紡がれた花
「ロボットさーん!!」
幼い男女の子供の声が二人、笑いながらフロアに転がり込んでくる。その鈴のような笑い声は広いフロアによく響き渡った。
「こ、こら!図書館では静かにしなさい…!」
少し後から少し声を潜めた母親がスリッパでパタパタと追いかけてくる。
少し眠くなってくる午後三時。静かな図書館が少し騒がしくなる。
周りの人はこの光景に慣れているようで、そのまま読書を続行する者、微笑ましく見守る者、眉間に皺を寄せる者と反応は様々である。
二人の子供はそんなことは知らぬ様子で一体の管理ロボットに走りよると、元気良く話しかける。
「ねえ!ロボットさん!」
「六十二dBの音声を感知。図書館では、お静かにお願いします」
話しかけられた管理ロボットは淡々と言葉を述べ、顔の部分を子供二人に向けた。身長の低い丸目のボディに腹部にはピンク色のバラがプリントされている。
「でしべるって何ー?」
「静かにしてってことだよー」
同じ服を来た2人は顔を見合せて言葉を交わす。顔立ちもよく似ているためまるで鏡のようである。
「うちの子がすみませんー!」
母親が駆け寄ってくる。明るい栗毛の柔らかな髪を持っており、謝罪の言葉が出る口には牙のようなものが見えた。
「お母さん遅いー」
「本日はどのようなご要件でしょうか」
管理ロボットは淡々と告げる。
「お話してほしいの!」
女の子がお願いする。
「いつものやつね!」
男の子の方が少々格好つけて言う。
「いつもの、と仰いますと水晶聖戦のお話でよろしいでしょうか」
「うん!」
「うん!」
双子は同時に首を縦に振る。それを見た図書館の利用者の内の数人がまたかと口をへの字にひん曲げた。
「水晶聖戦のお話は今月に入って四回目でございます」
「いいの!」
「早く聞かせてよー」
細長い瞳孔の入ったガラス玉を見開いている。期待という名のハイライトが水晶体の中を暴れ回っていた。
「ごめんなさい…こんなに何度も…夜の読み聞かせもこの話がいいと聞かないんですよ…」
申し訳なさそうに母親は手を合わせている。お願い、の意だろう。
「かしこまりました。データベースにアクセスします」
そう言うと子供たちはきゃあきゃあと歓喜の声を上げて飛び跳ねた。
瞳の部分にloading…と文字が浮かび上がる。ロボットはブックマークの中から該当の資料をダウンロードする。
「ダウンロード完了、アーカイブを再生します」