第五幕:魔女
【第五幕】
やあ、君。
否定されたら恋は、更に燃え上がるのが、世の常さ。
燃えあがらないとしたら、君に問題がある。クールすぎるのかもしれない。
もしかしたら、この残酷な世界を受け入れたのかい?
そのせいで君の反骨心が奪われたのかもしれないーー。
そいつは、ちょっとばかし――問題だね。こうやってボクが囁いた物語に、君が応えてくれないなんて、寂しいだろう。
第四幕では、
人魚姫は、父親に恋を反対された。
彼女にとっては、気持ちいい気分が台無し。
だから悲しみを抱えたまま、めちゃくちゃに泳ぎまくっていたよ。
やがて彼女は、泳ぎ疲れて水面に漂う舟に上がり込んだ。中には誰もいなかった。誰もね。
彼女は、空を見上げて仰向けになった。舟が揺れる。
魚の部分は海にひたしてる。
空は青く、太陽は高く、
陽光は彼女の世界をまんべんなく照らす。
太陽を見つめた彼女の目には、
薄い膜が覆った。
上空で鳥たちは静かに飛んでいた。
カモメがいた。
彼女は、歌い始めた。
「海は波一つない。
風も吹いてない。
とても静かだ。
ああ、太陽。
月に会いたいのに
お前はそこにいる
まあいいわ
お前に歌でも聞かせよう
海の重き法に
私は逆らい地上を求む
胸の想いが囁くからだ
地上に行けと
地上の星が手招く
おいで、おいでと
呼ぶ声さえ聞こえる
未知の世界が開かれた
ただ一つの問題は
魚の脚では歩けない
意地悪な太陽よ
お前は笑うだろうーー」
この歌に誘われて、
空から哀れなカモメが舟に降り立つ。
天使のように。
彼女は目を細め、
シャッと彼を掴む。
次の瞬間、カモメを頭からバリバリと彼女は食べた。
水かきのついた両手で押さえながらね。
ふんわりとした羽根が一つ。
波のない水面へと、
堕ちた。
微かな黒い円が、
消えずに広がっていった。
何かが水面に向かっていた。
怒りと嘆きは地獄のファンファーレ。
悪魔を呼ぶには、ちょうどいい。
だけど、今回は悪魔ではなく、
頭部に黒いタコをくっつけた人間の頭が、剥き出しの方が、大きな豊穣の果実が二個、細い腰が墨のように黒いドレスに包まれていた。腰から下は海の中。だけど、闇の触手の塊が待ち構えていた。
太陽は暗雲に隠され、雷の気配がした。
人魚姫は、魔女の闇に目を丸く、口をポカンと開けたのさ。
この出会いは、永遠だ。
また誰かがファウストを受け継ぐ者を語るのなら、
未知との出会いは、永遠でなければならない。
(こうして第五幕は、魔女により幕を閉じる)




