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美少年の兄と醜女の妹 《※ルイ視点》

僕の妹のアリスは、想像だにしないアイデアを次から次へと生み出す。

それは、彼女が前世を思い出したと告白してから、ずっと続いている。



「兄上。歯は命です。虫歯で命を落とす事だってあるんですよ?」

「虫歯で命を?」

「はい。そこで、虫歯の予防に欠かせないのが『歯磨き粉』です!」



ニッコリ微笑みながらそう口にしたアリスは、『歯磨き粉』なるものの材料と作り方を書いたメモを、僕に差し出しながら「協力して下さい」と懇願してきた。



「領地に竹林があると聞きました」

「確かに竹林はあるけど・・・」


「そこで、その竹を燃やして竹炭を作り、乾燥させたミントの葉と一緒にすり潰します。それを水で溶かして使用すれば、虫歯が予防できるはずなんです」


「歯を清潔に保てるって事か」

「はい!ただ、歯を磨く為の道具をどうすればいいか分からないんです。兄上、助けて下さい」


「う~ん・・・小枝を煮て柔らかくして繊維をほぐし、それを歯ブラシにしてはどうだろうか」

「さすが兄上!では早速、一緒に歯磨き粉と歯ブラシを作っていきましょう!」



なんて言いながら、僕を容赦なく巻き込んでいく。


 実は、アリスの思いつきは、この歯磨き粉だけじゃない。

妹は事あるごとに、


「兄上!風邪予防の為に、うがいと手洗いを領地内で徹底させましょう」

「兄上!識字率の低さと犯罪率は比率しています。平民の識字率を上げましょう」


「兄上!善悪の判断には、道徳心は必要不可欠です。学校を作り、そこで道徳心を学ばせましょう」

「兄上!平民でも安心して行ける病院を作りましょう。それにはまず、保険システムが必要です」



などと、あれこれアイデアを口にし、僕を驚かせていく。


 その発想は独特で、アカツキ皇国では考えられないものだらけ。

間違いなくそれらの発想は、アリスの前世が影響しているんだと思う。

妹が「ニホン人」として過ごした時に得た知識を、僕に伝えてくれているであろう事は想像に難くない。


 とは言え、やはり少しだけ嫉妬してしまう。


その豊富な発想に。才能に。

そんな僕の醜い心を知ってか知らずか、アリスはいつだって、



「兄上は凄いです。私の(つたな)いアイデアをちゃんと理解し、形にして下さるんですから。やっぱり、頭の回転が速いんですね。そんな兄上は、私の自慢です」



なんて笑顔で言い、ささくれだった僕の心を、ほんわかと温かくしてくれる。



―――前世を思い出してから、アリスは変わった。



 それまでのアリスは、積極的に僕や父上、母上と関わろうとはしなかった。


こちらから声をかければ答えるけれど、自ら話しかける事は滅多にない。

正直、そんな妹にどう接していいのか、分からない時期もあったんだ。



 けれど、今のアリスは違う。



家族との距離を縮めようと、あれこれ話し掛けてくる様になった。

そして、よく笑顔を見せてくれる様にもなった。

それだけ、心を許してくれているんだろう。

そんな現状が、僕には心地良い。


だから僕は・・・



「アリス」

「どうかしましたか?兄上」


「領地に戻って、領内を見回ろう。何か良いアイデアが浮かぶかもしれない」

「はい!兄上と一緒に、領地に帰ります」


「学校に通う年齢になるまでは、領内にいよう。都にいる必要はない」

「そうですね。都に留まれば、皇家との繋がりも出てきそうですし。それは回避したいです」


「うん。皇家と関わらない為にも、領地に帰ろう」

「はい。大好きな兄上と一緒に帰ります」



そんな可愛い事を口にしたアリスに、僕は自然と笑みをこぼした。



―――大事な妹である僕のアリス。僕もキミの事が大好きだよ。



アリスと過ごす日々を、一秒だって無駄にしたくない。

いずれ互いに結婚して、離れ離れになってしまう日が来るだろうから。


だから、来るべき日が来るまでは、アリスと出来るだけ一緒にいようと思う。


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