レイ
「この人があなたの言う変態さん?」
「そうなのよ!私が見たときにはいきなり教会の真ん中でお、お、おしっこしようとしてたの!そしたらあんたはどこだ!?とか、ここはどこだ!?とか変なこと言って急に頭をおさえて倒れちゃって!」
「それでお母さんを慌てて呼んだわけだ。」
俺が意識を取り戻すとそんな会話が聞こえてきた。
だがまだ頭がぼーっとする。相変わらず何も見えない。うまく体は動かせないが口は動かせる。なんとなく起きるのが気まづいが起きないと進まない。
「すいません。起きました。」
「あら、起きたのね。おはよう。」
声が大人の女性って感じがする。会話の流れからすると俺を変態扱いしたあいつの母親ってことになるな。
「迷惑をかけたみたいですいません。」
「いいのよ気にしないで。それより私の娘が失礼なこと言わなかった?」
母親と思われる人物は優しい声色で話しかけてくる。
「…………失礼だなんてとんでもないです。……はい。」
「なによ!!その間は!!」
きーきーと金切り声がする。頭に響く。どうもこいつは苦手な分類に入る相手だ。こういう輩とは友達になったことがない。所謂ウェイウェイ系だ。
「うるさいわよレイ」
母親が名前を呼んだ。
軽くショックだ。どちらかというと、って、どちらかというとっていう言い方もおかしいがこいつはレイではなくアスカだ。
そんなどうでもいいことを考えているとレイが話しかけてきた。
「そういえば自己紹介がまだだったわね。私はレイ。年は16よ。ここは私たちの家だから安心していいわ。」
16歳だったのか。てっきり14歳かと思った。
「俺は優だ。年は26。助けてくれてありがとう。」
ここは素直にお礼を言っておく。あんなとこで放置されてたらと考えるだけで恐ろしい。
「あらよかったじゃない。レイは年上が好みなのよねぇ。」
「なにもよくない!!変なこと言わないで!!」
「はいはいごめんなさいねぇ。私はユーリ。年齢は聞かないでねぇ。」
はははっ。自然と苦笑いがでてしまった。
さて、状況を一旦整理したい。俺は教会とやらで目がさめてわけのわからんことを言われて……
「それよりあなた周りが見えてないんですってね。」
考え事の最中に質問がとんできた。急に声が真剣になる。それにつられて俺もゴクリと唾を飲み込み真面目に答える。
「…はい。俺は目がさめたら暗闇にいて何も見えなくて、最初はレイさんがおかしなこと言ってるのかと思ったんですけどだんだん本当のことのように感じてパニックになってしまい気絶してしまいました。ここで目がさめても何も見えなくて、今もはっきり言って……混乱しています。」
俺は自分を落ち着かせるように言葉を吐いた。
「なるほどねぇ。もうひとつ聞かせてちょうだい。」
「なんでしょうか?」
俺は俯きながら答える。
「あなたはなぜ教会にいたの?」
「……すいません。……それもわかりません。」
わからないことが多すぎる自分の事なのにまるで他人事のように理解できない。26にもなってちょっぴり泣きそう。
「なるほどなるほど。あなたがどうしてここにいるかは私にもわからないけど、……あなたがどうして何も見えないか、なら解決できそうよ。」