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ファウスト(人魚姫)〜人魚仮面の幻視〜  作者: 語り部ファウスト


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8/11

第八幕:恋の進展

【第八幕】

やあ、君。

人は良いようにも、悪いようにも考えてしまう。どちらも必要なことだ。

けど、どちらも行き過ぎると害悪でしかない。

良いことだけじゃなく、悪いことも必要だ。

悪いことだけじゃなく、良いことも必要だ。

そうだね?

無理に明るくやるのは、危険な時がある。仮面をつけすぎると、本当の君が壊れる。

――自分らしさは、大事なんだ。


第七幕では、海岸で貴公子に拾われた人魚姫の、最初の頃の様子を見た。


あの後、長い時が流れた。

見た感じ、人魚姫は変わっていった。


変わった理由かい?

貴公子の献身的な介抱と、

周囲の理解によってだ。


まず、彼女は料理人に気に入られた。

自分が作った料理を、美味しそうに食べてくれるからだ。

料理人は、毎日彼女のために作るから、彼女が好きになった。


メイドは彼女が嫌いだった。

彼女のいる部屋の中に、海岸から拾ってきたモノが増えていったから。

時には臭いに耐えきれずに、焼いたものさえあった。人魚姫がくちゃくちゃと音を立てて食べてたら、吐き出させていた。


執事は、人魚姫をメイドに任せっきりだったが、貴公子に彼女の身元を調べるように忠告した。


他には、いろんな人間と彼女は関わるようになった。


さて貴公子は毎日、

人魚姫と海岸の砂浜を歩いていた。

目的は女探しだ。

彼は良いように考えてた。

彼の中の彼女は、もっと理性的な女だからだ。

食事中にうならず、微笑む女が欲しかった。


だけど貴公子には、ある病があった。

彼の魂を怯えさせるほどのね。

彼は声が、特に歌が怖かった。

あの嵐での後、彼は音に警戒するようになっていた。

特に女の歌うような声が。

それを聞くだけで、彼の端正な顔は苦痛に歪み、顔は蛇に絡まれたようなアマガエルのようになった。


人魚姫が、その事を知ったのは最近だ。

貴公子と海岸を散歩をしていると、

歌が流れてきた時の事だった。


歌の内容は、こうだった。


愛しい人を見かけて、

胸をときめかす。


横顔をみるワタシだけと、

歌だけでも、アナタの前に。


その顔は美しい。

風に撫でられ、髪を揺らす。

ワタシはきっと目が離せない。

もっと近くに。

海のそばに。

恋人なっておくれーー。


情熱的な歌声が海から聴こえた。

太陽は沈みかけ、地平線のかなた。

空は赤く血のようだ。

風は生温かく、

まるでーー体内にもぐるかのようだ。


彼は雷に打たれたように立ち止まった。ふらつく身体を人魚姫に預けた。

彼女はふらつくが、踏みとどまった。そして海に向かって、唸った。


歌声は止まった。


貴公子は彼女の肩の上で、吐いた。

痙攣が止まらなかった。

彼女はしゃがみ込む。

貴公子は、息を吐き続けていた。

彼女は彼を抱きしめて、

頬にキスをした。


貴公子もキスに応えた。

軽く震えるようなキス。

お互いの頬に。

ーーただ、それだけさ。


(こうして第八幕は、二人のキスで幕を閉じる。)

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