はしばらくその姿勢のまま動かず、ユメの様子を伺う。
「そうですか、それではそんなところで倒れておらず早くこちらに来てください」
そういい残すとユメはお風呂場へと消えていった。
その後にはもう白髪に無表情の少女の姿はなく、壁から見える湯気だけが見えた。
「エウナさん…やりましたね!」
「ええ、やったわメリー!」
私たちはお互いに見つめあうと抱きしめあう。私たちは無事やり遂げた!
そして、抱きついたどさくさに紛れて胸に顔を埋めて来るメリーを殴り飛ばすと、私はユメの元へと歩き始めた。
後ろで吹っ飛んだメリーが罠を次々と発動させている音が聞こえたけれど…自業自得ね。
□ □ □ □
私は湯船に浸かると月を見上げる。はぁー…ごくらくごくらく。
「それではメリーさま、そこに座ってください」
「あいあいさー」
「うんしょ…力加減とかは大丈夫でしょうか?」
「…は、はい…大丈夫です」
その後ろでユメがメリーの体を洗う声が聞こえてくる。…くわばらくわばら。
「はひん!?」
「…?どうかなさいましたか?顔が赤いですが」
「い、いえ、なんでもないです…」
……何も聞こえない、何も聞こえない。
「あっ、んっ!」
「メリーさま、そんなに動かないでください、洗いにくいです」
「え、あ、はい…ごめんなさい」
後ろから聞こえるメリーの嬌声を意図的に無視しながら私は満点の空を見上げる。温泉に浸かりながら星を見上げる、風流ねー。
…正直風流ってどういう意味なのかわからないけれども、本ではこういったときに使っていたような気がする。
「はぁ…はぁ…」
「それでは、次は前を洗うのでこちらを向いてください」
「え!?い、いや!前は自分で洗いますから!」
「半端なのはいけません、ボクに任せてください」
「え…でも…」
「ダメですか…?」
「…お願いします」
少しずつ大きくなっていくメリーの喘ぎ声を聞きながら私は現実逃避を始める。
…私も一度、ユメに洗ってもらったことがある。
旅をしているときにマッサージで稼いだこともあったというユメの力加減は最高で、それでも不器用なのか何処かぎこちなく動く指は、本人が無邪気に触ってくるのもあって色々と拙い。非常に拙い。正直言って一度嵌ると抜け出せなさそうである。
そのようなことがあってから一度も、私はユメに体を洗わせた事はない。ユメは断られるたびに少し不満そうだが、私が断ると素直に引いた。
ふふ…ついにあの子の感情がわかるようになったのよ。なんとなくだけれど。
やがて、ユメに体を洗われるのと同時に色々なものを失ったメリーの嬌声が収まると、私の現実逃避も終わった。さぁ、次はわが身だ。気合を入れないと…
「それでは次にエウナさま…」
「私は自分で洗うからいいわ」
腰が抜けて立てずに居るメリーを横目にそう言う。
「そうですか…」
少し顔をうつむかせて小さな声で言うユメ。…ダメよ私!ここで妥協しては!ここは心を鬼にして断るのよ!
「ええ、せっかくの誘いだけれど悪いわね」
俯くユメの姿に罪悪感を感じながらも洗い場へと向かう。ごめんなさいユメ。でもわかって、私たち妖怪には譲れないものがあるの。
「…エウナさま」
「…何?」
これはヤバイ!気をつけろ!と心の中で誰かが言っているが、この状況でどうしろっていうのよ!
「昔洗ったとき、何か気に障ることをしたのが原因なんでしょうか?」
呟くようにポツリと言うユメ。…ダメよ私!ここで妥協しては!ここは心を鬼にするのよ!
「…体を洗って頂戴」
無理でした。
「…いいのですか?」
「ええ、お願いするわ」
嬉しそうにしゅわしゅわと泡立たせるユメの前に座りながら、私は空を仰いだ。ああ、私はどのくらい耐えられるのかしら…
横ではメリーが未だ荒い息をしながら倒れている。
いくら時系列無視だからっていきなり旅行とかバカなの?死ぬの?とか思わないでください・・・
作者が日数間違えたとか言うドジが原因です・・・ごめんなさい
バレンタインまであと2週間だと思って準備してたら3週間あることに投稿時気づいて作者なみだ目
彼女たちがどうなったのか、何をしていたのかはご想像にお任せします
それでは、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです
以下ご意見募集
〆
長め回書き上げて予約投稿しました
一度に投稿することにします