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小屋にて

「グローネン!!!!」


 腹を刺され傷口から大量の血を流し床に倒れ伏すグローネンを見て、ヴォルフが大声を上げ駆け寄った。


「グローネン! グローネン!! ――――!!」


 ヴォルフは血塗れのグローネンを抱え上げ、何度も名前を呼びかけ無事を確認している。


 シモンは腰にかけてあるもう一本の短剣に手を伸ばした。気配を抑え、背後からヴォルフに忍び寄ろうとするシモン。


 しかし、ヴォルフを囲む二人の狼犬人(リカイナント)が、シモンの前に立ち塞がった。


「ヴォルフ、様、私は、大、丈夫、です、どう、か、どうか、冷、静、な対、処、を……」


「グローネン! 無事か!! 治癒は!? 間に合いそうか!!?」


 グローネンは口から血を流しながらも薄く笑った。


「ヴォルフ、様、申し訳、ありません、が、この、グロー、ネン、ここ、まで、の、よう、です」


「何を言っている?!!! グローネン! お前は一生、この俺に仕えるのだ!! こんなところで死ぬなど、決して許さんぞ!」


「ヴォルフ、様、どう、か、ダイヤの、誇り、を……、ゴフッ――。」


 グローネンの口から咳と共に大量の血が吐き出された。


「もういいグローネン! これ以上喋るな!!」


 グローネンは焦点の合わない空虚な目で虚空を見つめている。


「おお……――、ウォルク、様――。お、め、で、とう、ござ、い、ます――。ああ、やは、り、ダイヤ、には、玉、座が、よく、似、合、う――」


 言い終えるとともにグローネンの目から光が消えた。


「グローネン!! グローネン!! グローネン!! グローネン!! ――――!!」


 ヴォルフは、グローネンの体を何度も揺らしながら、何度も、何度も名前を叫び続ける。


 しかし、グローネンの口から返事が返ってくることは決してなかった。


 ヴォルフの体全体が小刻みに震え出した。


 ギリリ、と、歯と歯が擦れ、軋む音がした。ヴォルフの口から一筋の赤い雫がこぼれる。


「仇は()る――。」


 ヴォルフの体の震えが止まった。


 ヴォルフは、グローネンの死体を丁重に床に寝かせ、ゆっくりと立ち上がった。


「ワイマ、ラナー、お前たちはシャルルを追え――」


「「ハッ!」」


 言い終えるとともに二匹の狼犬人(リカイナント)が割れた窓から飛び出し、シャルル達を追いかける。


「やはり人とは違うな、主人に忠実だ。流石は犬と言ったところか」


 シモンが言う。


「勘違いするな。王族ではないがグローネンは狼の血が入った、正真正銘の狼犬種(ライカント)だ――。」


「ライ、カント? なんだそれは? 新種か?」


狼犬人(リカイナント)の種の違いすら知らんとは、友好国が聞いて呆れるな。まぁ友好国とは名ばかりの事実的な従属国に対する民衆の認識などそんなものか」


 ヴォルフは、大きくため息を吐いた。


「――にしてもだ。元貴族の従者としてその知識量はどうなんだ、え? 友好国の歴史ぐらい学んだほうがいいのではないか?」


 侮蔑混じりの視線をシモンに飛ばし、ヴォルフは問いかける。


「犬風情が、大きさの割にずいぶんと口が回るじゃないか。実は小心者だったか?」


 無表情のままシモンが答える。


「貴様こそ、今日はやけにしゃべるではないか、シモン」


 一歩前に踏み出し、大きく胸を張って、シモンを見下ろしながら、ヴォルフは口を開いた。


「それにだ、犬ではない。我こそは、ダイヤの血を引きしヴォルフ王家の正当なる後継者、ウォルク=ダイヤ=ヴォルフなるぞ!」


「従属国の元王家如きがなんだ、いまや徴収奴隷に過ぎないだろうが。ただの犬風情が笑わせるな!」


 シモンが声を張り上げ、答える。


 ヴォルフは上半身を前に乗り出し、手が地面スレスレになるまで腰を落とした。


「どうした、頭でも垂れたくなったのか? 散々、ライカントだのダイヤの血がどうのと言っていた割には殊勝じゃあないか、急に犬の血が騒ぎ出しでもしたのか?」


 そう言って、シモンは両肩のホルスターに掛けてある鞘から両手に一本ずつ、計二本の短剣を引き抜き正面に構える。


「無駄話は終わりだ。貴様を狩り、その肉をグローネンへの捧げ物としよう。」


 ヴォルフの手が、その鋭利な爪が全面に押し出されるように開かれた。


 短剣を握るシモンの両手が中心に寄る。


「シモン。今、貴様に王の狩りというものを見せてやろう――」


 ドン――!! と思いっきり床を蹴る音が小屋の中に響き渡った。

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