出会い
ふあぁぁあ
大きなあくびと共に俺は目がさめた。
「今何時だ?」
ごそごそと枕元にある携帯を探す。
寝起きの目に携帯のディスプレイの光は強烈だ。片目でなんとか現在の時刻を確認すると二度寝しようと再び目をつむる。
ぐぅぅううっとお腹の虫が鳴く。腹が減って眠れやしない。
人間、空腹には勝てんもんだと思い体を起こす。大きく体を伸ばしキッチンへ向かった。
「……なんもねえ。」
こんなことなら昨日の夜中にカップ麺食べるんじゃなかった。ポテチじゃお腹いっぱいにならないからって欲張った結果だ。さすがにポテチじゃ朝飯代わりにはならないので仕方なくコンビニに向かうことにした。
「うぅ寒い」
季節は三月。まだ朝は冷え込む時期だ。
せっかくの日曜日だってのになんで朝っぱらから寒い思いをしないといけないんだよ。
そんなことを考えながら歩いていると目的地に到着した。適当に腹の足しになるようなものを購入し足早に帰宅。
さっそく購入した朝飯を食べ満腹になったところで睡魔が襲ってきた。
人間、睡魔にも勝てんもんだと思い立ち上がる。大きくあくびをして寝室へ向かった。
起きたら何しようかな、なんて考えていたらあっという間に眠りについた。
ーーはっ、と目がさめる
いったいどれくらい寝ていただろうか。辺りはすっかり暗くなっていた。
「……ん?」
違和感を覚え辺りを見渡す。いくらなんでも暗すぎる。何も見えない。手探りで何かないかと探してみるが何も気配を感じない。どこか暗闇に放り出された気分だ。
全く状況が掴めず考えが纏まらない。夢の中かと思い頬っぺたを摘まむが痛みを感じるのでそれはない。
「誰かいないのか!?」
変事は返ってこない。誰かいるんじゃないか。そんな淡い期待と共に発した言葉だったが意味はなかった。
この状況が全く掴めず何をすればいいかわからない。だかそれよりももっとやばいことがある。
さっきからトイレに行きたくて仕方ない。もう我慢の限界だ。とりあえず誰もいないなら小便でもしてやるか。
誰もいないとわかっているのに辺りをきょろきょろしてしまうあたり自分は小心者だと感じてしまい、ふっ、と鼻で笑ってしまった。
社会の窓を開け息子を社会に解き放ったその時
「きゃっいきなりなにしてんのよ!」
近くから女の声が聞こえた
「誰だ!?どこにいる!?」
「なにおかしなこと言ってるのよ。私はここにいるじゃない!」
ここよ。なんて言われてその女を探すが何も見えない。
「なに無視しちゃってんのよ!あんたの目の前にいるでしょうが!」
「んなこと言われても見えねんだよ!おちょくってんのか!?」
ふざけたことを言う女に対してつい大声を出してしまった。だがほんとに姿が見えない。でも声はすぐそばから聞こえる。こいつが言うことが本当ならなんでこいつは俺の姿が見えているんだ?
「……見えない?……失礼なこと聞くけどあんたもしかして目が見えないの?」
「いや、そんなことはない。」
「ならなんで私が見えてないのよ」
「そんなこと言われてもさっぱりわからん。なら逆に聞くけどあんたには俺の姿が見えているんだな?」
「……」
そこで会話が途切れる。女は急に黙りこんでしまった。
「おい、いきなり黙りこむなよ。どうしたんだ?」
「見えてるわよ!!全部ばっちりとね!!いいからさっさとしまいなさいよ!!」
俺はその言葉の意味を理解して慌てて後ろを向いた。
……息子を社会に解き放ったままだった。