冬越しの夜
その日が到来した。
クビキリギスは白い息を吹き、草を掴み寄せて大きな体格を、できるだけ隠す。
「……見つからずに、越せるかしら」
蓄えは作った。充分に食い貯めて、集めた脂肪を使い、なるべく動かずにいる。
冬の寒さはそれで凌ぐが、厄介なのは動けない時に襲ってくる捕食者だ。
「死んで、たまるか……畜生」
それは呪いのような祈りだった。クビキリギスの産卵は春を越えた先。あのクソ女と違って、まだ何も成し遂げていないのだ。
「死んで……たまるか。死んで、たまるか……死ん、で……」
眠りにまどろみ、意識を暗転。最後にクビキリギスは嫌いな女の顔を思い出した。
安らかな顔とて、しかし死に顔の何と恐ろしいことか。それは自分や誰かの未来の姿だからだ。
「死にたく、ない……死にたくないよ……!」
寒風が吹き荒び、枯れ木は死んだ葉を揺らす。
アリちゃん達も静かに静かに、地下深くに息を潜めていた。
「うぅ~……寒い~……」
「動きたくないよぉ~……」
互いに寄り集まり、なるべく動かず消耗を避け、お腹が空いたアリちゃんは最小限の動きで貯蓄庫へ向かい、汚れた植物のタネを手に取った。
「えへへっ、へへ……よいしょ……」
皮を剥かずに保管することで、食べるまでは中身を汚れから守れるのだ。アリちゃんは器用に皮を剥き、綺麗なタネにして口を開けた。
「ふわぁ……! あ~……ん」
そしゃく音。
雪は積もり、冬の寒さは肌を刺す。
そんな厳しい世界、確かに彼女たちは生きていた。




