01 Slasher Girl 掛彬穂乃果
気になるあの子は幼馴染で隣同士。
そう聞いて勝ちゲーム、チートリア充だと思う奴は素人だ。
周りの男どもには羨ましがられるが、そんな簡単なものじゃない。
当の幼馴染がどんどん可愛くなっていき、学年一の美少女と呼ばれているこの状況で、俺に何ができようか。
掛彬穂乃果。
物静かな黒髪美人で入学直後の実力テストも上位だったという。
子供の頃はいつも一緒に遊んでいたけど、段々と同性の友達と遊ぶことが多くなり、中学生になるころには、なんとなく距離が出来た。
運よく同じ高校に入れたものの、今では会ったら挨拶を交わす程度だ。
「あんなに可愛くなるなんて想定外だよなー」
言って勉強机に突っ伏す。
俺は特に特技もなければ成績もパッとしない。クラスメートではあるが、彼女と俺のいわゆるスクールカーストは雲泥の差だ。
夜も十時を回っている。俺は広げた宿題をやる気も失せて、高校の入学祝いに買ってもらったスマホをいじり始めた。
穂乃果の電話番号もLINEも知っている。けど、用もなく気軽に連絡できる仲という訳でもない。
「いつか、穂乃果にも彼氏ができるのかな」
嫌な考えが頭をよぎる。
付き合えば当然あんなこともあるだろうし、まさか穂乃果の部屋で、そんなこともあるかもだ。
「隣だぞ! 声とか聞こえたらどうするんだ?!」
「うるさいぞ、兄貴!」
と、壁を叩く音。
壁ドンの主は妹の咲良。
今年中学校に上がったばかりのひよっこだが、最近やたら俺にかみついてくる。
あれだ。きっと反抗期だ。てゆーか子供は早く寝なさい。俺は思春期のピュアな恋心と向き合っているのだ。
もし、運命的な何かがあるのなら、穂乃果もこの瞬間、スマホで俺の名前を見ていたりするのだろうか。
そんな妄想から飛び出してきたかのように、LINEのメッセが到着した。
「誰だよ、こんな時間に」
こんな時間に送ってくるのは中学からのクラスメートの風見かな。あいつはアニオタだから夜が遅い。
ぼんやりと相手を確認すると、Honokaの文字。
ホノカ……掛彬穂乃果?!
このタイミングで穂乃果からメッセとか、完全に運命だ。
用事はなんだろう。今度遊びに行こうとか……いやいや、あまり期待しすぎるのも良くないし。
俺は恐る恐るメッセを確認する。
≪夢か! まさかの公式CPリバ展開きた! マイナーカプ推しの私への授かりものか! 照れている貞君のとおとみが脊髄に染み渡ってしんどい!≫
ん。
……なんだこれ。
学年一の美少女、掛彬穂乃果からのメッセが、なんでこんなことになっているんだ。
よし、ちょっと落ち着こう。俺は天井を見上げてシミの数を数えてみた。また増えてるなあ……。
文章から判断すると、穂乃果はしんどいらしい。そうだね、しんどいなら暖かくして早めに寝た方がいいよね。
よし、行くぞ。俺は気を取り直して再び画面を見る。
≪Honokaからのメッセージは削除されました≫
すでにメッセージは消えている。俺は夢でも見ていたのか……?
スマホの画面を見つめながら、改めて考えをまとめてみる。
そういえばCP?とか、リバ?とか聞きなれない単語が並んでいた気がするが、ゲーム用語か何かだろうか。
穂乃果がハマっているゲームなら、俺も始めてみようかな。
俺が悩んでいると再びメッセが届いた。
≪読んだ?≫の一言。スタンプも絵文字も無し。
なんて返そう。センシティブな話題のような気もするし、出来るだけ無難に返さないと。
ここで運命を断ち切るわけにはいかない。試される俺のコミュ力。
≪読んだ。しんどいなら早く寝た方がいいぞ、お大事に≫
ダメ押しで猫の寝顔スタンプ。
どうだ、この無難かつ好印象を狙った完璧な返信。
これで穂乃果からありがとう的な返事が来てこの件は無事に決着だ。
俺は大きく伸びをして、数学の宿題を再開することにした。早くも授業に置いて行かれている節があるのだ。
俺がデジタルの世界で奮闘しているとメッセが届く。きっと穂乃果からだろう。
穂乃果からの何気ない一言が俺に対する何よりの応援だ。えーと、なんて書いてあるのかな。
≪ああああああ! ああああああああああああ!≫
≪ああああああああああああ!≫
?! やばい。穂乃果が壊れた。
俺なんか返信を間違った? これがスマホ世代の心の闇か。そうなのか。
完全にテンパった俺が固まっていると、ダメ押しのメッセが届く。それを見た俺の心臓が大きく飛び跳ねる。
≪本日22時30分≫
≪第175回ベランダ会議の開催を要求します≫
セセラギ高校一年生、秋月拓馬。
青春の風が吹き始めたのを確かに感じた、そんな夜。
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