短編#1
探し物
ある少年がいた。その少年はとても影が薄く、人になかなか気付いてもらえない。
影が薄い少年が住む街の一角には、それほど大きくはない、特徴があまりない一軒家が建っていたそう。
影が薄い少年が向かうのはその一軒家らしく、しかし、住所を知らなかった。そこで影が薄い少年は携帯ショップに入ろうとする。
自動ドアは少年を認識しない。たまたま携帯ショップに入ろうとしていた男性(約173センチメートルほど)の後に続いて店内奥地へと入っていった。
影が薄い少年は男性に声を掛けた。
しかし、男性からの応答はなかった。
影が薄い少年はその後何度も、幾度となく声を掛け続けたが、男性は全てを無視していた。
怒りが募ってきた少年は拗ねてしまい、男性に背を向けた。
一瞬、男性のスマートフォンに写っている写真が見えた。少年と近しい年代の顔立ちであった。
男性の代わりに、子供スペースにいた小さな女児(5歳児くらいだろうか)に話しかけてみることに変更した。
女児は初め、だぁれ?といったことを慎重に聞いてきたが、話しているうちに心を開いてくれたらしい。
少年は女児にスマホを貸してほしいと懇願した。
女児は渋っていたが、数分後承諾に応じてくれた。
影が薄い少年は、近くにあったB5用紙の一部を千切って、住所を書き記した。
影が薄い少年は、あまり字について精通しておらず、住所を書き記すも解読することが出来なかった。
だが、地図は解読することが出来た。
少年は女児にお礼を言ってから、自動ドアに向かう。しかし自動ドアは影が薄い少年を認識しなかった。
1分足らずして、店内を後にする客がいたことを知った影が薄い少年は、颯爽と自動ドアに向かった。
携帯ショップを後にした影が薄い少年はその地図をもとに歩き始める。
不思議と喉が渇かず、疲れもしない。
影が薄い少年は足を前へ前へと進め、4.23キロメートルほど歩いた。それでも足は疲労を感じなかったため、流石に影が薄い少年も不思議に思っていた。
だが足元を覗いてみても、いつもと代り映えのない2本の足であり、5枚の絆創膏が貼られていた。
影が薄い少年は地図通り進み、徐々に徐々に目的地へと進む。影が薄い少年は、なんだかアンニュイな雰囲気を醸し出していた。
田んぼ道に入りかけた時、ふと視界が悪くなった。天候が悪化したというわけもなく、ただ、唐突に。
ポリゴンショックのような、目に刺激が走る痛みを受けたと同時に足が滑ってしまい、前のめりの情謡で倒れそうになったところで、影が薄い少年は目を閉じてしまった。
目を開けると、広がっていたのはつい数十分前に見た光景と同じであった。
左を見れば携帯ショップが、右を見ればこじんまりとしたコンビニエンスストアと。ドラッグストアが。
影が薄い少年は訳が分からず、何気なく手をズボンに縫われていたポケットの中へと突っ込んだ。
そこで新たに異変に気付いた。千切った筈の紙がなくなっていた。
おかしいと勘づいた影が薄い少年は、足元を覗いた。すると先ほど5枚だった絆創膏が、4枚に減っていた。