中華麺舞踏会
ラーメンをこよなく愛する王子がいた。
国中のラーメン店の看板娘とラーメン店店主が宮殿に集められ、王子の婚約者を決めるための中華麺舞踏会が開催された。
牛骨スープに鶏ガラスープ、豚骨スープに魚介出汁。
会場内は複雑怪奇な匂いに満ちている。
王子が一組の看板娘とラーメン店店主に話し掛けた。
「このスープの香りに合う麺は……ちぢれ麺か?」
「いえ、恐れながら中太麺にございます」
店主が腰布を握り締めながら緊張した面持ちで答えた。
「ふん、意見が合わぬ」
王子は次の看板娘とその店主に話し掛けた。
「む。このスープの香りは……利尻昆布と鰹、それに鼻の奥にツンと抜けていくのは一体……店主、答えよ」
「恐れながら、企業秘密でございますゆえ何卒ご容赦を」
こうして、王子の婚約者が決まった。
身内になることで、企業秘密を知り得たのだった。